4-9 怠惰の罪
悠輝視点で開始します。
ゆっくりと職員室の奥に進んでいくジェシカ。
そのとき、ドアが物凄い勢いで閉まって音をたてた。
ドアにはガラスがはめ込まれているのだがその向こうにジェシカの姿は無く、ただモノクロの職員室がそこにはあった。
力を入れてこじ開けようとしてみるが、ドアはびくともしなかった。
さてどうしたものか。
「佐滋くん……」
隣で中村さんが小さく呟く。
なにごとかと中村さんを視界に入れたときにはもう遅かった。
僕と中村さんの間には小次郎さんの時に見たような柵があった。つまり中村さんは再び鳥籠の中に閉じ込められていたのだ。
「またこれ~!?」
中村さんの入った鳥籠はスムーズに動き、廊下の向こうに進んでいった。
方向から察するに目的地はおそらく体育館。こんな状況で小次郎さんが手を出してくることは考えづらいだろうから、おそらく大罪級悪魔の仕業だろう。
中村さんを攫って何をする気だ?日本支部襲撃の悪魔が中村さんにそこまでの興味を示さなかったところを見ると、中村さんに魔力的な素質はあまりないのだろう。だとすれば目的は、僕たちの分断。
僕は鳥籠の中村さんを追いかけて走り出した。
◇◇◇
着いたのは案の定体育館。
中村さんの入った鳥籠と、その上にあぐらをかいて座る少年。見た目は幼く、ヨキさんと同い歳くらいに見える。
そしてその後ろに待機している約20人ほどの生徒たち。
どの生徒にも目に生気はなく、形容するならゾンビのように突っ立っていた。
「あ、エクソシストの方じゃないんだ……まあいいけど」
エクソシストの方、ジェシカのことか。
ということはジェシカの方にも悪魔がいるんだな。
「そうだよ……あ、ちなみに僕も向こうも、大罪級だから……あれ、名前、何だっけ?」
自分の名前を忘れたのか?
まあエクソシスト協会が大罪級悪魔の識別のためにつけたコードネームのようなものだから無理もないのかもしれないが。
あの何もかも面倒くさい時の妹のような態度から考えてみよう。
もしかして、《ベルフェゴール》とかじゃないのか?
「あ、そうそう、それだよ。よくわかったね……」
ベルフェゴールは七つの大罪の中で《怠惰》に対応する悪魔だ。
「うーん。エクソシストじゃないのか……じゃあしょうがないね、何かゲームでもしてよっか。まあ僕はやらないけど。何がいい?決めていいよ……」
自分はやらないということは、あの待機している生徒がゲームをやるのか。
生徒を一人一人確認していくと、中にはカズの姿があった。避難誘導をしていたせいで逃げ遅れてしまったのだろうか。まあ、そういうことなら話は早い。
「チームでゲームをやるなら、何人かもらってもいいよな」
「何でもいいよ……」
「じゃあ、ドッジボールって、知ってるか?」
「……いいよ。知ってる。ドッジボール。」
返事をするベルフェゴールに、下にいた中村さんは叱るように言う。
「いい加減そこ降りてくれない?」
「……やだよ、面倒くさい。……人間の癖に生意気だな。あ、そうだ。僕が負けたらこの人間、生かしてやってもいいよ。」
なんだと?
それにそもそもお前が勝つ前提なのが気にくわないな。
ベルフェゴール、もし僕が負けたのなら、そこから降りて僕と一緒にラジオ体操をやってもらうからな。
「佐滋くん……?」
何を言っているのとばかりに慌てるする中村さん。しかし対照的にベルフェゴールは激しく動揺していた。
「ラジオ体操……!?聞いたことのない言葉だけどなぜか酷く恐ろしい気配を感じる……!」
僕には勝つ自信がある。
シャツの第一ボタンを外し、ネクタイを軽く緩めた。




