4-7 大罪級
落書きはすぐに職員会議にかけられたが、その1日しか落書きがされていなかったことからそこまで問題視されなかった。多少尾ひれのついた噂も、数日で耳にしなくなった。
しかし、学校全体がおかしくなっていったのも、この頃だった。
おかしくなっていった、というと、やんわりした表現だが実際にそうだから仕方ない。
最近になってクラスメートと会話する事が増えた僕だが、会話の雰囲気が一週間前とは明らかに違うのだ。突然会話する気力が無くなったように会話を止めてしまったり、用事があって話しかけようとしても、こちらの問いかけに全く反応を示さなかったりと、クラス全体がだらけているような感覚があった。
かと思えば、他のクラスでは私物が盗まれる事件が頻発したり、愛の告白ラッシュが続いているクラスもあるそうだ。
僕たちは、この状況を危険視していた。
落書きを書いたのはおそらく《七つの大罪》と呼ばれる悪魔たちだ。
大罪級の悪魔たちの大罪級たる理由は、存在するだけで周囲に影響を及ぼすところにある。
大罪級未満の悪魔は、原則として取り憑くことでしか魔力を奪うことができない。
しかし大罪級の悪魔は、存在自体が魔力に対する引力のようなものを持っていて、自分の意志に関係なく周囲から魔力を奪い続ける。
そして魔力を奪われた人間には、自身の魔力と入れ替わるように悪魔の放つ魔力が流れ込む。
悪魔の魔力を身体に溜めてしまった人間は、悪魔の命令を忠実に守る人形と化す。しかし、なんの命令も受けていない状態の人形は、自らの意識をおよそ保ったまま、悪魔の性格や動向を反映するらしい。
ここまでがここ数日で分かったことだ。
モンファさんやヨキさんにも判断を仰いだ。
僕や中村さんも、大罪級悪魔の影響を受ける可能性があったのだが、エクソシストによる適切な処置を受けることでそれを回避した。
「大罪級悪魔は校内にいます。」
ジェシカは言った。
モンファさん達も同じ意見らしい。
場所が絞れているうえに、相手が大罪級悪魔ということで、僕たちはエクソシスト協会に応援を要請する事を決断した。
僕たちはエクソシスト協会に追われている身、簡単には決断できなかったが、相手は大罪級悪魔。あの時ジェシカが戦ったルシフェルと同等、もしくはそれ以上の力を持った悪魔なのだ。僕たちが対処できる相手ではない。
それに、協会には小次郎さんを含め、ジェシカのファンクラブなど、僕たちの味方は存在する。きっとなんとかなるだろう。
モンファさんの話によれば、協会本部は日本支部再興のために人員を割いているため、直ぐにこちらに向かうことはできないそうだ。現在の状況をできるだけ維持し、状況報告を欠かすな、というのが協会本部の判断だ。
「状況を維持しろって言われてもなぁ。ウチらが決めることやないからなぁ。」
困り顔で首を横に振るモンファさんに、ヨキさんが付け足した。
「とりあえず、お三方はそのまま学校に通って下さい。僕たちもすぐに手を出せる位置で待機していますので、心配なさないでください。」
頷く僕たち。
それぞれが、それぞれの不安を胸に抱いて明日を迎えるのだが、ヨキさんたちが手を出す瞬間は、思いのほか早くやってくることになる。




