☆1-4 やきそばください。
悪魔の襲撃によって、日本支部は壊滅しました。
壊滅…した…?
「はい。一昨日、支部庁舎に大規模な襲撃がありました。構成員の大半はその場で殺され、庁舎にいなかった構成員も、現在連絡が取れない状態です。おそらくは、もう…」
待ってくれ、悪魔は、僕達人間の魔力を狙ってるんじゃないのか?
「基本的にはそうですね。ですが悪魔達にとって、私達のようなエクソシストは邪魔なのでしょう。ある程度魔力を蓄えた悪魔は、実体を持ち、同時に高度な知能を有します。そういった悪魔に襲撃されたと考えるのが妥当ですが、日本支部だって、ポンコツの集まりではありません。詳しい原因は現在究明中です」
ということは今、日本は手薄なのか。
悪魔は魔力を欲しがっているわけだから、僕みたいな魔力の多い人間が狙われる。
悪魔は、魔力で強くなるわけだから、これ以上被害を増やさないように、わざわざ本部から応援がきた。ということになる。
まだジェシカさんの事を完全に信じた訳ではない。
けど僕は、黒髪の彼女から、黒いモヤのようなものが出ているのも見たし、それを切る時に使っていた剣も、いつの間にか持っていない。
この人は、普通じゃない。直感的にそう感じた。
それに、ここで僕が何らかの協力をする事によって救われる命があるのなら、信じるべきなんだと僕は思う。
「わかった。とりあえず、信用してみるよ。」
ジェシカさんは、今まで顔色一つ変えずに淡々と説明していたが、僕の言葉にホッとしたのか、笑顔で返事をくれた。
「そうですか。ありがとうございます」
その笑顔はなぜかとても儚く、触れれば壊れてしまいそうだった。さながらルビーを思わせる赤い瞳には、うっすらと涙が見えた。
見た目で言うなら小学校高学年くらいだけど、だいたいこういう場合、同じ年くらいというのが相場だろう。
本部からの応援とはいえ、日本に縁もゆかりもない人間を送ってはこないだろう。日本語が堪能なら尚更だ。
だとすれば、日本支部に知り合いがいたかもしれない。
僕と同じ年くらいでそんな悲しみを背負っているのか。
これ以上悲しみを背負う人を増やさないように、できることからやっていこう。そう思った。
「で、僕は何をすればいい?」
「ふぁ、ふみまふぇん。ひょっほまっへふらはい」
え?
「コホン。すみません。あなたがぼーっとしていたので。『やきそば』なるものを食べていました。意外とイケますよ。あ、食べます?」
さっき泣いてたよね?
もしかして全部思い込みだった?
…できることからやっていこう。
「とりあえず、やきそばください」
「間接キスになるので、嫌です」
じゃあ聞くなよ。思ったけど、言わなかった。