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エクソシストは死神の夢を見るかforZERO  作者: サトウイツキ
スクールライフと七つの大罪
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4-2 トマトカエル鍋

鍋が煮えるのとほぼ同時にジェシカさんは目を覚ました。


「あ、起きた!」

そりゃあ、あんなにむにむにされたら誰だって起きるよ。


ジェシカさんは目をこすりながら辺りを見回す。

僕の顔を見た瞬間、一瞬ビクッとして目を反らされた。


もしかして、怒ってます?


ジェシカさんは僕を無視して席についてしまった。


テーブルには普段4つしか椅子が用意されていないのでもう3つ椅子を用意しなくてはならない。階段の下にある物置部屋から、折りたたみ式の椅子を出してくる。椅子はうっすらと埃をかぶっていて、長い間使っていなかったことを思い出させる。

最後に使ったのはいつだっただろうか。たしかあれは、まだあの子がいた頃の・・・


「お兄ちゃん!椅子まだ!?」


妹の声がリビングから聞こえる

許されない事をした。でもそれはもう終わった事、遠い昔の事なのだ。


「今持って行くよー」


僕は今、この場所に生きている。


・・・生きている、か。


◇◇◇


長方形のテーブルに置かれた鍋を、みんなで囲む。

テーブルの広い辺の部分に僕を挟むようにして中村さんと妹が、その反対側に小次郎さん、モンファさん、ヨキさん。そしてお誕生日席にジェシカさんが座っていた。


鍋の蓋を開けるとトマトのいい香りが辺りに立ち込める。


モンファさんが適当に材料を買ってきたせいで中身はごちゃ混ぜだが、それなりにうまくできたんじゃないかとおもう。


「お兄ちゃん、これ何のお肉?」


ああ、鶏っぽいやつか。

見たことない肉だったけど、結局何の肉なんだ?


「カエルやで。」


!?


「ウチらの故郷じゃみんな食べてるで。」


妹はしばらく眺めて、口に放り込んだ。


「なんかね、鶏っぽいよ!」


僕も恐る恐る食べてみる。

あ、鶏っぽい。というか、ささみっぽい。


僕を含め中国組の2人以外は最初かなり驚いていたが、食べていくうちに気にならなくなったようで、普通に鍋を楽しんでいた。


気分が良くなったのか、妹はいつになくよく喋った。


「ジェシカちゃんって、モンファさんの妹なんだよね、お姉ちゃんいなくなると寂しい?私もお姉ちゃん欲しかったな~」


そういうことさらっと言われるとちょっと傷つくんだけど。


妹の言葉に困惑の表情を浮かべるジェシカさん。

中村さんが事情を耳打ちすると、さらに困惑の表情を浮かべるジェシカさん。


「なあジェシー?いつもみたいに『お姉ちゃん』って呼んでくれてもええんやで。」


「なっ・・・」


モンファさんはニコニコしている。

妹もニコニコしていた。

すまない。諦めてくれジェシカさん。


ジェシカさんはうつむいてプルプルしていたが、そのまま目線だけモンファさんに向けると、頬を赤らめて言った。


「お、お姉ちゃんがいないと、寂しい・・・です。」


「・・・っ!」


全身を抱くようにして悶えるモンファさん。

キャーキャー言いながらジェシカさんを抱きしめる妹。アホ毛が激しく左右に揺れていたのは言うまでもない。中村さんまで、プロポーズされたときのような顔をしている。見たことないけど。


◇◇◇


程なくして、トマトカエル鍋は空っぽになった。


お腹いっぱいになった妹はソファーでスヤスヤ眠り、中村さんは時間が時間なので持ってきていた紙袋を僕に渡して帰ってしまった。


洗い物を終えた僕はお茶を淹れ、テーブルについた。

テーブルには、4人のエクソシストが。


「このタイミングで大罪級の悪魔が出てくるとは・・・」


モンファさんが険しい顔で呟く。

大罪級?あのルシファーとかいう悪魔のことか。僕の疑問に、ヨキさんが答える。


「悪魔には強さによってランク付けされています。下から、C、B、A、S、そして大罪級です。《七つの大罪》というものをご存知ですか?カトリック教における、人を罪に導くとされる七つの感情や欲求のことを差し、「暴食」、「色欲」、「強欲」、「憤怒」、「怠惰」、「傲慢」、「嫉妬」がそれにあたります。今回現れたルシファーは「傲慢」の罪に対応する悪魔です。」


つまり、あのクラスの悪魔がもう6体はいるという事になるのか。


「そうなりますね。」


重くなる空気。

それを感じてかモンファさんが切り出す。


「今後のことなんやけど。」


「リュネットは生きていました。私はリュネットを助けます。」


「ジェシーが言ってた嬢ちゃんか。どこにおるか分かるんか?」


「それは・・・」


「場所に関しては恐らく《ペルガモン》よ。」


小次郎さんが口をはさむ。


「ペルガモンには、悪魔の本拠地があるわ。きっとその子もそこにいるわ。」


「そんな情報私たちに教えて何のつもりですか。」


ジェシカさんが小次郎さんを睨みつける。

小次郎さんはもともと協会本部からの刺客だったのだから、警戒するのは当然だ。


「いやね、別に何もしないわよ。ただ、ちょっと協力したいなって、思ったのよ。あなた達、面白いもの。」


そう言って小次郎さんは胸ポケットから一枚のカードを取り出して提示した。

それはファンクラブの会員カードで、会員ナンバーは3だった。


ジェシカさんは一瞬驚いてテーブルに乗り出すが、すぐにもとの椅子に座り直した。


「日本支部の襲撃を受けて、近々ペルガモンへの悪魔掃討作戦が行われます。そこに便乗できれば、道はあるかもしれません。」


悪魔掃討作戦か。

しかしジェシカさんは今お尋ね者なわけだから、簡単には作戦に参加できないんじゃないだろうか。


「せやけど、ウチらも協会の中じゃそこそこに偉いんよ。なんとかするで!」


今後の大筋を決めると「鍋うまかったで。」と、李姉弟と小次郎さんは帰っていった。


見送ろうと玄関から外にでたとき、一瞬肌寒さを感じた。

秋がくる。

そう感じた瞬間だった。

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