表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エクソシストは死神の夢を見るかforZERO  作者: サトウイツキ
スクールライフと七つの大罪
36/82

4-1 鍋と悠羅と揺れるアホ毛

眠ったジェシカさんをおんぶした僕は、自宅の前にいた。


ジェシカさんはあの後、意識を失うように眠ってしまった。モンファさんが言うには、魔力欠乏症という状態で、貧血のようなものだからしばらくすれば治る、とのことだった。力に飲み込まれるほど消耗しているはずだから、時間はかかるかもしれないが命に別状はないそうだ。

しばらくして合流したヨキさんの手には狙撃銃スナイパーライフルが握られており、僅かながら援護をしてくれたらしい。


結界から出たとき辺りは既に暗くなっていて、家につく頃にはすっかり日は落ちていた。

「お昼には帰る。」と妹に言っていたのを思い出し軽く絶望する。


冷蔵庫に何かあったかな、とか、妹になんて言い訳しようかな、とか、ついでにジェシカさんのことはなんて説明しようかな、とか考えながら、泥棒のようにゆっくりと家のドアを開ける。


「ただいまー・・・」


階段をトタトタと素早く降りる音がしたかと思うと、目の前に妹が現れた。


「お兄ちゃん!?お昼には戻るって言ったよね!?もう7時なんだけど!?お腹空いて死にそうなんだけど!?何なの!?バカなの!?死ぬの!?ていうか死ねよ!」


実の兄にそれはちょっとひどいんじゃないか。

まあ約束を守らなかったのは僕だから、仕方ないと言えば仕方ないのだが。


悠羅はひとしきり怒鳴ると、一瞬驚いて、まるで犯罪者を見るような目で僕を見てきた。


「お、お兄ちゃん・・・それ、まさか・・・」


どうやら僕の背中で眠るジェシカさんを見つけたらしい。まあ当然か。


悠羅は震える手でスマートフォンを取り出すと、そのまま震える声で言ってきた。


「お兄ちゃん・・・ひゃくとうばんって、何番だっけ・・・」


待て待て、通報するんじゃない。

というか、110番、分からないのか。


混乱する妹と、どうしたものかと悩む僕を置いて、玄関のドアはガチャリと音を立てて開いた。


「大丈夫やで、悠羅ちゃんの兄貴は犯罪者じゃあらへんで!」


「あ、昨日の人。」


「この娘なあ、ウチの妹なんやけど、ウチがもうすぐ外国に出張してしまうんで、しばらく預かってもろうと思うとったんやけど、まだ時間があるさかい、今日は《鍋パーティー》しよ思ってな!」


モンファさんだった。

ジェシカさんの生い立ちを見ている僕は、これが当然嘘だと分かる。

それにしても雑だな。


「え、あ、そうなの?」


えーっと、そうみたい。


「ほな、おじゃまするでー」


僕の横を通り家に上がっていくモンファさん。その後ろをパンパンのレジ袋を両手に持ってついてくるヨキさん。


「あーっら。綺麗なおうちねぇ。」


そしてその後ろを小次郎さんが。

なんとなく状況は理解した。開けっ放しのドアを閉めようと思ったとき、外に中村さんがいた。


「ホントに、いいのかな・・・?」


構わないよ。

鍋なら、妹も満足するだろうし、親はまだしばらく帰ってこないよ。


「うーん、そういうことじゃないんだけど。まあいいや。お邪魔します。」


中村さんは本当は少し控えめな人なのだろうと思った。

僕が一週間ほど前に見た中村さんは悪魔に取り付かれていたのだから。


中村さんがリビングに入っていくのを見ると、僕は玄関のドアを閉める。


「・・・鍋、食べます。」


ジェシカさんが目を覚ました。

しかしまだ朦朧としているようで、僕の背中にもう一度ギュッと捕まるとまた眠ってしまった。


準備をしている間に目を覚ますだろう。

僕はそのままリビングへと向かった。


◇◇◇


キッチンに目をやると、準備は既に始まっていて、ヨキさんと中村さんがあわあわするのを差し押さえ、モンファさんが人参を切ろうとしていた。

包丁がまな板に対して垂直に降ろされる。

ターンという心地よい音がして、人参が真っ二つになる。しかしモンファさんが抑えていなかった方の人参はその衝撃で跳ね、僕の額に直撃した。


「ハイヤー!・・・ありゃ?」


僕は無言でジェシカさんをソファーに降ろすと、ベージュ色のエプロンを身に付けた。


モンファさんから包丁を奪い取りリビングに追いやると、素早く人参を半月切りにして浅いザルに移す。


「ヨキさん!次!」


「は、はい!」


ヨキさんがビニール袋から取り出すキャベツやら豆腐やらを、素早く鍋に適切な形に切っていく。


肉のパックを開封していくと、見慣れない肉がビニール袋のなかにあった。

形自体は鳥に似ていたので、特に気にせずそのまま並べた。


そもそも何鍋にするかよく考えていなかったので、トマトの缶詰めやケチャップを使ってトマト鍋を作ることにした。


ある程度の具材を鍋に入れ、蓋をする。

テーブルにガスコンロを用意し、鍋をセット。

火をつけ、しばらく待つ。


ふう。やっと一息つける。

軽く洗い物をしながらリビングに目をやると、モンファさんと小次郎さんがこちらをジッと見ていた。


「流石やな。」


「料理のできる男ってステキ♡」


「今度教えて欲しいなぁ。」


「料理人になれますね!」


中村さんに、ヨキさんまで。

これくらい誰でもできるのでは?と思いつつ、ソファーで寝ているジェシカさんの様子を伺う。

ジェシカさんは眠ったまま、妹にむにむにされていた。


「お人形さんみたい!」


僕はそのとき初めて見た。

悠羅のアホ毛が激しく左右に揺れている瞬間を。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ