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エクソシストは死神の夢を見るかforZERO  作者: サトウイツキ
彼女の影を追いかけて
31/82

3-8 屋上の鳥籠

転がって来た巨大な岩は、廊下の天井と壁のスレスレの大きさで、脇に避けてやり過ごすのは難しそうだった。少し戻ることになるが、さっき上がってきた階段の踊場に避けるしかなさそうだ。

ジェシカさんとアイコンタクトを交わし、反対方向に向かって走り出す。


階段を上がってからそんなに進んでいないので、すぐに曲がって避けることができる!と思ったのだが、転がる岩は予想以上に早かった。


踊場はもうすぐそこだが、転がる岩もすぐ後ろまで迫ってきている。

これじゃ間に合わない。


「間に合ええっっ!」


ジェシカさんを抱きかかえ踊場に押し込むように、僕は踊場に飛び込んだ。


岩はそのまま一直線に転がり、少し向こうの廊下の突き当たりに大きな音を立ててぶつかった。

そのうちに岩は消えてなくなり、岩の衝撃で破壊された壁だけが残っていた。


僕は四つん這いのような状態で起き上がると、なんとか岩をやり過ごせたことを確認し、ホッと安堵の息を吐く。

その体勢のまま安心していると、下からかすかに声が聞こえてきた。


「ぁ、ぁぅ・・・」


声のする方に目をやると、そこにはなんとジェシカさんが。つまり、僕が床に付いた腕と腕の間にジェシカさんの綺麗な顔があり、その小さな体に被さるように僕の体があった。


顔が近い。ジェシカさんの吐息すら感じられる。

瞬間、目が合った。


なんとなく気まずい空気が流れたので、声をかけた。


「怪我とか、してない?」


「だ、大丈夫ですから。どいて下さい。」


ジェシカさんはそう返事をすると、プイっとそっぽ向いてしまった。

両肘と両膝の痛みに耐えつつ立ち上がる。

起き上がろうとするジェシカさんに手を差し伸べたが、払われてしまった。


さすがにあの体勢のまま見つめるのはまずかっただろうか。


岩の転がってきた道を、僕とジェシカさんは少し離れて進む。

僕が距離を詰めようとするとジェシカさんは距離をとり、僕が声をかけようとするとジェシカさんは返事をしなかった。

どうやら嫌われてしまったようだ。


◇◇◇


二階には、転がる岩以外のトラップは無く、三階にもこれといったトラップは無かった。


屋上につづくドアの前で一旦立ち止まり、ノブに手をかける。


チラッとジェシカさんの方を見る。

ジェシカさんは慌てて目を反らし「早くしてください。」と言ってそこで会話は終わってしまった。

再びドアに向き直り、少し緊張しながらノブを捻る。


屋上は普段立ち入り禁止になっているので入ったことは無かったが、想像していたとおりの屋上がそこにあり、ドアとは離れたところに鳥籠と、それに閉じ込められた中村さんがいた。


「佐滋君!」


中村さんが叫ぶ。


僕が駆け寄ろうとすると、足下に何かが現れるのを感じた。とっさに避けようとしたが、岩が転がってくるトラップを避けた時のダメージが残っていたのか、避けることができず、現れたそれに足をとられてしまった。


「佐滋君!それ・・・っ!」


トラバサミだった。


トラバサミの鋭い刃が僕の足に突き刺さる。

出血し、刃が骨に当たっている感覚さえある。


ジェシカさんは驚き、こちらに駆け寄ろうとする。


「来たらダメだ!ここにコイツが仕掛けられていたのなら、他にもあるかもしれない。ジェシカさんがそれを喰らってしまったら、元も子もない!」


「そんな・・・」


ジェシカさんは驚きと戸惑いが混ざったような表情をして、その場に立ち止まった。

なんだ、心配してくれてるじゃないか。


口元を隠し驚愕する中村さんの鳥籠の隣に、また裂け目ができる。


「あらぁ、ここまでたどり着けたのねぇ。」


出てきたのはトゥインキィ小次郎さん。

クネクネしながら話しかけくる小次郎さんに、ジェシカさんが怒鳴りつける。


「小次郎さん、これで良いでしょう。悠輝さんと中村さんを解放して下さい!」


「まぁ、そうよねぇ。ちょっともったいないけど、今回は見逃してあげるわよん。」


小次郎さんが軽く指を鳴らすと中村さんを捕らえていた鳥籠は消え、僕の足に食らいついたトラバサミも消えてなくなった。


トラバサミによる怪我はそのままだったので、僕はその場から動くことはできない。

ジェシカさんと中村さんが駆け寄ってくる。ジェシカさんは手早く僕の足に包帯を巻き付け応急処置を施すと、立ち上がり、小次郎さんに向かって何かを言おうとした。


そのときだった。


ジェシカさんとトゥインキィ小次郎さんは何かに気づき、色のない空を仰いだ。

つられて僕と中村さんも空を見上げる。


しかしそこにあったのは真っ黒な空だった。

否、何百という何か黒いものが空を埋め尽くしていた。


目を凝らせば、それは翼の生えた人間のようだったが、頭はあるが顔がなく、口だけが開き、ブツブツと何かを呟いていた。


「悪魔・・・」


ジェシカさんが言った。


そしてその悪魔は、『ジェシカ、ジェシカ・・・』と呟いていた。

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