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エクソシストは死神の夢を見るかforZERO  作者: サトウイツキ
彼女の影を追いかけて
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3-7 麻酔針のようなもの

僕や中村さんの通う学校は、学校自体が最近造られたという事もあり少し現代的な造りになっていた。もともと無機質な校舎は、この色のない結界の中でも妙な存在感を見せていた。

校門のすぐ横には広大なグラウンドがあり、そのグラウンドの隅を横切るように校門から玄関までの煉瓦づくりの道が直接つながっている。文化祭の時には、この道にたくさんの模擬店が並ぶ。


校門のところまでは、吊し上げられるトラップ以外の罠は特になく、難なく進むことができたのだが、ジェシカさんは校門に入るか入らないかというところで立ち止まった。


ジェシカさんはその辺に転がっている小さな石を掴むと、学校の敷地に向かって投げた。

投げられた小石は綺麗な弧を描いて、玄関までの道に落ちる。

小石と煉瓦がぶつかってコトンと音が鳴った。


しかしその小石は次の瞬間粉々になった。


巨大なトラバサミだ。

小石を砕くべく発動したトラバサミは、グラウンド全体に被さるドームのようになっていた。


本来、狩猟などに使われるであろうその道具は、地面に待ち構え、ジェシカさんの投げた小石をいとも簡単に噛み砕いた。

普通のトラバサミというのは一番外側にしか刃は付いていないのだが、今目の前にあるそれは、内側に何重もの刃が付いていて、サメの歯のような構造になっている。


「完全に殺しに来てますね、これ。」


ジェシカさんが呟く。

もしジェシカさんが気付いていなかったら小石と同じ運命を辿っていたかと思うと背筋が凍るようだ。


僕のような一般人を殺すことはきっと協会にとって本意ではないはずだ。

あくまで記憶の消去が目的ならば、このトラバサミは威嚇と考えていいだろう。屋上まで来るつもりならこれだけの罠があるぞ、という。


そのうちにグラウンドに被さっていた巨大なトラバサミは塵になってどこかに消えた。

僕とジェシカさんは特に足下に警戒しながらゆっくりと校舎に入っていった。


◇◇◇


この学校には、1,2,3学年の教室のある普通棟と、特別教室のある特別棟。部室の集まる部室棟の計3つの棟で構成されている。

最も近いルートで屋上に向かおうとするのなら、普通棟の階段を上がって屋上に向かうのが速い。しかしそんなことは向こうも分かっているはずだ。それならこのルートに重点的に罠が仕掛けられている可能性が高い。

小次郎さんが持ちかけてきたルールには特に時間制限などは設けれていなかったから、確実に助け出すため、次に近いであろう特別棟の階段を上がっていくことにした。


玄関から入って左手に普通棟、右手に特別棟、そしてその向こうに部室棟がある。

この学校に関しては僕の方が詳しい。僕が先頭を歩き、慎重に特別棟に向かう。


「トラップのトリガーは物理的なものではありません。魔力に反応して作動します。さっきの小石も、ある程度魔力を込めて投げました。」


つまり、どんなに探しても作動するまではわからない、ということだろう。


「危ない!」


何事がと振り返ろうとすると、突然ジェシカさんに押し倒された。

振り返る途中で押されたので、後頭部を床に強く打ちつける。

後頭部の痛みをこらえつつ、状況を確認すると、仰向けで倒れている僕の上にはジェシカさんが跨がるように座り、立っていたら僕の首があったであろう付近の壁に、画鋲のようなものが刺さっていた。


「殺傷力は小さそうです。麻酔針のようなものでしょうか。」


言っているうちに針は消えてしまった。

麻酔針か。一度刺されたら、屋上に向かうのは難しいだろう。もしジェシカさんが受けてしまったら、それはより確実なものとなる。できるだけ、ジェシカさんを守らなくては。


「別に重くないけど、退いてくれると嬉しい。」


ジェシカさんはハッとしたように一度僕の顔を見ると、「ごめんなさい。」といってささっと退いてくれた。


二階に上がると、そこには『生徒会室』の文字が。ここはジェシカさんと悪魔が戦ってほとんど平地のようになってしまっていた場所だ。ジェシカさんの言っていた通り現実世界に影響はなかったが、こちら側は誰かが修理したのだろうか。


「結界の中の世界は現実に一方的に依存しているので、数日もすれば現実と同じ形に戻ります。」


なるほど。

色のない生徒会室を見ていると、あの日のことを思い出す。

壮絶な戦闘、明かされた日本支部襲撃の全容、そしてジェシカさんのもう一つの力。


「あの、一つ気になっていることがあるのですが・・・」


ジェシカさんが口を開いた時だった。

ゴゴゴゴゴゴ

という何か巨大なものが転がる音がした。音はどんどん近づいて来る。


そのとき、廊下の向こう側から、何かがやってくるのが見えた。


それは、いつか映画で見たような、巨大な岩だった。

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