3-3 協力者
「この方達はですね、私の古くから、というか私がエクソシストになったときからの友人で、いろいろお世話になりました」
ジェシカさんが簡単に説明すると、2人は名乗った。
「ウチは李・夢華、モンファでええよ。大阪に住んでたことがあるから、なまってるけど、堪忍な」
「僕は弟で、同じく李・余輝といいます」
名前から察するに中国の人だろうか。エクソシストというのは多国籍なんだな。
「まあ、諸説ありますが、悪魔は弱った人の心から生まれるそうです。ですから、人のあるところに悪魔あり、悪魔があるところに、エクソシストあり、といったところですね」
ジェシカさんが説明してくれた。
悪魔があるところに、エクソシストあり、か。まるで警察組織みたいだな、と思った。
それにしても、2人とも本部のエクソシストなんだよな。それなのに僕達を捕まえなくていいのか?
「何か勘違いしてるやろ。ウチらはアンタらを捕まえに来たんやで」
少し身構えてしまうが、相手は本部所属のエクソシスト。身構えたところでどうにもならないと思うが。
「わわわ!誤解しないでください!お姉ちゃんも紛らわしい言い方しないでくださいよ」
ヨキさんが慌てる。
「えーっと、そうですね。僕たちは『ジェシカさん達を捕まえてこい』という命令の元、こちらにやってきました。でも僕たちにその意思はありません。なぜならジェシカさんがやったことを知っているからです。協会の命令に背き、一般人を巻き込んだのは悪いことかもしれませんけど、それで記憶を消されてしまうなんて、理不尽じゃありませんか」
「ウチらはちっちゃい時からジェシーを見てるからな。何かあると思って調べたらまさか、敵討ちとはなぁ……」
「ですから、ファンクラブ……じゃなかった。ジェシカさんに協力してくれる人たちを集めて、ジェシカさんをなんとか守ろうっていう話になったんです」
ファンクラブがあるのか。
チラッとジェシカさんを見たら、ふるふると首を横に振った。
「ちなみにウチが会員ナンバー1やで」
会員カードと思われるものを見せつけてくるモンファさん。そこにはNo1の文字が。
それを奪おうとテーブルに乗り出すジェシカさん。
モンファさんは立ち上がると、カードを頭上に掲げ、ひらひらさせている。
モンファさんは出るとこ出てる大人の女性なので、ジェシカさんよりはるかに身長がたかい。
そのためジェシカさんが精一杯手を伸ばしてもカードに手が届くことはない。
「ほれほれ、とってみいや~」
挑発するモンファさんに対して、ピョンピョンしながらカードを奪おうとするジェシカさん。
僕とヨキさんはなんだか微笑ましくて、その光景を見ていた。
あとでヨキさんから聞いたのだが、モンファさんのファンクラブもあるらしい。
その夜モンファさんとヨキさんが帰ったあと、なんとか妹に見つからないようにジェシカさんを家に泊めることに成功した。
両親の寝室には母が帰ってくる可能性があるため泊められないため、僕はリビングのソファアで眠り、ジェシカさんには僕の部屋のベッドで寝てもらった。
電気を消してソファアに寝転び、持ってきたタオルケットを体に掛けた。
勢い余ってジェシカさんを連れてここまで来てしまったが、本当にリュネットを助け出せるだろうか。おそらくリュネットは悪魔にさらわれてはいるものの、死んではいない。
しかしなぜさらわれたのかが全くわからない。それさえ分かれば、状況は簡単になるはずだ。でもそれは今の僕たちには到底知りようもない。モンファさんやヨキさんに協力を求めざるを得ないだろう。
今日のところはそのまま返したが、2人のことを完全に信じた訳ではない。協会のスパイ、ということも考えられる。
それに、中村さんのことも気になる。
でもそれは、また明日考えよう。
リュネットは今は死んでいない、今は。
この力もいつまで持つかわからない。早く助け出さなければ。
そう心に誓い、目を閉じた。
◇◇◇
朝
僕は、腹部に軽い衝撃を受けて目を覚ます。
「お兄ちゃん。ご飯」
衝撃の正体は妹で、ソファアに寝たままの僕に座って朝の情報番組を見ていた。
家にはあまり親がいないので、家事は妹と分担している。料理は僕の分担だ。
今日は日曜日。学校はないのでそこまで急ぐ必要はないが、妹をどけて起き上がる。
ジェシカさんの様子が気になったので、階段を上がり自分の部屋に戻る。
一応ノックしてみるが、返事がなかったので寝てるのかと思い、そのまま部屋に入る。
そこにはパジャマ姿のジェシカさんと、モンファさんがいた。
モンファさんはジェシカさんをベッドに押し倒し、パジャマの中に手を……
またかよ!
駆け寄り、ジェシカさんを引っ張り出そうとする。
しかし今日のモンファさんは諦めなかった。
ジェシカさんと僕とモンファさんでもみ合いになる。
途中で窓からヨキさんが入ってきて、モンファさんを引き剥がそうとする。
きっとモンファさんも窓から入ってきたのだろう。ここ二階なんだけどな。
その頃妹は、二階でなにやらドタドタ音がするな、と思いながら朝ご飯を待っていた。




