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エクソシストは死神の夢を見るかforZERO  作者: サトウイツキ
僕が見た夢、少女が見た世界
22/82

2-9 楽しい時間は

リュネットがリュフワ家の当主に、ジェシカがエクソシストになってから、6年の歳月が経った。


ジェシカがリュフワ家の家名を貰ってからそんなに経たないうちに、エクソシスト協会からスカウトが来た。悪魔を祓う力《祓力ふつりょく》を持っている以上、野放しにはできないということらしい。

しかしジェシカは自らの意思で入会を希望した。

親の思いを引き継ぎたいという気持ちもあったし、一度悪魔に襲われているリュネットを護りたいという気持ちもあった。

これはあとで知ることになるのだが、リュネットは魔力の吸収速度が常人のそれをはるかに越えていた。体内にため込める量は一般人と大差ないが、吸収速度だけなら、ジェシカを上回るほどだった。


リュネットは当主として、仕事をこなしていた。

屋敷の改修工事は既に終わっていたが、当初の計画とは少し違った。


リュネットの周りにはいつも小さな子どもたちがいて、楽しそうに笑っていた。


母親がいなくなってから、リュネットは一人だった。母親の影響か、親戚の類とは全く連絡がつかなかったからだ。

そこでリュネットは、17歳という若さで、孤児院を開設したのだ。

もちろん使用人達にも手伝って貰った。


リュネットは孤児院の院長として、毎日忙しく楽しく暮らしていた。


そんなある日、リュネットの元にジェシカから電話がかかってくる。


『もしもし、リュネット?来月辺りお休みがもらえそうなの。だから、2人でどこか遊びに行けないかなーなんて、忙しいかな」


リュネットはカレンダーを確認する。特に予定は、ない。


「行く!絶対行く!どこにする?どこにする?!」


『一旦落ち着いて。そうだね…日本なんてどう?リュネット前から行きたがってたじゃない?」


「日本って…日本!?行く!日にちは!?具体的に!?いつ!?」


『興奮しすぎ。詳しい日にちはあとでメールしとくから。またあとで」


そう言って通話は終了された。

そばにいた小柄なメイドが、苦笑いしながらリュネットを見ていた。単純にうるさかったのである。


かくいうリュネットは、目を輝かせ、ワクワクしながら自分の仕事に戻るのだった。



◇◇◇



それからしばらく経って、ジェシカとリュネットは、日本、秋葉原に来ていた。


リュネットは、普段孤児院で着ているような服とは違い、水色のキャミソールにショートパンツを合わせ、NとYが合体したようなロゴがデザインされたキャップをかぶっていた。リュネットくらいの年頃の女の子の夏というものをできるだけ元気に表現したらこうなるのだろう。


ジェシカは、というと、黒いノースリーブのワンピースに、袖に向かって広くなるアームカバー。

要するに、いつもと変わっていなかった。

昔リュネットに貰った服が割と気に入っていて、似たようなデザインの服をたくさん持っていた。


リュネットがおとなしい子で、ジェシカは元気な子、とういうのはもう10年以上前の話。今となっては真逆と言っても過言ではなかった。


2人とも、日本語に関しては全く問題はなかった。

ジェシカは本部に来た時にほとんどの国の言葉を覚えた、というか覚えさせられたし、リュネットは昔から日本が大好きで、アニメや漫画で勉強していたらしい。


リュネットの行きたがっていたアニメの専門店や、コスプレのお店に行った。

ジェシカはリュネットにピンクが基調のゴスロリを着せられていた。

店員が、「ヤバい」「可愛い」「つれて帰りたい」などと言って写真を撮りまくっていたが、ジェシカとしては、恥ずかしくて穴があったら入りたかった。

まあ、褒められたことに関してはまんざらでもない訳だけど。


ゴスロリはお店にお返しして、再び秋葉原にくりだす。


途中チャラチャラした男の人に声をかけられることがあったが、フランス語で喋ると用事を思い出したとかでどこかに行ってしまうという事が判明し、何度か使った。



◇◇◇



楽しい時間が過ぎるのは早い、なんて言うが、2人にとっては本当にそんな気がした。


もうすぐ日が沈みきるというのに、全く人の減らない雑踏のなか、2人はファーストフード店にいた。


休みはまだあるので、明日は飛行機に乗って京都に行ってみようか、なんていう話をしている最中だった。


ジェシカの携帯から嫌な音が流れる。

地震や津波を知らせる警報音に似たその音は、協会が設定する、緊急ダイヤルの音だった。

ジェシカはそれに応答する。


「どうしまし…」


『もうダメだ!悪魔が!悪魔が!こんな数、相手できるはずがあぁぁっ!ーー』


通信はここで切れた。

激しいノイズと、瓦礫が落下するような音。おそらく、もう戦闘状態に入っているのだろう。


最近、日本での悪魔の活動が活発化しているということは本部で聞いていたのだが、こんな形で表面化するとは思っていなかった。


まずは、現状の把握からだ。

幸い、支部庁舎の位置はここからさほど離れてはいなかった。


「ごめんリュネット、先にホテルに帰って。すぐに戻るから」


「いやよ、私ジェシカと一緒にいる」


「リュネット、今はそういうこと言ってる場合じゃないの本当に、危ないから」


「ふふっ、前にもこんな事あったわね。ジェシカ?あなたは知らないと思うけど、私、結構魔力を持ってるのよ?今1人になるより、ジェシカの近くにいたほうが安全じゃない?」


「それ、初めて聞いたんだけど、ホントなの?」


リュネットは誇らしげに言った。


「本当よ?」


ジェシカはしばらく考えて、判断を下した。


「仕方ない。でも、庁舎の前までだからね?」


すっかり日も暮れたというのに、ビルやお店の明かりで全く暗くないアキバの街を、ジェシカとリュネットは庁舎に向かって走り出した。

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