2-8 シュバリエ・ジェシカ・ド・リュフワ
今回は少し短いです
ライアンはおばさまを連れて離れを出て行った。
「俺にはまだやることがある」そう言って詳しい話は何もしてくれなかった。
離れにはジェシカとリュネット、それから厨房で様子を伺っていた使用人達が残されていた。
リュネットには、ついさっき起きたことがいまだに信じられないというふうに、ポカンとしていた。
ジェシカは、リュネットの方に行こうとしたのだが、足下にあった拳銃につまづき転んだ。
びしゃっ!という音がして、両手を宙に投げ出すように頭から床に倒れた。
「ううぅ…」と小さく唸りながら起き上がるジェシカを見ながら、リュネットは言った。
「今思ったんだけど、もしかして私が当主?」
「そう、かもね」
おでこをさすりながらジェシカは言う。
「じゃ、じゃあ、なにしてもいいんだよね?」
「なにしても、は、困ると思うけど、その辺どうなのかな?」
ジェシカは使用人達に言った。まだ状況を全部理解できていないうえに、突然話をふられたのであたふたする使用人達。
そのうち、ジェシカほどではないが小柄なメイドが出てきて、「痛いの以外なら、なんなりと」と言った。
真意は定かではないが、リュネットは愛されているんだなと感じた。
「えっと、じゃあ、まず最初に、ジェシカ!」
「私?」
「ジェシカは今日からうちの子よ!あ、でも、姓は今のままがいいわよね。じゃあ、名前の後ろに家名だけつけましょう!シュバリエ・ジェシカ・ド・リュフワって名乗るの!」
「シュバリエ・ジェシカ・ド・リュフワ…」
「いや?」
「ううん。ありがとう。大切にする」
そのときジェシカは笑っていた。
自分で抑えていたのもあり、感情をあまり表に出さないジェシカだったが、このときばかりは、そんなものどこかにいってしまっていて、自然にこぼれた笑顔だった。
リュネットはしばらくジェシカの笑顔に見とれていたが、「それからね、それからね!」と、新しいルールやイベントをまくしたてた。テンションが上がっていたせいなのか、もともとなのか、意味不明なものも少なからずあったので、内容については省かせてもらう。
とにかく、このときリュネットはリュフワ家の当主になった訳だし、これがきっかけでジェシカはエクソシストになったのだった。
しかし、運命の歯車は狂ったまま。いびつに動き続けているのだった。




