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エクソシストは死神の夢を見るかforZERO  作者: サトウイツキ
僕が見た夢、少女が見た世界
19/82

2-6 代償

「エクソシスト協会」が屋敷に到着したのは、ジェシカが怪物を倒してから30分くらい後の事だった。


協会の人達は、屋敷にいた使用人や要人の全員に、今回の一件について丁寧に説明していた。


この屋敷に現れた悪魔は、野生の狼に取り憑いた悪魔だったため、発見が遅れたのだという。


協会の責任が大きいため、戦闘によって壊されてしまった壁や家具なんかの修繕費は、ある程度までなら補助できる、という話もしていた。


瀕死のジェシカと、ジェシカに寄り添うように眠っていたリュネットは、協会の構成員によって発見され、すぐに協会の息のかかった病院に運ばれた。


搬送される途中、リュネットは目を覚ました。

最初戸惑っていたが、ショートカットの構成員が優しく説明すると、リュネットも落ち着いて、怪物はジェシカの手によって葬られたことや、そのときジェシカに起こったことを見たまま話した。



◇◇◇



病院、ジェシカの病室


ジェシカにもリュネットにも大した怪我はなかったが、ジェシカは、魔力欠乏という状態にあった。これは、体内の魔力を一気に消費したことで起きる症状で、貧血に近いような感じらしい。数日もすればもとの状態にまで回復するだろうということだった。


しかし医師が告げたもう一つの検査結果は、あまりにもつらいものだった。


「大変申し上げにくいのですが、ジェシカさん、あなたの体はこれ以上成長しません。…原因はいろいろあるのですが一つは…」


医師は原因についていろいろ言っていたが、ジェシカにとってそんなことどうでもよかった。

何が起こるかわからない。と師匠が言っていたのを思い出していた。髪の色が変わり一瞬で伸びたのも、あれが原因だろう。


食器棚の一番上の段に手が届くことはもうないのか、とか、リュネットに貰った服をずっと着てられるな、とか。どうでもいいことなはずなのに、なぜか涙がこぼれる。

どうでもいい、はずなのに。


医師が病室を出て行く時、入れ替わるようにしてリュネットが入ってきた。


急いで涙を拭いてリュネットを迎える。

ところがリュネットも、なぜか悲しい顔をしていた。


「聞いちゃった…」


「そう…」


沈黙。


しばらくして、リュネットが声をあげた。


「気に入った服ずっと着てられるよ」


「え?」


戸惑うジェシカをよそにリュネットは続ける。


「電車とか、子供料金で乗れるかもしれないし、あ、でも、髪の手入れはちゃんとしないといけないわよ、一生ものだからね!」


とにかく、励ましたい、というリュネットの気持ちは、ジェシカに届いたようだ。


「そう、だね。私、髪の手入れとかよくわからないから、リュネットやってよ」


「まっかっせっなさーい!」


さっきまでの沈黙が嘘だったかのようにリュネットはウキウキしていた。


リュネットはどこからか散髪用のハサミを持ってきて、ジェシカの髪を切り始めた。

ジェシカは最初、「え!?切るの!?」という反応だったが、今のままでは流石に邪魔だし、手入れもまともにできないよ、とリュネットに言われ、大人しく切られていた。

途中「あ、やば…」という声が聞こえたが、聞かなかったことにした。


「かんせーい!」


ジェシカの一瞬にして伸びた白い髪は、きれいに切りそろえられ、黒いリボンでツインテールにされていた。

前髪が一直線になっていたのはきっと仕様だろう。


「ありがとう。リュネット」



◇◇◇



屋敷は既に改修工事に入っていて、おばさまは離れで暮らしていた。


ほとんどの使用人には暇を出していたため、少ない使用人に迎えられ、ジェシカとリュネットは屋敷に帰ってきた。

一緒に来ていた医師が、ジェシカの体のことについて説明していたが、おばさまは興味の無さそうに聞いていた。


今後のことについては、夕食の時に話があった。

ジェシカは一応使用人なので、一緒に夕食をとるのはどうかと思ったが、話があるというし、リュネットがどこまでも諦めなかったので夕食の席についた。


四角く、白いクロスのかかった木のテーブルは、たった3人が食事をするのには広すぎるような気がした。


メインディッシュのローストビーフが運ばれてきたとき、おばさまは言った。


「ジェシカ、あなたは今日で解雇です」


「お母様!」


リュネットは声を荒げたが、目線だけで威圧されてしまう。

ジェシカは食事の手を止め、黙って聞いていた。


「協会の方々によれば、あの悪魔はさほど強い悪魔ではなかったそうです。あなたが無茶な戦闘をしなければ、屋敷中が壊れることもなかったでしょう。協会が到着するまで待てば良かったのではないですか?それに、あなたのその体。もう成長しないんですってね。それなら体でも売れば生活には困らないでしょう。」


「お母様!それはあんまりな言い方じゃありませんか!もしジェシカが戦っていなかったら、怪我をする人がでたかもしれないし、私なんか、生きていなかったかもしれないのに!」


テーブルを叩き、立ち上がるリュネット。


「あなたは黙って…」


「いいよリュネット。」


リュネットを叱ろうとするおばさまの声を遮って、ジェシカが口を開いた。


「おばさまはね、何かと理由をつけて私を追い出したいだけだから。」


「あなた!何を言って…」


ジェシカは、おばさまに向かって続けた。



「私の両親を殺したのも、おじさまを殺したのも、ご主人様、あなたですよね?」

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