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エクソシストは死神の夢を見るかforZERO  作者: サトウイツキ
僕が見た夢、少女が見た世界
17/82

2-4 メイドとパジャマと復讐心

ジェシカはその日、普段よりもかなり早い時間に目が覚めた。

目が覚めたというのは嘘で、起こされた、というのが正確だ。


そこにはメイドが1人とおばさまがいた。

おばさまは、不機嫌そうな顔をして言った。


「ジェシカ。あなたは今日から当家の使用人です。さっさと支度なさい」


「なぜ?」


当然の疑問だった。

心当たりが無いわけではなかったが、本当の事を聞く必要があると感じた。


「夫の遺言書が見つかったわ。そこに書いてあったのよ。あなたが自立できる歳になるまで、当家で養え、ってね。まあ、ただ養われるっていうんじゃあ、あなたが申し訳ないと思うかもしれないから、メイドになってもらうわ」


その瞬間、ジェシカの中ですべてが繋がったような気がした。

しかし同時に、今は話すときではない、とも思った。


「はい。承知しました。ご主人様」


ジェシカは、引き出しにしまってあったハサミを取り出すと、長かった銀色の髪をバッサリと切った。


艶やかな銀色の髪が、カーペットに落ちる。これは、決意であり、戒めであった。


ジェシカはこのとき、全てを知った上でこの人に仕えようと決めたのだ。

信用していたからではない。

復讐する、その瞬間ときまで。



◇◇◇



メイド服を着て、ショートカットになったジェシカを見て、リュネットはびっくりしていた。


「じぇしかちゃん、メイドさんになったの?」


「…はい」


「わー!ホントにメイドさんみたーい!」


「それでは、私は仕事を覚えなくてはいけないので」


リュネットは気付かないだろうな、と思っていたから、これで良かった。

ジェシカはリュネットに、さっき習ったばっかりの深いお辞儀をして、部屋の扉をおした。


「いつでもおいで…」


部屋から出ようとしたとき、リュネットが言った。

おそらくは、おおよその事情を察したのだろう。

リュネットはこの家の子供だが、ジェシカはそうではない。


ジェシカは一瞬止まったが、すぐに部屋を出て行った。


振り返ったら、もう戻れないような気がしたのだ。


長い屋敷の廊下を歩きながら、ジェシカはつぶやいた。


「ごめんね、りゅねっと。私、あの人を許せないの…だからそれまでは、お友達ではいられない」


ジェシカの瞳に、涙はなかった。

ただ、うっすらと十字架が宿っているのだった。



◇◇◇



ジェシカが復讐を誓い、リュフワ家の使用人になってから、6年の歳月が経った。


11歳になったジェシカは、少し伸びてきた髪を適当にまとめていた。他のメイドが、ポニーテールも似合うわね、とか言っていたけど、女の子らしい趣味なんか、6年前、メイドになった時に置いてきた。


それとは別に、ジェシカは誰よりも仕事ができた。


もともと物覚えの早かったジェシカは、抜群の運動神経と、復讐心という名の行動力で、いち早く仕事を覚え、不安がっていた他のメイド達からも少しずつ信頼を勝ち取っていった。


でも、リュネットとはほとんど話さなくなった。

給仕のときに、必要最低限の会話を交わすのみ。


一応学校には通わせて貰っていたが、リュネットとは違うクラスだったから、余計に話す機会はなかった。


成績はいつも1位か2位で、特待生となり、学費はほとんど免除されていた。

ジェシカが2位のとき、1位はリュネットだったのだけれど、ただそれだけだった。


リュネットだって、話しかけたくないわけではない。でも、話しかけたところで、「はい。」とか、「そうですね。」としか言わないし、笑っている顔も全くと言って良いほど見なくなった。


そんなジェシカを、ただ見ていることしかできなかった。

もどかしいけど、それしかできなかった。


事件が起きたのは、そんなある日の事だった。


ジェシカはその日、夢を見た。


リュネットと、知らない男が喋っている夢だ。


違う。


知らない男ではない。

6年前にも同じ夢を見たはずだ。

確かあれは、おじさまが亡くなる前の日の。


直感的に、リュネットが危ない!と感じたジェシカは、パジャマのまま部屋を飛び出し、リュネットの寝室へ走った。


寝室の扉を開けると、リュネットは天蓋付きのベッドで眠っていた。

そして、眠っているリュネットに牙を突き立てようとしている怪物も、そこにいた。

怪物は、狼を何倍も大きくしたような見た目で、目は血走り、禍々しい障気を纏っていた。


「そこをどいてください!」


精一杯の声で叫んだ。


怪物はジェシカに気づくと、ジェシカを飛び越え、部屋と廊下を分けている壁を軽々と破壊。

そのまま廊下を走り去っていった。


ジェシカはリュネットに駆け寄った。


「リュネット!大丈夫!?」


「ん…どうしたの…ってジェシカ!?しかもそんな格好で…」


「緊急事態なの。説明は省くよ。とりあえず安全なところに避難して!」


いつも冷静で、親友だったリュネットに対しても敬語を使っていたジェシカも、このときばかりは違った。


ジェシカは携帯を取り出すと、緊急ダイヤルを押して言った。


「緊急事態発生!屋敷の中に怪物が現れたわ!使用人はおばさまと要人の避難を優先!リュネットは私がなんとかします!もし怪物に遭ってしまっても必ず逃げて!」


ジェシカの声が屋敷中に響く。


壁が壊された時の音でほとんどの人が目を覚ましていたので、避難指示は思いのほかすぐに伝わった。


「リュネット、とりあえず外にに避難して。私はあれを追う」


「いやよ。私ジェシカと一緒にいるわ」


「リュネット!こんな時に何を言っているの!」


「ジェシカ?私ずーっと我慢していたのよ?あなたがこの家のメイドになってしまってから、ろくに目も合わせてくれないかなじゃない。でも今は、違う。私の目を見て、必死に助けようとしてくれている。それに、メイドが主人に逆らっていいのかしら?」


「それは…」


「ふふっ。それじゃあ決まりね!あ、でも着替えたほうがいいわね。あ!ジェシカはこれを着て!ーー」



こうして、ジェシカとリュネットは屋敷の怪物退治に向かったのである。



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