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エクソシストは死神の夢を見るかforZERO  作者: サトウイツキ
僕が見た夢、少女が見た世界
14/82

2-1 ジェシカとライアン

「はい!生まれましたよ!元気な女の子です!」


女医の声が響く。

それは、少女が生まれ、祝福された瞬間であり、同時に全ての悲劇の始まりであった。


アメリカ。


少女は、アメリカ人で悪魔祓エクソシストいの父と、フランス人で吸血鬼狩ヴァンパイアハンターりの母の間に生まれた子供だった。

両親の特殊な職業柄、気にすることは色々あったが、一番気にしていたのは髪の色だった。


父の家では、銀髪は禁忌とされていたからだ。

エクソシストならどこの家でもみんなそう、という訳ではないらしいから、きっと先祖代々続く因縁のようなものだろう。


少女よりも先に生まれた少年は金髪だったし、金髪の父と赤髪の母の間の子だから、そんなに気にすることはない。と女医は言っていたが、それでも気にしてしまうくらいに、髪色というものは重要だった。


「奥さん…この子…銀髪です…」


しかし少女は銀色の髪をもって生まれた。


奥さん、そう呼ばれた女性は、生まれたばかりの我が子を抱いて涙した。

ごめんね、ごめんね、女性はただ謝っていた。


少女が銀髪で生まれてしまったのは女性のせいではない。まして、他のだれのせいでもない。

神のみぞ知る。というやつだろう。


父も生まれたばかりの少女を見て母親と同じ反応をした。しかしすぐに、


「禁忌なんか関係ない。これは俺達の子供だ」


そう言って父親は、まだ幼い少年の頭をワシワシとやった。

少年は子供扱いするなとばかりに父親の手を払おうとしたが、父親の手は思ったよりも力強くて払えなかった。


少年は、父親に抱きかかえられて、布にくるまれた少女、妹を撫でた。


「ようこそ。僕の妹。ジェシカ…」



◇◇◇



最初から思っていた通り、父の家には受け入れてもらえなかった。というか、勘当されてしまったので、フランスにある母の家で家族4人暮らすことになった。


しかし両親は多忙だった。


もともと2人とも優秀なエクソシスト、ヴァンパイアハンターだったため、あっちにこっちに引っ張りだこだったのだ。


そんなとき、助け船を出したのが母の古くからの友人。リュフワ家当主の妻だった。幼い頃たまたま一緒に遊んだのがきっかけで、仲良くなった。


リュフワ家は、父親の家とも比べものにならない程、位の高い家柄だった。


母親が聞いた話では、古い王族関係者の家らしい。


両親が2人とも遠征に出てしまう時には、少年と少女はリュフワ家に預けられた。



◇◇◇



5年後


「なかなか筋がいいじゃねえか!ライアン!」


「はい!ありがとうございます!」


リュフワ家の当主がライアンと呼ぶ金髪の少年は、剣の稽古をつけてもらっていた。

当主が言った通り、ライアンは8歳にしてはとても筋がよかった。


ライアンは今よりもずっと小さい頃から剣を習っていて、これも親の影響か、と当主は思っていた。


「お兄ちゃん!これ見て!りゅねっとに教えてもらって作ったの!」


「おお!ジェシカ!そこにいたのか!これをくれるのかい?よくできているな!さすがは僕の妹だ!ありがとう!」


ライアンの妹、ジェシカは花で編んだかんむりをライアンの頭にのせた。

ジェシカはライアンに誉められて、嬉しさと恥ずかしさが混ざったような顔をしてモジモジしている。


サラサラで銀色の髪。ピンク色を基調にした動きやすそうなワンピース。


重度のシスコンであるライアンにとっては、それらすべてがおよそ天使のように見えていただろう。


「待ってよぉ~じぇしかちゃ~ん…」


息を切らせながら走ってきたのはリュフワ家の娘、リュネットだった。


リュネットは、ジェシカと同い年で仲がよかった。


「お父様…これ…私も作ったの。貰ってくれますか…?」


「おお!リュネット!そこにいたのか!貰ってくれますか?だと?当然だ!さすがは私の娘だ!ありがとう!」


水色のワンピース。少しウェーブのかかった長い髪。それは日の光を浴びて金色に輝いていた。


重度の親バカであるリュフワ家当主にとっては、それらすべてがおよそ天使のように見えていただろう。


リュネットはジェシカとは対照的におとなしい子だった。

ジェシカを太陽とするなら、リュネットには月のような愛らしさがあった。


「パパとママにもあげるの!早く帰ってこないかなー…」


「今日のお昼には帰って来るといっていたからね。もう少しの辛抱だよ」


寂しそうなジェシカを見てリュフワ家当主は声をかけた。


「そうよ。じぇしかちゃん。外国には『果報は寝て待て』という言葉があるのよ。焦らず待てばいいのよ」


「お昼寝には、ちょっと早いよ?りゅねっと」


「えっと、そうじゃなくてね、えーっと…?」


リュネットは何度か説明を試みたがジェシカには伝わらなかったようだ。


辺りは和やかな空気に包まれていた。




それを睨み爪を噛む人影。


この人影の正体をジェシカ達が知るのはもっとずっと後になってからだった。





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