1-13 病室にて
最初から、あなたを利用してたんですよ。差滋悠輝さん。
ジェシカさんは淡々と続けた。
「日本支部が悪魔の襲撃によって壊滅したというのは話したと思います」
はじめて会った時に聞いた。そして、その主犯の悪魔は一週間前にジェシカさんが倒したはずだ。
「そうです。でも事が上手く運びすぎだと思いませんか?」
この一週間、いろいろ考えていたが、いつも行き着くのはそれだった。
僕が逆ナンされるところまでは悪魔の仕業だとしても、その後が上手くいかない。
悪魔と戦っていたときのジェシカさんを見て、人間業ではない、という確信があった。つまりあれは、悪魔祓い(エクソシスト)としての力なのだろう。そしてそれは、おそらくその辺の悪魔祓い(エクソシスト)よりも強力なのだろう。
だとすれば、僕の魔力を吸収する前の悪魔を縁日のときに祓いきれなかったのは、納得がいかない。
つまり、僕自身が囮だった。というわけか。
「ご名答です。思ってたよりも賢いんですね。ちなみにフランス語で賢いことをsageというんですよ。あなたの名字に少し似てますね」
ジェシカさんは、少し笑っていた。
「今回の一件に関しては、全て私の独断です。本部に所属はしていますが、エクソシスト協会は全くの無関係です」
スーツの女の人から聞いた事だが、ジェシカさんは協会の命令に背いたうえに、僕や中村さんのような一般人を巻き込んだため、悪魔を祓う力(祓力)を剥奪され、退会処分になるという。
「え、そうだったんですか。はーあ。こんなことなら、敵討ちなんかするんじゃなかった」
いつもわりと丁寧な言葉遣いのジェシカさんだったが、この時ばかりは違った。
それに、敵討ちって・・・
「どうせ記憶消されちゃいますからね。腹いせに全部喋ってやる」
ジェシカさんはベッドからとび起きると、ピンクのパジャマ姿のままこっちに近づいてきた。
「ちょっとしゃがめ」
言われるがまま、しゃがんでしまった。
ジェシカさんの顔が近づいてくる。
ゴチン。
おでこの方で、鈍い音がした。
その瞬間、僕はある少女の夢を見た。
それは、あまりにも残酷な運命を背負った一人の少女、もとい幼女が見てきた世界だった。




