1-11 吸血鬼狩り
「エクソシスト協会本部所属、シュバリエ・ジェシカ・ド・リュフワ。これからあなたを、
祓います」
そんな体で、と言いたかったが、傷口らしいものは見当たらず、
ところどころ破れた黒のワンピースからは、白い肌が見え隠れしていた。
「差滋さん。私実はハーフなんですよ」
突然何を言い出すんだ。
「アメリカ人でエクソシストの父と、フランス人で『吸血鬼狩り』の母との間の子です。なので私、吸血鬼を狩る力も持ってるんです」
そう言いながらジェシカさんは剣を構えた。
「Kill the vampire」
比喩ではなく、空気が震える。
ジェシカさんの髪の色が変わっていく。
銀色。
雪のように白かった髪は、剣を思わせるような、銀色になっていた。
そしてその瞳には、十字架が映っていた。
「悪魔を祓う事に関しては、全く関係ありませんが、動きの速い吸血鬼を狩るために、吸血鬼狩りは代々、身体能力を高める秘術を使います。少し燃費が悪いですが、あんな悪魔。瞬殺です」
「おもしれェじゃねえか!いいぜェ!ぶっ殺してやる!!」
僕の肩から血が吹き出した。
魔力を吸っているのだろう。黒い物体はそのまま僕の肩にめりこんでいく。
「大丈夫…気にしないで…早く…」
「わかってます」
ジェシカさんはそのまま剣を構えている。
「隙だらけなんだよォ!!」
悪魔が腕を振りかざす。
「遅いですね」
しかしジェシカさんは、悪魔の後ろにいた。
僕が気づいた時には、振りかざしたはずの悪魔の腕は地面に落ちていた。
そう、腕だけが。
「なっ、なんじゃこりゃああぁぁぁァァァァ!!!!!」
吸血鬼狩りのジェシカさんは、速かった。
おそらくは、さっきジェシカさんを吹き飛ばした時の悪魔よりもはるかに速いだろう。
もはやこの速さは、瞬間移動と言っていいレベルだった。
それでも、腕のない悪魔は笑っていた。
「おもしれぇ!おもしれぇよお前!お前、堕ちてみねーか・・・あ?」
悪魔は、気付くのに少し時間かかったようだ。
自分の体と頭がもう離れていることに。
しかし悪魔は、喋り続ける。
「ククク。ったくよォ、いきなりは卑怯じゃねェかァ?」
生物としての概念は通用しなさそうなので、体と頭が離れていても喋っていられるのは納得した。
それでも悪魔は笑い続ける。
「けどよォ、ここで俺様もお前もこの世とはおさらばだぜェ!!」
悪魔の体が障気に包まれる。障気は立ち上り、上空で小さな塊を形成した。
それはやけに禍々しく、全身がピリピリする。
「まさか…この空間ごと吹っ飛ばす気ですか…」
「ククク!ハーッハッハッハ!」
この空間ごと。
僕達の生きてる世界とは違う、そうジェシカさんは言っていた。
でも、この空間ごと吹き飛ばされたら、現実の世界にも影響がでるんじゃないか?
「そうですね…ゼロ、という訳には、いかないですね…」
なんとかは…ならなさそうだった。
燃費が悪いとは言っていたがこの短時間でここまで消耗するのか。
ジェシカさんは剣を地面に突き立てて、もたれるようにして立っていた。
悪魔狩りモードはすでに解除されてしまっていて、雪のように白い髪が垂れていた。
「師匠…あ、ダメ。そうですか、抑えきれないそうです…」
もうダメかもしれない。そう覚悟した時だった。
空からの一閃。
黒い塊は消滅した。
「よお。同業者」




