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秋亀荘日誌  作者: ラムダ
1/3

1) 私の1日

注意!!

この話には擬人化要素があります。

擬人化が苦手な方はUターンしましょう。

 目を覚ますと、見なれた天井が映る。

「...うー...ん、」

 時刻は日の出の少し前。ぬくぬくとして快適な部屋から何とか這い出て、外の気を吸い込む。

「...うん、おはよう。」

 今日も、1日が始まる。


 ここ、秋亀荘にいる人々の中には仕事を持つ者もいるが、私にはこれといった仕事が無い。自分の部屋でごろごろダラダラして1日を過ごすこともあるが、今日は日光を浴びたい気分なので、外に出ることにする。


 広い屋上に出て、大きめのベンチに横になる。暖かな日差しが、私を包む。

 どこまでも青い空には、雲が1つ、2つ。数えているうちに、私はまどろむ。

 と

「一澄、何してるの?」

 声とともに、私の視界が遮られた。

「!?」

 慌てて飛び起きると、相手も目をパチクリさせた。

「わわ、何か邪魔した?」

「え、いや...あ、なんだ、環奈ですか」

 逆光になってて分からなかったが、親友の環奈だった。

「一澄はここで何してたの?」

「え?...日光浴してただけですけど...そっちこそどうしました?」

「いや、真紀が外に遊びに行きたいって言いだしたからさ、一澄も一緒に来るかなって」

「真紀が、ですか...」

 わーい外だー、とはしゃぐ真紀の顔を思い浮かべる。

「断ったら後で何か言われそうですね...」

 ため息をつくと、環奈が目を輝かせる。

「じゃあ行く?」

「ん...まあ、やることありませんし」

「そう来なくっちゃ!! ささ、行こ!!」

 いつになくハイテンションな環奈に手を引かれ、私は屋上を後にした。


「お待たせ、真紀」

「遅いよ環奈、何してたの?」

 案の定、門の前では真紀が怒っていた。

「ごめんごめん、一澄連行してきた」

「え、私ってそういう扱い...」

「わーい一澄だぁーーー!!」

 私の顔を見た瞬間、真紀は飛び付いてきた。さっきの不機嫌はどこへやら。

「良かった良かった、ところで真紀はどこに行きたいの?」

「待って良くない」

「えーとね、お花見行きたい!!」

「真紀、お花見は今度皆で行くから我慢して下さいね。それからちょっと離れて下さい、苦しいです」

「あーそっかー...」

 とても残念そうだが、とりあえず私からは離れてくれた。

「どうしますか環奈、この人お花見しか考えてませんよ」

「うーん...あんまりお金がかかるところは行けないし...動物園にでも行く?」

「動物園?」

 あ、真紀が反応した。

「真紀、動物園行く?」

「...うん」

 真紀はまだお花見に未練があるようだが、小さく頷いた。

「よし、行き先も決まったことだし、行きますか!!」

「わーい外だー!!」

「何がいるでしょうか...」

 私達は目の前の門をくぐる。その先は、真っ白。

 次の瞬間、目の前には動物園があった。環奈の手を引いて走り出す真紀。私はそっと振り返る。くぐってきたはずの門は、そこには無い。

 大丈夫。帰りたくなったらまた門は現れる。ただし、私達に与えられている時間は、1日の4分の1。それを過ぎれば、私達は2度と、秋亀荘には戻れない。

「私だけでも覚えておかなくては」

 ひとり呟いて、私は2人の後を追いかけた。


「思ってたより疲れるね...」

 私達は、売店で買ったアイスを食べながら、ベンチで休憩していた。

「敷地広すぎですって...もっと運動しておけばよかった...」

「あー、アイス美味しいね...本当に美味しい...」

「ねぇ一澄、環奈、あれ乗ろ!!」

 いつの間にアイスを完食した真紀が指さす先には、観覧車があった。

「何で動物園に観覧車が...」

「お、楽しそう。乗っちゃう?」

「やったー、環奈わかってるー!!」

「よし、じゃあ私と一澄がアイス食べ終わったら行こうか」

「わーい!!」

 なんか私も乗る流れになってる気がする。


「わー、綺麗ー!!」

 真紀は窓にべったりくっついて、外の景色を見ている。

「...楽しい?」

 私の向かいに座った環奈が、不意に聞いてくる。

「......そうですね、普段は中々経験しないことなので」

 そう答えると、環奈は笑った。

「...それはよかった」

 観覧車はゆっくり廻る。私も窓の外に目をやった。動物園を囲む森の向こうに街が見える。その更に向こうは一面の海だった。

「......綺麗」

 思わず口をついて感嘆がこぼれた。

「...一澄、水が好きだもんね」

 変な角度から返ってきたと思ったら、声の主は真紀だった。

「真紀...やっと大人なこと言えたね」

「ちょ、それどういうことー!?」

 何か変なことを言いだした環奈に、真紀は頬を膨らませた。


「あー楽しかったねー!!」

 お土産の入った紙袋を振り回して、真紀はご満悦のようだ。

「今度は百合乃たちも連れていきたいね」

「そうですかね...私は疲れました」

 足が痛い。この場で寝てしまいたい位だ。

 でもそれはいけない。

「それじゃ、環奈、真紀、帰りましょう」

「うん、帰ろう」

「オッケー!!」

 すると、目の前に秋亀荘の門が現れる。

 3人でそれをくぐれば、もうそこは秋亀荘の敷地内だ。

「...ただいま」

「お土産だよー!!」と叫びながら玄関に駆け込んでいった真紀を見ながら、小さく呟いた。


 自分の部屋に入り、ベッドに倒れ込む。

 ここは、他の人は入れない、私だけの部屋。

「疲れた...」

 私は、今日見てきた動物達や、観覧車から見えた海を想い起こして、笑った。

「今日も楽しかった」


 ここ秋亀荘に来て、どれくらい経っただろう。ここに来てから、毎日が発見だ。この世界は面白い。太陽が輝き、地球はその光を受けて生命を育む。終焉を迎えた生命は再び地球へと還るのだ。

 私は、この世界に存在し、かつ、この世界を知らなかった。

 ここに来て、「人」となるまでは。

第1話、読んでいただきありがとうございます。

どうだったでしょうか。こういう場に小説を投稿するのは、これが初めてなので...見辛いなどあれば、是非教えてください。待ってます。


まだ3人しか登場しておりませんが、だんだん増えてくるのでお楽しみに(名前だけならもう1人出てますし)。


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