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第11話「古き魔晶の闇(4)」

 ゴールデンクルスは恭しくクラウスにお辞儀をした。

「はじめましてアステア王。俺はあんたの遠縁に当たる者です」

「王族……君のことなんて知らないぞ」

「系譜からはとっくの昔に消されてますからね。けどありがたいことに、代々ここのヒミツは伝わってましたよ。今回の作戦を考えたのも俺ですから。まあ仲間に伝えていたのは表向きの作戦ですけどね」

 ルビーローズの理想と違える者。だとすれば驚異でしかない。

「妾のライバル登場というわけか」

 とつぶやいたカーシャにすぐさまルーファスはツッコミ。

「お願いだからカーシャ、話をややこしくしないで」

 とりあえずカーシャはルーファスに任せるとして、ゴールデンクルスの目的を問わなくてはならないだろう――それが推測であって欲しいと願いを込めながら。

 クラウスが口を開く。

「目的は?」

「力による支配」

「魔晶システムの兵器利用か?」

「それと、君から王座を奪うこと」

 心を映すような邪悪な笑みを浮かべたゴールデンクルス。

 ルビーローズに使役されていた爆弾はすでにクラウスから外れていた。

 構えるクラウス――戦う気だ!

 しかし、ゴールデンクルスは戦うずして制した。

「人質がいることをお忘れなく」

「クッ……」

 手が出せないクラウス。

 代わりにルーファスが口を出した。

「あなたたちは殺生はダメって聞いたぞ! 人質に手を出せないくせに!」

「残念ながら俺は違う。そして俺のシンパも違う。だから今から先代のアステア王には死んでもらう」

 先代の王――すでに王を気取っている。

「僕を殺したら魔晶システムを操作できる者がいなくなるぞ」

「だから言ったじゃないか。俺はあんたの遠縁なんだから、操作なんてお手の物」

「遠縁というのは真実なのかい?」

「仕方ない、証明してやるか」

 魔晶システムのコンピューターに向かって歩き出すゴールデンクルス。

 止めようと一歩踏み出したクラウスだったが、ゴールデンクルスは振り返って邪悪な笑みを浮かべるのだ。

「邪魔するなよ?」

 人質がいる限り手が出せない。

 しかし、もしも魔晶システムが奪われてしまったら、犠牲者は爆発的に増えることになるだろう。

 クラウスは苦悩した。

「(命の重さは計れるものではないと信じている。けれど、ここでなにもしなければ犠牲は確実に増える。全員を救いたいという考えでは甘いのか……できないのか!)」

 張り詰めた空気。

「ぎゃああああああ〜〜〜〜〜っ!!」

 突然聞こえてきた謎の叫び声。

 ゴールデンクルスも驚いて動きを止めてしまった。その瞳に映る人間ロケット――ルーファス。

 突然のことにゴールデンクルスはとにかく防御魔法を発動させようとした。

「シールド!」

 ゴン!

 顔面からルーファスはシールドに強打。透明なシールド面にルーファスのブタ顔がへばりついた。

 稲妻のようなその身の熟し!

「ピコ・ボム!」

 カーシャが放った魔法がゴールデンクルスの耳元で小爆発を起こした。

「ぐわあああああっ!!」

 耳を押さえてうずくまるゴールデンクルス。

「うおおおおおっ、耳が、俺の耳が……クソォッ!」

 さらにカーシャはゴールデンクルスの腹に蹴りを一発ぶちかました。

「妾の物だ!」

「ぐあっ!」

 床に転がったゴールデンクルスをルーファスがすぐさま取り押さえた。

「エナジーチェーン!」

 魔法の鎖で縛り上げ、さらに上に乗って押さえる。

「クソォォォォッ今すぐ人質を皆殺しだ!!」

「やれるものならやってみるがよい、ふふっ」

 カーシャは余裕の笑みを浮かべていた。

 ゴールデンクルスも気づいた。

 通信機が壊されていたのだ。

 すべてはカーシャの作戦だった。

 まずはルーファスを投げ飛ばすことにより、相手の驚きを誘うと共に、仲間に通信をさせる前にルーファスを防ぐという行動を強制させる。そこにすかさずカーシャの攻撃、狙ったのはゴールデンクルスが耳に取り付けていた通信機だ。

 これで一段落だ。クラウス救出の次は、防御システムの解除と人質の救出だ。

 しかし事は巻き戻ろうとしていた。

 簀巻きにされているゴールデンクルスが、全身をバネのようにしてルーファスに蹴りを喰らわせた。

「クソガキがっ!」

「うわっ!」

 吹き飛ばされたルーファス。

 ゴールデンクルスにマナが集まる。

「ハアアアアッ!!」

 怒号と共にゴールデンクルスは魔法の鎖を吹き飛ばした。ルーファスが魔力でつくった鎖を、ゴールデンクルスの魔力が上回ったのだ。

 ゴールデンクルスが光の槍をつくりだす。

「死ねーーーっ!」

「ルーちゃーん!!」

 ルーファスに槍が突き立てられる瞬間、ビビが立ちふさがった!

「きゃあッ!」

「ビビ!」

 ルーファスの叫び。

 光の槍はビビの腕を掠めた。

 床に迸った血。

 ルーファスの中で何かが切れた。

「許さないぞーッ!」

 我が身一つでゴールデンクルスに突っ込むルーファス。

 カーシャも急いで駆け寄る。

「莫迦かっ、素手で向かってどうするルーファス!」

 クラウスも急いだ。

「ルーファス落ち着け!」

 光の槍が薙ぎ払われる。

 ルーファスの胸が切り裂かれた。

 言葉を失ったビビ。

 クラウスも我を忘れた。

「フラッシュファイア!」

 爆炎がクラウスから放たれ、直撃を受けたゴールデンクルスが服を焦がしながら大きく吹き飛んだ。

 ビビは自暴自棄になっていた。

「もうヤダ、ヤダヤダヤダ! こんな物があるからいけないのッ!!」

 大鎌を高く振り上げていたビビの姿を見て全員息を呑んだ。

 激しい衝撃音が鳴り響いた。

 魔晶システムの制御コンピューターに突き刺さった刃。

 鼓動が聞こえる。

 激しい鼓動。

 まるで怒り震えるような鼓動の音。

 すぐさまクラウスが機器をチェックした。

「大変だ、エネルギーが急激に上昇してる!」

 カーシャは最悪の事態を想定した。

「これはあれが起きる可能性があるな。エレメンツ爆発に加えてメルトダウンか……確実に王都は跡形もなく吹っ飛ぶだろうな」

 その言葉にビビは我に返った。

「そんな……アタシ……」

「歴史に残る破壊神として名を残すことになるだろう(ある意味名誉だ)」

「そんなことになるなんて……アタシどうしたら……」

「歴史を伝える者がこの世に残っていればの話だ」

 さらに最悪なことを口走ったカーシャ。

 絶望するビビにさらなるカーシャの追い打ち。

「王都が吹き飛ぶくらいで済めば御の字だ。もっとも最悪なのは、爆発のエネルギーが巨大すぎてブラックホールを形成して星ごと丸呑みパターンだろうな(ふふっ、笑えん)」

 絶望感が漂う中で、その空気をぶち壊す一声。

「あーっ死ぬかと思ったーっ!」

 ビシッとバシッと立ち上がったルーファスだった。

「服ぱっくり切れてるよー、お気に入りのだったのになぁ」

 空気を読まずに服の心配をするルーファスだった。

 でもルーファスを見て歓喜が戻った。

「ルーちゃん!」

 ルーファスに駆け寄ったビビがそのまま抱きついた。

「く、首が絞まってるよビビ」

「よかった、どこもケガしてない?」

「切られたのは服だけだよ。それよりもビビは大丈夫?」

「人間に比べたら傷の治りが早いからだいじょぶだよ、血も止まってるし♪」

 クラウスも駆け寄ってきた。

「よかったルーファス。でも喜んでいる場合じゃないんだ、もうすぐ王都ごと消し飛ぶかもしれないんだ」

「……え?」

 あまりの事の大きさに反応が小さくなってしまった。

 地下が大きく揺れた。立っていられないくらいだ。

 今の揺れでルーファスは事の重大さを身に染みて感じ取った。

「今スゴイ揺れたよ! ど、どうにかならないのクラウス!」

「残念ながら制御不能なんだ。とにかくまずは地上に戻って制御ルームに行こう。そこで防御システムを解除すると共に外部に事態を知らせて、王都にいるすべての者をできるだけ遠く離れた場所に避難させなくてはならない」

 最後まで希望を捨ててはいけない。

「まあぶっちゃけそんな猶予残されてないがな、ふふっ」

 希望をぶち壊すカーシャの一言だった。

 魔晶が煮えたぎるマグマのように赤く輝いている。まるで噴火の時をまっているかのようだ。

 カーシャの言葉くらいではクラウスは希望を捨てない。

「とにかく最後まで諦めずにがんばろう!」

 部屋から逃げ出そうとする3人。

 だがその前にゴールデンクルスが立ちはだかった。

「俺の野望を打ち砕いたあんたらを行かせるわけにはいかない。この手で八つ裂きにしてらなないと気が済まない……と言いたいところだが、死ぬのはごめんだ」

 邪悪な笑みを浮かべたゴールデンクルスにマナが集まる。

 このときビビは無我夢中でゴールデンクルスに飛び掛かっていた。

 ゴールデンクルスが魔法を放とうとする。

 ルーファスも無我夢中だった。

「ビビだめだ!」

 ルーファスがビビの身体を押し飛ばした瞬間、ルーファスの眼前にゴールデンクルスの手があった。

「マギ・フラッシュ!」

 眩い閃光が放たれた。

 ルーファスの後ろに巨大な影ができる。

 影の中にいたクラウスやカーシャですら目が眩んで何も見えなくなった。

 ビビはちょうど床に顔を伏せる形になっていたが、それでも目が開けられないほどだった。

 誰も何も見えない中で男の呻き声が聞こえた。

「うう……ルビーローズ……生きていたのか……殺しはしないんじゃ……くっ」

 ゴールデンクルスの声が途切れ、倒れる音が聞こえた。

 いち早く視界が戻ったビビは見た。

 氷の刃が腹に突き刺さって身動き一つせず倒れているゴールデンクルス。

 そして、床に膝を付き全身の力を失っているルビーローズ。

「即死は狙わなかったわ……」

 そのままルビーローズは気を失った。

 クラウスやカーシャの視界も戻ってきた。

 ルーファスは?

「……眼が……見えない……まっくらだ」

 閃光によって光の残像がまぶたの裏に残っているのではなく、ルーファスの視界は完全な闇だった。

 ビビは息を呑んで涙が溢れそうになった。

「ルーちゃん……ルーちゃん!」

 力一杯ビビはルーファスの身体を抱きしめた。

「アタシのことかばったから! アタシのせいでルーちゃんの眼が!」

「大丈夫だよビビ、きっと一時的なものだと思うし。ただここから脱出するのはちょっと困るけど」

「ルーちゃんのことはアタシが連れて逃げるからだいじょぶだよ!」

 ビビはルーファスに肩を貸した。そして、クラウスも同じようにルーファスに肩を貸す。

「急ごう時間ない」

 廊下を急いで抜け、エレベーターに乗り込もうとした。

 開閉ボタンを押したクラウスが叫ぶ。

「クッ、開かない!」

 奥までに時間が掛かっているわけではない。動いている音すら聞こえない。完全に故障していた。

「逃げ道ならあるぞ、妾が通ってきた道だ」

「そんな道があるなんて僕も知りませんよカーシャ先生!」

 王すら知らない秘密の抜け穴をカーシャは知っていたのだ。

 急いで廊下を引き返す。

 魔晶がある大広間に戻ってきたとき、また激しい揺れが襲った。

 今度の揺れは今まと比べものにならない。

「きゃっ!」

 ビビの足下の床に小さなひびが入った。そのひびは徐々に口を広げ、ビビたちを丸呑みにしようとする。

 眼が見えないルーファスの足が呑まれた!

「うわっ!」

 呑まれた片足からバランスを崩して、そのまま地の底へ引きずり込まれた!

 ルーファスが闇の中に消える。

 ビビが亀裂に飛び込んだ。

「ルーちゃん!」

 ビビの手がルーファスの手を掴んだ!

 しかし、ビビもろとも闇の中に落ちてしまう!

 今度はクラウスが両手を伸ばした!

「ビビちゃん離さないで! 僕も決して離さないから!!」

 クラウスの両手はビビの足首を掴んでいた。

 亀裂の真横で腹ばいになってビビの足首を掴んでいるクラウス。

 ビビは亀裂の中に落ちながら宙づりで逆さまになりながら、しっかりとルーファスの片腕を掴んでいる。

 そして、カーシャは――。

「(ほっといて逃げるべきかどうするべきか……ここでルーファスを殺すのも惜しいな)」

 最悪な考えで迷っていた。

 それでも最終的にはカーシャも手を貸した。

 カーシャはクラウスに手を貸して、ビビとルーファスを同時に引き上げる。

 どうにか2人を引き上げて一息ついたが、周りの床は亀裂だらけだった。

 さらに悪いことが起きてしまった。

 何かが砕けた甲高い音。

 それはカーシャの足下に落ちてきた。

「魔晶の欠片だ。もう限界らしいな」

「カーシャ先生まだ希望はあるはずだ!」

 目の前の現実を見ればクラウスの言葉など虚しい。

 ついにビビが泣き出した。

「ううっ……アタシが……うぐっ……ううう……ぐ……」

 ここを逃げ出せば終わりではない。

 王都ごと消し飛べば、だれも生き残れない。

 しかし、クラウスは希望の光を見た。

 いや、それは現実の光が差し込む光景だった。

 歪む空間。

 カーシャは漏れ出してくる強烈なプレッシャーを感じた。

「ヤツだ」

 魔法陣などを必用とせず、何者かが空間を越えてやって来る。

 まず浅黒くしなやかな女の足が出た。

 だがそれは下僕の足に過ぎない。

 漆黒の翼を持ったボンテージの女――レディー・セルドレーダ。

 そして、その胸に抱きかかえられた幼い童子。

「私の留守中にどこの誰だね、こんなことをしでかしたのは?」

 見た目は幼くとも、大人びた男の声。しかも、魔力が言葉の1つ1つに込められている魅言葉を常に操っている。

 この男こそエセルドレーダの主人にして、クラウス魔導学院の学院長、そして世界でも3本の指に入ると謳われる魔人クロウリーであった。

 クロウリーの視線はカーシャに向けられていた。

「ば、莫迦な、こっちを見るでない。さすがの妾もこんなことまではせんぞ……そこで死にかけてる金髪のにーちゃんが元凶だ!」

 クラウスは一瞬だけビビの顔を見つめ、クロウリーに向き直した。

「はい、そこにいる金髪の男が今回の事件、テロリストの首謀者で魔晶システムを破壊した張本人です」

「ほう」

 と、クロウリーは短く。

 なにか察したかクロウリーは?

 しかし、それ以上の追求をクロウリーはしなかった。

「まあよい。今はこやつを黙らせることが先決だ。エセルドレーダ下ろしてくれ」

「御意」

 丁重にエセルドレーダはクロウリーを下ろした。

 クロウリーが自らの足で立つ姿は、ハイハイ歩きからやっと立てるようになった幼児にも見える。

 ――だが魔気が違う。

 眼が見えないルーファスはそれをより強く感じていた。

 身体の震えが止まらない。

 眼ではなく、ほかの感覚で感じるクロウリーは、まるで巨人がそこに立っているようだ。

 カーシャが手に汗を握っていた。知る者が知れば、カーシャが汗を掻いたという事実は驚愕に値する。

「(人間ごときが……まさかなにをする気だ?)」

 クロウリーの周りにマナフレアが発生する。これは協力な魔力が共鳴を起こしている証拠だ。さらにマナ風と呼ばれる魔力の風が吹き荒れた。

 地面が唸り声をあげて激しく揺れた。

 魔晶が不気味に輝いている。

 クロウリーの魔力に共鳴して魔晶がさらに暴走しようとしている!

 指先から光を出してクロウリーが宙に魔法陣を描く。

「メギ・マフジオン!」

 その呪文は今は伝わっていない古代魔法。

 ありえない魔法が唱えられたことにカーシャだけが気づいた。

「(シイラなど滅びた呪文……それ以前に人間が使えるわけがない!)」

 しかし、呪文は発動された。

 魔法陣は描かれたときよりも巨大に広がり、魔晶を丸呑みにしたのだ。

 鼓動が静まった。

 クロウリーは妖しく微笑んだ。

「アステア王、私が施した術は応急処置に過ぎない。魔晶システムの復旧には3日ほど頂きたい」

「たった3日で治せるのか!?」

「大目に見て3日。損傷具合を見て、材料調達もあるので早ければ1日半でしょうな」

「3日で直せるなら蓄えてある予備エネルギーで王都になんら支障をきたさない。助かるよクロウリー学院長」

「自分の庭が荒らされたら、早々に美しく整えるのが必定」

 言葉を終えて、クロウリーの視線はビビとルーファスに向けられ、次の話題が続けられた。

「さて君たちの処分をどうするか……だが。魔晶システムを見られたからには生かしてはおけない」

「そんな!」

 ビビは声をあげた。

 だが、クロウリーの言葉には続きがあった。

「と言いたいところだが、私の愛しいローゼンクロイツの恨みを買うのも心苦しい。ルーファス君、今後ともローゼンクロイツと仲良くしてくれたまえ。そしてビビ君のことも聞いている。ローゼンクロイツは異性の友人が少ないようだから、君も仲良くしてくれたまえ」

 事件解決に貢献したからではなく、ローゼンクロイツの友人だからというのが理由らしい。

 クロウリーは魔法陣を宙に描いて〈ゲート〉を開いた。

「お帰りはこちらだ。私はすぐに仕事に取りかかる、くれぐれも邪魔はしないでくれたまえ」

 一目散にカーシャが〈ゲート〉をくぐった。

 ビビもルーファスを連れて急ぐ。

「(なんか吐きそう……なにこの感じ)」

 クロウリーの魔気に当てられたのだ。

 クラウスも一礼して〈ゲート〉をくぐった。

 〈ゲート〉の先は魔導学院の中庭だった。

 すでに防御システムは解除されているようだ。

 しばらくして〈ゲート〉の向こうから、ルビーローズとゴールデンクルスが放り出されてきた。まだ二人とも息がある。

 事件はすべて解決したのだろうか?

 クラウスは廊下を歩くクラスメートを見つけて、ほっと息をついた。

 無事に人質も解放されたようだ。

 しかし、事件の余波はまだ残っている。

「早くルーファスたちを救護室に運ぼう。だれか人を呼んでくるよ」

 クラウスは近くにいる生徒たちに声を掛けに行った。

 ビビは心配そうな顔をしているが、その表情はルーファスの瞳には映らない。

「ルーちゃんだいじょぶ?」

「泣きそうな顔しなくても平気だよ」

「見えてるの!?」

「ううん、見えてないけど声がそういう感じだから」

「え〜っ、そんなことないよぉ。アタシはいつも元気で笑顔のちょ〜カワイイ仔悪魔なんだから♪」

 ビビは精一杯の笑顔をつくって見せた。

 たとえルーファスが見えなくても、今ビビにできることは笑顔で居続けることだった。

カーシャさん日記

「ありえない」997/09/27(サラマンダー)

今日は本当に危なかったな。

魔晶を手に入れて世界征服どころではなかった。

しかし、クロウリーがまさかシイラまで使えるとは。

ライラよりもさらに古い超がつく古代魔法だぞ。

神々ですら覚えているかどうか……。

クロウリーは神をも越えたということか。

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