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第11話「古き魔晶の闇(3)」

 必死こいて逃げたルーファスだったが、ふと立ち止まってハッとする。

「逃げちゃダメじゃないか!」

 すぐに戻ろうとはしたが、足がすくんで動かない。

「(僕になにができるだろうか……だって相手はテロリスト。クラウスもクラスのみんなも人質になってるって。さっきの放送だってウソだったんだ、本当は学院のシステムが乗っ取られてて……僕ひとりじゃなにもできないよ)」

 気分が落ち込んでいたそのとき、明るい声が響いてきた。

「ルーちゃ〜ん!」

 ピンクのツインテールを振り乱して駆け寄ってくるビビの姿。

「ビビ!」

「ルーちゃん探したよぉ!」

 その明るさにルーファスも息を吹き返した。

「よかった、無事だったんだねビビ!」

「ルーちゃんこそお腹が痛くて野垂れ死んでるじゃないかってドキドキだったよぉ」

「そんなことよりほかのみんなは無事なの?」

「ほかのみんなって?」

「人質にされてるクラスのみんなのことだよ」

「ええ〜〜〜っ! なにその話聞いてないよぉ!!」

 たしかにビビが知らないのも当然だった。

「えっ……逃げて来たんじゃないの?」

「アタシはルーちゃんのことが心配で授業サボって来たんだけど?」

「クラウスがテロリストの女に捕まったのも見てない?」

「ええ〜〜〜〜っ! テロリストって聞いてないよそんなの!!」

 聞いてなくても現れるテロリスト。

 スパイダーネットがルーファスとビビに覆い被さろうとしてた。二人は突然のことに動けない。

「ファイア(ふあ)」

 炎によって消滅させられたスパイダーネット。

 ルーファスが声をあげる。

「ローゼンクロイツ!」

 二人を救ったのはローゼンクロイツだった。

 テロリストの数は3人。3対3だ。ルーファストビビを戦力に入れたとしたらだが……。

 再び魔法を発動しようとしたテロリスト。だが発動しない!?

「なにが起きた!?」

 驚くテロリストのローゼンクロイツはフッとあざ笑った。

「……トラップ(ふにふに)」

 魔法を発動しようとしたテロリストの足ともで輝く魔法陣。魔法陣を踏んでしまったテロリストと残る2人も、その効果を瞬時に悟った。拘束と魔力封じを同時に兼ねる魔法陣だったのだ。

 残された二人のテロリストは顔を見合わせうなずき合った。

「やむを得ない、攻撃魔法で弱らせてから捕らえるんだ。絶対に殺すなよ!」

「水色の女をまずは仕留めろ!」

 標的から外されたルーファストとビビはほっと一安心。

「ルーちゃん助かったね♪」

「うんうん、私たち強そうに見えなくてよかったね」

「てゆかさ、ローゼンのこと女だって、あはは」

「あはははは」

 のんきな二人とは対照的に、テロリストの二人はマジだ。

「ウォータービーム!」

「サンダーボール!」

 水と雷の連係攻撃だ。相乗効果で威力が増す!

 のんき、マジ。そしてローゼンクロイツはふあふあ!!

「フリーズ&スパークボディ(ふあふあ)」

 同時に二つの魔法を操り、ウォータービームをフリーズで凍らせ、スパークボディで自らに電気の鎧を宿しサンダーボールを吸収した。

 テロリストは驚きを隠せない。

「同時に2つの魔法を……なんというバランス感覚だ!」

「たかが生徒にこんな実力者が……これがクラウス魔導学院の実力かッ!!」

 魔法の根源たるマナエネルギーは操るものであり、魔法の発動にはマナを安定させる必用がある。二つの魔法を同時に使おうとすると、互いの魔法が共鳴あるいは反発などをして、安定を乱されることになる。このことから同時に魔法を発動させることは高度な技術とされている。

 スパークボディを纏っているローゼンクロイツから電流が放出される。

「エレクトリックショック(ふあふあ)」

 駆け巡る電流が二人のテロリストの身体を突き抜けた。

「「ギャァァァァッ!!」」

 感電した二人は即座に気を失った。

 一段落したとことで、ローゼンクロイツは片手を上げて、

「じゃ(ふにふに)」

 と、何気なく立ち去ろうとした。

「ちょっと待ったぁーーーっ!」

 寸前でルーファスが呼び止めた。

「なんだいルーファス?(ふあふあ)」

「なんだいじゃなくて、なんで行こうとするのさ?」

「だってもう授業はじまってるじゃないか(ふにふに)」

「…………(まだ召喚実習室に行くつもりっていうか、まだ辿り着いてなかったんだ)あのねローゼンクロイツ、とっくに授業中止だから」

「……が〜ん(ふにゅ)」

 目を丸くして驚いたローゼンクロイツだが、すぐに無表情に戻って何事もなく立ち去ろうとする。

「次の授業は教室だったよね(ふにふに)」

 クラスに帰るつもりだった。

「待ってローゼンクロイツまだ話が!!」

 必死でルーファスは呼び止めた。

 ローゼンクロイツはわざとらしく溜息を吐いた。

「ふぅ(にゃ〜)ルーファス、話が長い男は嫌われるよ(ふにふに)」

「ごめんね話が長くて。そんなことよりも、午後の授業は全部中止だと思うよ」

「……ふ〜ん(ふにふに)」

 あっさりした反応。

 ビビはそんなローゼンクロイツを見て思う。

「(今度は驚かないんだ。やっぱりローゼンのことわかんないや)」

 こんなやりとりに拘束されている残った1人のテロリストが痺れを切らせた。

「おい、俺のこと放置するなよ」

 ルーファスはハッとした。

「そうだよ、テロリストだよ! ローゼンクロイツ大変なんだよ、学院がテロリストに占拠されちゃって、クラウスも捕まってるんだ!」

 そこにテロリストが口を挟んできた。

「我々をテロリストなどといっしょにするな。我々秘密結社は平和団体だ」

 これを聞いたビビは顔を膨らませた。

「平和団体がこんなヒドイことするわけないでしょ、ベ〜だ!」

 あっかっべーのおまけ付きだ。

 ビビに続いてルーファスも続けて反発する。

「私のクラスメートを人質にして、クラウスもどこかに連れて行こうとして、学院中のドアを全部ロックして、これのどこがテロじゃないんだよ! 変なロックのせいでトイレに閉じ込められて大変だったんだんだから!」

 そう言えばまだ流してない。

 テロリストとはテロリズムに基づくもの。政治目的のために暴力や恐怖に訴えるものだ。

 しかし、この自称平和団体は認めようとしない。

「我々はテロリストではない。その証拠に任務遂行のための殺生は禁忌としている」

 たしかにファウストも捕まったが無事だった。ルビーローズに遭遇したルーファスも、そして今も敵は殺傷ではなく、捕らえることを主としていた。

 テロリストの態度にルーファスは苛立ちを募らせる。クラスメートが、学院のみんなが、そしてクラウスが危険に晒されているのだ。

「あなたたちはいったいなんなんだ! 目的はなんなんだ!」

「我々は徹底した秘密主義だ。組織名を教えることはできない。任務内容についてはさらに黙秘する」

 なにか手がかりはないのか?

 ビビは気絶していたテロリストを物色。

「通信機見つけたよ! これで外に助けを求めてみるね♪」

 ――だが壊れていた。

 ローゼンクロイツの放った電流のせいだ。

 だが、捕らえられているテロリストが壊れていない通信機を持っているかもしれない。

「通信機を持ってるなら出すんだ!」

 ルーファスが強い口調で言った。

「持っているが君たちの役には立んよ。外部との通信はすでにシャットアウトされている」

 お人好しのルーファスは調べもしないで話を鵜呑みにしたが、実際に通信はシャットウトされている。制御ルームを制圧されているからだ。ただし――。

「……有線ふにふに

 ローゼンクロイツがつぶやいた。

 テロリストは表情を崩さず、ローゼンクロイツは話を続けた。

「ボクが思うに、有線なら外と連絡が取れるハズだよ(ふにふに)。ただし、すべての回線が生きているとは思えないね(ふにふに)。無線による外部通信をシャットアウトさせているのに、有線もしていないなんて間が抜けているからね(ふにふに)。けれどすべての有線を遮断してしまったら、テロリストは外の情報も掴めないし、外の仲間との連絡もあるだろうし、要求があるならそれを伝える必用もある(ふにふに)」

 ルーファスはひらめいた。

「きっと生きてる有線は制御ルームにあるよ!」

 ここでビビは何気な〜く。

「ええっと、制御ルームってなに?」

 ルーファスが答える。

「そこが占拠されたせいで学院中のロックがかかって、きっと通信が遮断されてるのもそこのせいなんだよ」

「ええっと、ならそこを取り戻せばいいんじゃない?」

「……あっ」

 ポツリとルーファス。

 問題解決に一筋の光を見いだしルーファスが俄然やる気が湧いた。

「よし、制御ルームを奪い返そう!」

 そこに水を差すビビの一言。

「場所は?」

「……え?」

 何気ないビビの質問にルーファスは言葉に詰まり、ローゼンクロイツを見つめた。

「ボクも知らないよ(ふあふあ)」

 だれも場所を知らなかった。

 ローゼンクトイルがボソッと。

「……あっ(ふあふあ)」

 つぶやいた。

 何事かとルーファスとビビが首を傾げると、廊下を駆けてくる大勢の人影。逆方向を振り向くと同じように押し寄せてきている。どう見ても仲間だと思えない。

 状況を把握してビビが叫ぶ。

「挟み撃ちされちゃったよ!」

 焦るルーファスはすぐさま助けを求める。

「ローゼンクロイツどうにかして!」

 少しは自分でどうにかしようとする気はないのだろうか?

「……眠い(ふあふあ)」

 バッサリと拒否された。

 ローゼンクロイツも同じ状況にいるはずなのに、状況を打開する気ナッシング。それどころかここで寝る気だ!

 もうすでに立ったまま虚ろな目をしているローゼンクロイツ。

 ルーファスは身構えた。

「大丈夫、相手は僕たちのこと殺さないらしいから」

「でも痛いことはするんだよねぇ?」

「……痛いのヤダよぉ!」

 本当に情けないルーファスだった。

 敵はすぐそこまで迫っている。

 窓や教室はロックされていて逃げ込むことはできない。

 そのとき校内放送が流れてきた。

《黒魔導講師のヨハン・ファウストだ。現在学院はテロリストによって占拠され、一部の生徒が人質になっている。緊急防御コードが発動させたのはテロリストであり、生徒および学院関係者を室内に閉じ込めるためと思われる。制御ルームを奪い返すことに成功したが、解除コードが不明で私には手を打ちようがない。しかし、外部との連絡には成功し、すぐに救援が駆けつけるだろう……というのは気休めに過ぎない。我が学院の防御システムは難攻不落であり、外部からの救助は絶望的である。よって、現在室内に閉じ込められている者は自力で脱出し、運良く学院内を自由に行動できる者はテロリストを制圧しろ、以上だ》

 この放送によって動揺したテロリストの一瞬の隙を突いて、ルーファスとビビは縫うように敵の間を駆け抜けて逃げた。

「逃がすな追え!」

 すぐにテロリストが雪崩のように追ってくる。

 ルーファスは恐る恐る振り返った。

「先生は制圧しろっていうけど……ムリだよ!」

「だよね〜」

 ビビも納得。

 そして、ローゼンクロイツは――さっきの場所に取り残されていた。しかも寝てる。

 立ったまま寝ているローゼンクロイツにテロリストが束になって襲い掛かる。

 しかし、ローゼンクロイツは寝ている方が強かった。

 滅茶苦茶に有りと有らゆる魔法がローゼンクロイツから放たれる。

 単に寝相が悪いだけだった。

 ローゼンクロイツが敵の注意を引き受けているおかげで、ルーファスとビビは少ない敵を巻くことに成功した。

 必死に走ったルーファスはゼーハーゼーハー肩を上下させている。

「もう……走れない」

「ルーちゃん体力なさすぎ」

「あれだけ追いかけ回されたらだれだって……あれっ?(こんなところにあったっけ?)」

 ルーファスは自分の目の前にある物を見て首を傾げた。

「どうしたの?」

「見慣れないエレベーターがあるんだよ」

「この学校広いし、たまたまルーちゃんが知らなかっただけじゃないのぉ?」

「いちおう4年目なんだけど。それにね、ローゼンクロイツと違って方向音痴じゃないから道ぐらい覚えられるよ。絶対に今までこんなのなかったよ!」

「じゃあなんであるの?」

「さあ?」

 ルーファスは首を傾げた。

《ルーファウス!》

 突然のファウストの声にルーファスはビクッとした。

「は、はい!」

 校内放送だった。

《とにかくそこに入るのだ、クラウスがいる可能性が高い》

「わかりました!(……監視カメラで見られてたのか)」

 すぐにルーファスとビビはエレベーターに乗り込もうとした。

 ボタンを押してエレベーターが来るのを待つがなかなか来ない。

「遅いねルーちゃん」

「そうだね」

「故障してるんじゃない?」

「故障中なら故障中の張り紙してあると思うよ」

 チン♪

 ベルの音がしてエレベーターのドアが開いた。

「やっと来た」

 言いながらルーファスはエレベーターに乗り込んだ。

 さっそくボタンを押そうとしたビビが驚く。

「何これ!?」

「どうしたの?」

「地下100階直通になってるよ?」

「ええっ!?(この学院って地下5階までしかないハズなんだけど)」

 とにかく地下100階に向かう。

 動き出したエレベーターは徐々にスピードを上げ、身体が強く引っ張られるGが掛かる。

 長い時間を掛けてようやくドアが開いた。

「うぅ〜っ、気持ち悪い〜」

 青ざめているルーファス。

「ルーちゃんだいじょぶ?」

「酔った」

「まさかエレベーターで乗物酔いしてないよねぇ?」

「…………」

「……したんだ」

 ビビは呆れるしかなかった。

 ここから先は長い廊下が続いている。

 壁や床から放たれる紅い光。その光はまるで血管のように床や壁に張り巡らされる模様から放たれている。

「なんか不気味なとこだねぇ」

 ビビが身震いをした。

「本当だね、さっきから自分のドキドキしてる音がよく聞こえるんだけど」

「アタシもー。ルーちゃん怖いよぉ」

「ドク、ドク、ドクってどんどん強くなってる」

「ホントだ、ドクドクって……壁から聞こえない?」

「えっ?(もしかして自分の心臓の音じゃなくて廊下全体から聞こえてる!?)」

 二人はその事実に気づいた。

 嫌な予感が拭えない。

 前方に見える巨大な扉――閉まっていればいいのに、その扉は口を開けて二人を待っている。

 ルーファスは息を呑んだ。

「今日はここまでにしようか?」

「そうだね、また明日来よう!」

 クルッと180度回って引き返そうとする二人。

「そんなことできるわけないだろう!」

 奥の部屋から聞こえてきた少年の怒号。

 すぐにルーファスは気づいた。

「クラウスだ!」

 引き返そうとしたいたことも忘れ、ルーファスは奥の部屋へと飛び込んだ。

 愕然とするルーファス。

「な……なん……(すごい魔力で立ち眩みがする!)」

 ビビもそれを見て驚きを隠せない。

「生きてる……生きてるよあれ!」

 二人の招かれざる客にルビーローズは微笑みかけた。

「お子様の来るところではなくてよ」

 ルビーローズの遥か頭上で紅く輝く宝玉。

 その宝玉の中に埋め込まれた禍々しい巨人の姿。象などその巨人の片手で軽く握りつぶされそうだ。それほどまでに巨大な宝玉だった。

「魔王級だな」

 つぶやく女の声が響き渡った。

 ルビーローズは驚いた。

「誰ッ!?」

 寸前まで気配を感知できなかったらしい。

「ふふふっ、神出鬼没にして生き字引のカーシャ様が来てやったぞ」

 どこから沸いてきたのかカーシャがこの場に現れた。というか、エレベーターではそんなに早く来られないので、本当にどこから沸いて出たのだろうか?

 クラウスは重々しい顔をした。

「まさかカーシャ先生はこれをご存じだったのですか?(これを学院で知っているのは僕と学院長だけのはず。国内外でもごく限られた人物しか知らないはずなのに!?)」

「魔晶化だな。滅びた魔導、いにしえの禁忌、地獄の檻……この場所にはかつて魔族と戦った精霊の超文明都市があった。魔晶はロストテクノロジーの一つで、主にエネルギー供給に使われる。まさかこの場所に残っていて、しかも稼働していたのは驚きだがな」

 話を聞いたビビは血の気が引く思いだった。

「魔晶化ってなに、だってアレ生きてるよ!!」

 ビビにも予想が付いていた。だからこそ声を荒げた。同じ魔族として――。

 そして、この場にはもうひとりの魔族がいた。

「わたくしが答えてあげましょう。過去から現在まで虐げられた魔族の一員として、何も知らない魔族のお嬢さんのために」

 ルビーローズは魔晶に向いて話をはじめる。

「魔族と一口に言っても、その種族は多岐に渡るわ。神でもなく、精霊でもなく、人間でもなく、奴らは自分たちの敵を一括りに魔族と呼ぶようになり、いつしかわたくしたち自身も自らを魔族を称するようになったわ。そして起こるべくして起きた過去における大戦の数々。ここにいる魔王は第三次聖魔大戦の英雄よ。魔族にとって英雄であるならば、当然奴らには大悪党よね。魔王を生け捕りにした奴らはどうしたのか、結果はこの通り、生かさず殺さず、半永久的に稼働するエネルギープラントとしたのよ。魔晶化とは、魔族を生きたまま発電機にするようなもの。魔晶化された魔族は久遠の苦しみを与え続けられる」

「そんな……ヒドイ……早く解放してあげて!」

 ビビは涙ぐみながら訴えた。

 しかし、それをしたらどうなるか――クラウスは首を横に振った。

「王都の電力はすべてここで生産されてるんだ、供給が止まれば都市は機能を失う。それにこの装置を止める方法は誰も知らない、少なくとも王国には伝わっていない。でもね万が一、中にいる魔王を解放する方法があったとしよう……解放された魔王は一夜でこの王都を死の都に変貌させるだろうね」

 ここで突然カーシャが――。

「妾はこれが欲しい」

「はぁーーーーーっ!?」

 ルーファスビックリ。

 カーシャはマジだ。

「これを兵器応用したら今の地上など容易く制圧できるぞ(ふふっ……我が天下)」

 ルビーローズの目つきがきつくなった。

「それをさせないために、わたくしたちは行動を起こしたのよ」

 これにクラウスは少し驚いたようだ。

「どういうことだい?」

「わたくしたちの秘密結社は平和を愛する団体。わたくしたちの目的はこの魔晶システムを管理し、誰にも使わせず、誰の目にも触れさせないこと」

「人間やその他の種族に害をなすつもりではないのかい?」

「とんでもないわ。このエネルギーを使って戦争をするつもりも、魔王を復活させるつもりもないわ。たしかに魔晶化は人権侵害も甚だしいけれど、凶暴な魔王を世にはなったら平和が乱されるもの」

「さっき言っていて事と違うような気がするけれど?」

「あれはあくまで史実を話しただけよ。魔族は虐げられてきたけれど、だからと言って過去の過ちを繰り返すわけにはいかないわ」

 ここで新たな男の声が響き渡る。

「そう、我々は過去の過ちを繰り返さない」

 金髪の若い男を確認したルビーローズが驚く。

「ゴールデンクルス、なぜ貴方がここに!」

「魔族なんかにこれを渡すわけにはいかないからね」

「わたくしたちは種族の垣根を越えて真の平和を……キャッ!」

 ゴールンクルスの手から放たれた光の槍がルビーローズの腹を貫いた。

 辺りは騒然となった。

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