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第10話「華の建国記念祭(1)」

 埋め立て処分場のような部屋で、なぜか古風で余裕な表情でティータイムをしているルーファス。

「…………」

 無言のままただ時間がゆっくりと流れる。

「…………」

 カップを揺らし、底に少し溜まっているティーを回す。

「…………」

 新たなティーを淹れて飲む。

「…………」

 だんだんと水っ腹になってきた。

「…………」

 時計を見たが、前に見てから3分と経っていない。

「…………」

 カップAからカップBに小さなスプーンでティーを移し替える。

「…………」

 途中で断念。

「…………」

 挙動不審になってくる。

「…………」

 部屋中を歩き回って、時折だれも見てないのにジャンプ。

「…………」

 それも飽きた。

「…………」

 もう限界だった。

「なんでみんなお祭りに誘ってくれないの〜〜〜っ!!」

 だれにも誘われないルーファスであった。

 今日は建国記念祭当日。街は賑やかに活気づき、笑顔や笑い声が絶えない。そんな日に独り自宅に引きこもっているルーファス。

 もちろんルーファスはお祭りに行くたくないわけではない。むしろ行きたくてウズウズしている。

 でも、当日まで誰にも誘われなかった!

 しかし、自分から誘うのは気が引ける!

 なぜなら、断られたらショックだから!

 ぶっちゃけルーファスは根本的に友達が少ないのだ。

 そりゃ学校じゃクラスメートと話したりもするが、プライベートとなると引きこもりがちで、友達作りもうまくない。

 ちなみに去年はどうやって乗り切ったかというと、クラスメートが友達を誘ってる輪の中に『自分も自分も!』みたいな感じでうまく潜り込んだのだ。

 こういうのはだいたい前日までに約束を取り付けておくべきで、今年はそのタイミングが訪れなかった。

 建国記念祭は都市を上げてのお祭りで、参加しない方が珍しい。それでも参加する気のない人はいいだろう。でも参加したいのにできないルーファスみたいな者からしたら、完全に仲間はずれにされているようなものだ。

 だからと言って、独りでお祭りに行ってルーファスが楽しめるのか?

 ルーファスの性格から言って、独りで言った方が疎外感で絶望するだろう。

 決断を迫られるルーファス。

 行くのか行かないのか、どっちなんだーっ!?

「よしっ、行こう。お祭りに行けば友達グループと合流できるかもしれないし」

 規模の大きなお祭りなので、その可能性はかなり低いが。でもルーファスは腐れ縁というか、腐れ運みたいなものがあるので、案外知り合いにばったりなんてハプニングもあるかもしれない。

 ハプニングね、ハプニング!

 ここ重要なので3回も言いました。

 いざ戦場へ赴くつもりでルーファスは旅だったのだった!


 居住区からお祭りの雰囲気は漂ってくる。

 道行き人々がそういうオーラを出している。

 ファミリーやカップル、仮装なんかしているひとは確実にそうだろう。

 建国記念祭には会場という会場がない。なぜなら王都全体でなにかしら行われているからだ。

 1日で回るのは不可能で、参加したいイベントの時間帯が被るなんてことはよくある。

 とりあえずルーファスは腹ごしらえをしようと、匂い立つ屋台街までやってきた。

「う〜ん、どれも美味しそうだなぁ。あっちでは早食い大会の受付もしてるんだ」

 あれも食べたい、これも食べたい、ここは迷うところだ。

 でもすぐお腹いっぱいになったりして、そんなに種類は食べられなかったり。

 ひとが並んでいる屋台はなんだか並びたくなって買ってみたら、そんなに美味しくなかったり。

 本業でやってる屋台より、自治会がやってる店のほうが安いとか、そんなこんながお祭りの屋台ではよくある話だ。

 ルーファスは目移りしていると、前方から見知った空色ドレスがふわふわ〜っと通りかかってきた。

「ローゼンクロイツ!」

 まさか本当に友達に会えるとは!

 ローゼンクロイツは片手にフランクフルト、焼き鳥、ステーキ(串)、チョコバナナ、そしてわたあめの棒の部分を指の間にはさんで持ち、もう片手には焼きそば入りお好み焼きの上にタコ焼きを乗せたものを持っていた。

 これらは運んでいるだけならまだしも、見事にある食いをしていた。ちなみにお好み焼きなどは、串ものの串をフォークのように使って食べていた。

 ローゼンクロイツは口の周りに、青のりとケチャップを付けながら驚いた顔をした。

「あっ、ルーファス(ふに)」

「……1つ言ってもいいかな?」

「ところでルーファス(ふあふあ)」

「(僕の話はムシ!?)なに?」

「ちょっと手が離せないんだ(ふにふに)」

 だろうよ。明らかに持ちすぎだ。

 ローゼンクロイツは言葉を続ける。

「ボクのポケットから七味唐辛子を出してくれないかな?(ふあふあ)」

「いいよ」

 ちまたではローゼンクロイツが大の辛党で、いつも七味唐辛子を常備していることは有名だ。

「このポケット?」

 尋ねながらルーファスはポケットを探った。

 するとローゼンクロイツは無表情のまま口を開いた。

「いやん(ふにゃ)」

「え!?」

「……言ってみただけ(ふっ)」

 口元だけでローゼンクロイツがあざ笑った。

 すぐに七味唐辛子は見つかった。

 さらにローゼンクロイツはこんなお願いをしてきた。

「それかけてくれる?(ふにふに) もちろんボクにじゃないよ(ふあわあ)」

「わかってるよ。どれにかければいいの?」

全部ふに

 あえてルーファスはつっこまない。

 ローゼンクロイツが全部と言ったら全部なのだ。言われたとおりルーファスは、わたあめにもチョコバナナにもたっぷり七味唐辛子をかけた。

「やればできるじゃないかルーファス(ふにふに)」

「なにそれ誉め言葉?」

「なにが?(ふにゃ)」

「なんでもないよ」

 ローゼンクロイツとは会話が成立するときと、そうでないときがある。会話が成立しないレベルはいくつがあるが、まとめてちまたでは『コスモタイム』と呼ばれている。つまり小宇宙と一体化してチャネリングでもしているんだろうと、簡単にいうと『イっちゃってる』ということだ。

 友達作りが苦手なルーファスだが、ときおり意思疎通が困難なローゼンクロイツと友人なのだから、実は友達作りのプロなのかもしれない。逆にローゼンクロイツみたいなのと友達になれるから、ふつーの友達ができないとも考えられるが……。

 ローゼンクロイツは自分の用事が済んだので、ルーファスになにも言わずふわふわ〜っと立ち去ろうとした。

 ここでローゼンクロイツを逃がしたらルーファスはまたひとりだ!

「ちょっと待ったローゼンクロイツ!」

「なに?(にゃ)」

 足を止めて振り返ってくれた。

「ローゼンクロイツもひとりだろ? いっしょに回ろうよ」

「目が回るよ(にゃふにゃふ)」

 すぐにルーファスは言い直す。

「お祭りをいっしょに楽しもうよ?」

「キミはいつもヒマかもれないけれど、他人がそうとは限らないよ(ふにふに)」

 ガーン!

 ルーファスショック!

 頼みの綱のローゼンクロイツに断られた。しかもヒマとか言われてしまった。

 人混みの中に消えていくローゼンクロイツ。

 その場に残されたルーファスはまた独りぼっちになったしまった。

「帰ろうかなぁ」

 心が折れそうだった。

 でも――。

「(なんか食べてから帰ろう)」

 この少しでも、少しでもいいからお祭りを体験しようという哀しくなる気持ち。

 ルーファスファイト♪

 そんなわけでルーファスは並ばなそうな出店を見つけて、長方形のカップ入りカルボナーラを購入した。

 そして買ってから気づくのだ。

「(……いつものデリバリーと変わらない)」

 どこか落ち着いて食べるとこを探して歩き出す。

 そしてまたも気づくのだ。

「(飲み物いっしょに買うの忘れた)」

 飲み物を探していると、こんな声が聞こえてきた。

「ちょっとそこのマヌケそうな顔のお兄たん……と思ったらルーたん♪」

 今日は屋台のお姉さんをやっていた魔導ショップ鴉帽子のマリアだった。

 お店の雰囲気はいつもと変わらない。なんだか毒々しい。

「なんのお店?」

 ルーファスが尋ねるとマリアは、

「お祭り特製ドリンクのマリア☆すぺしゃるを販売してるのぉ。ルーたん1本買って♪」

 と満面の笑み。

 ちょうど飲み物が欲しかったところだ。

「じゃあ1本もらおうかな」

「AからXまで種類があるけどどれにしますかぁ?」

「(大過ぎじゃない?)ど、どれにしようか迷うなぁ」

「ルーたんにおすすめわぁ、滋養強壮によく効くAAAトリプルエードリンクですよぉ」

「(AからXまでじゃなかったの?)……じゃあ、それもらおうかな」

「200ラウルになりま〜す」

「高くない?」

 だいたい20ラウルくらいが缶ジュースの相場だ。

「キャンセル料は100ラウルになりま〜す♪」

 にっこりマリアちゃん。

「分割払いの場合は10日で1割りの利息がつきますよぉ」

 堂々とぼったくっている。

 ルーファスは100ラウルコインを出してしまった。なんだか押していけない印鑑を押すような光景だ。

「ルーたんありがとぉ♪(うふふっ、ちょろいわ)」

 心の声恐るべし。

 ルーファスほどいいカモもそんなにいないだろう。いつもルーファスは押しに弱いのだ。

 ちょっと落ち着いた場所で食べようと歩き出したルーファス。

 飲食系以外の屋台にもクジや金魚すくいやカメすくいなどなど、アクション系の屋台も並んでいる。

 射的の屋台で見慣れた魔女を見つけた。

「あ、カーシャ」

「おう、へっぽこではないか」

 カーシャは目の前でボルトアクション(装填作業)をしたライフルをルーファスに向けた。

「ああ、あっ、危ないじゃないか!?」

「安心しろ、射的銃の弾丸は非対人魔弾なっておる(撃たれれば多少は痛いが、ふふっ)」

 ちょっと撃ってみようと思っているかもしれないカーシャであった。

 今からカーシャがやろうとしている射的は、動く的の得点に応じて賞品がもらえるものだ。

「どの賞品が欲しいの?」

 ルーファスが尋ねた。

「特大ぬいぐるみに決まっておるだろう。もちろんそこにある3種類を全部コンプリートさせてもらうぞ」

 宣言するカーシャを見つめニヤリとした店のオヤジ。

「(そうはさせるか射的荒しのカーシャ。今年こそは1つも取らせんぞ!)」

 じつはカーシャ、お祭りの射的が大の得意で大好きで、やる店やる店でことごとく狙った賞品をゲットしていく有名人なのだ。ここの店のオヤジも毎年の建国記念祭で全敗中だ。

 カーシャが的に狙いをつけて引き金を引く瞬間、店のオヤジが隠し持っていたボタンを押した。

 的が10倍速で動き出した!

 すでにカーシャが引き金を引いたあとだった。

 バキューン!

 スカッ♪

 ――外れた。

 無表情でボトルアクションをしたカーシャはライフルを店のオヤジに向けた。

「……汚いぞ」

「突然的の早さを変えちゃいけないなんてルールはねぇよ」

 たしかにこーゆー店は店主がルールだ。

 カーシャが笑った。

「ふふふっ、いいだろう受けて立とうではないか(妾を起こらせるとタダではおかんぞ)」

 早さが変わったとはいえ、動きは規則的だ。同じ場所で照準を合わせ、的が向こうから来たタイミングで撃てばいい。

 再び銃を構えるカーシャ。

 店のオヤジは不敵な面構えでニヤリとしていた。

 カーシャが引き金を引いたと同時に、またもオヤジがボタンを押した。

 的が規則性を無視してトリッキーな動きをした!

 バキューン!

 スカッ♪

 ――またも外れた。

「ふふふっ……」

 カーシャの低い笑い声が響き渡った。

 そして、ボトルアクションをしたカーシャはライフルをルーファスに向けた!

「気が散るわへっぽこ!!」

「えっ!? 僕のせい!?」

「貴様がいると妾の運気が下がるのだ。さっさと消えんと撃つぞ?」

 目がマジだ。カーシャの脅しはいつもだいたいマジだ。

 怯えた表情でルーファスは後退りをした。

「撃つって……非対人なん……だよねぇ?」

「接射すれば血ぐらい出るぞ」

「それって……かなり痛いんじゃ?」

「痛いぞ、ふふっ」

 ここで店のオヤジが笑った。

「自分の腕を棚に上げてひとに当たるとはぁ、情けねえなぁカーシャさんよお?」

「な、にぃ〜! 妾に射撃の腕がないだと!?」

 完全に勝ち誇った顔をする店のオヤジ。毎年の敗北の恨みをついに果たせたのだ。

「決まった動きしかしねえ的にしか当たらねえようじゃ、実践じゃ役に立たねえぜ」

「これは実践じゃなくてゲームだろうが」

「これは俺とおまえさんのマジな勝負だ、お遊びなんかじゃねえよ!」

「言ったなオヤジ?」

「おう言ったぜ」

「サーベ大陸西部開拓時代、妾がなんと呼ばれておったか教えてやろう」

「西部開拓時代だと!?」

 ざっと500年以上前の話だ。

 カーシャが囁く。

災難カラミティ・カーシャ」

 店のオヤジが噴き出して笑い出した。

「ぎゃははは、たまたま同じ名前だからってウソに決まってらぁ」

 周りにいた客やギャラリーも笑っている。

 カーシャは気にも留めなかった。

 悪寒を感じたルーファスは言われたとおり消えることにした。猛ダッシュで――。

「ギャァァァァァァァッ!!」

 ルーファスの耳に届いてきた男たちの悲鳴。

 今の時代もカーシャはカラミティだった。

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