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箱庭世界と孤独の少年  作者: 麗琶
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2/6

episode:1

『本日未明。駅で男性が轢かれるという事故がありました。誤ってホームから落ちたものと思われー』


ニュースキャスターは抑揚の無い声で淡々と告げた。

内容はあまり頭に入ってこなかった。

淡々と内容を告げるニュースキャスター。それをまるで別世界で起きた事の様に興味も同情もなく眺める僕。

世間って冷たいなと思った。

もし実際自分の身に不幸があったのならきっと泣き喚いて、こういった人たちの事を恨むのだろう。

…あぁでも、もし僕が今日死ぬとして、別に何も思わないのかもしれない。

意外とこんなもんかもしれないな。

テレビを消し、お気に入りの真っ白なヘッドフォンを耳にあて、自分の世界に入り込む。

(あ…そろそろ学校に行かないと。)

身支度をし、家を出る。今日も教室は賑やかだ。

友だちとの会話を楽しむ人、悪ふざけをする人、陰口を叩く人。

僕はそれらのどこにも入らない。

誰も僕を見なければ、僕もそれらに加わろうとは思わなかった。

もし僕が突然学校に来なくなったとして、きっと誰も気がつかないんだろうな。

このクラスに僕は必要無いだろう。

ただ一人。気付いて欲しいと思う人がいた。

彼女はどこか、寂しそうな表情をしていた。

気だるい授業を受け、今日も何事も無く下校の時刻になった。

まだ賑わっている校舎を僕は早足に後にした。

つまらない毎日だ。そんな事分かりきっている。

でもそんな事思った所で何かが起こる訳ではない。

昔は毎日が楽しいと思っていた…ような気がする。


「君は…」


不意に抑揚の無い声が聞こえた。

いつの間にか目の前に少年が一人、佇んでいた。


「僕と似ている…?いや、違う。」


彼は真っ直ぐ僕を見て言った。


「真逆なんだ。」


気がつけば少年はいなくなっていた。


(何のこと…?)


僕は少年の言葉を理解する事が出来なかった。



『ー。』


いつも朝食の時にはテレビをつけている。

でも今日は何故かテレビの音がうるさく感じ、テレビを消す。

お気に入りの真っ白なヘッドフォンで耳を塞ぐ。


(昨日は何をしていたんだっけ?)


最近は昨日の事さえも思い出す事が出来ない。

きっと明日まで残っているほど特別な事もなく、平淡で中身のの無い昨日を過ごしてきた結果だろう。

そんな自分を情けなく思ったこともあったような気もするけど、そんな気持ちさえもどこかに置いてきてしまった。

…何だか今日は疲れているようだ。

気を紛らわす様に立ち上がり、身仕度を始め、そそくさと家を出る。

相変わらず教室は賑やかだ。

友だちと楽しく話をする人、先生に対する悪態を吐く人、噂話に花を咲かせる人。

僕はそれらのどこにも入らない。

人と話すのが嫌だから。

このクラスに僕は必要無い。

誰も僕を見ない。

もし僕が突然いなくなったとして、誰も気がつかないだろうな。

それでもきっと、あの人だけは気付いてくれるだろう。

…その根拠は何だっけ?

何かあったような気がするけど、まぁ、いいや。

彼女はどこか、悲しそうな表情をしていた。

授業が終わり、一直線に家へと向かう。

今日はいつもより駅がすいていた。


(また明日、か。)


こんな日々を終わらせたい。そう思ってしまうのは僕が疲れているからだろうか?

そんな疑問は、悲しいくらいに綺麗な夕焼け空に吸い込まれていった。



いつの間にか僕は眠っていたようだ。

起きた所で、とても疲労感を感じた。

体が重くて動きたくない。

それでも重い体を起こしてテレビをつけ、朝食をとる。


『ー。』


テレビはつけているものの、何も耳に入ってこなかった。

テレビを消し、お気に入りの真っ白なヘッドフォンを耳にあてた所で、僕は妙な既視感に襲われた。

毎日同じ様な生活をしているからだろうか。


(あ…そろそろ学校に行かないと。)


身仕度をし、家を出る。

教室は何だかいつもよりうるさい様な気がした。

友だちとの会話を楽しむ人、悪ふざけをする人、陰口を叩く人。

…本当にそうだろうか?

本当はクラスの人たちの話していることを聞きたくないから、そう決めつけているのかもしれない。

このクラスにもう僕は必要無いという事に、気付いてしまう事が怖かったのだろう。

僕はもう…。


(僕は何を言っているんだ?)


まるで僕が消えてしまったみたいじゃないか。

途端に僕は怖くなった。

誰も僕を見ない。僕はまるで、ここに存在しないかの様に。

もし僕が突然消えたとして、誰も気付かないの…?

浮かび上がった疑問の答えを知らないまま、気がつけば僕は駅のホームにいた。

家に帰るつもりだったのだろうか?

自分自身、していることが分からなくなっていた。

近くにあったベンチに座って思考を巡らせる。


(僕は今確かにここにいて、息をしている。存在しているんだ。)


考えれば当たり前のことだ。それなのに妙に不安になるのは何故…?

やっぱり僕は疲れているんだ。

突然、思い出したかの様に疲労が僕を襲う。

疲労に耐えきれず、僕はそのまま眠ってしまった。


しばらくして激しい痛みを覚え、僕は目を開けた。

視界に映るのは真っ赤なヘッドフォンと夕焼け空。

脳裏に浮かぶ光景。


「そっか。僕は…」


また、明日が来る。


耳に届いた赤く鋭い断末魔。それは誰の声…?



『本日未明。駅で男性が轢かれるという事故がありました。誤ってホームから落ちたものと思われ、状況は詳しく調査中となっております。』


淡々と告げたニュースキャスター。

僕は朝食をとりながら、なんとなくそれを聞いていた。

それからテレビを消し、お気に入りの真っ赤なヘッドフォンで耳を塞いだ。

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