プロローグ
初投稿です。SFファンタジーのようなもの。読んでみてください。
じいちゃんが死んだ。俺のじいちゃんは非常に気難しい人間で、若い頃は有名な生物学者だった。両親のいない俺を育ててくれた。じいちゃんは寡黙で、人からは変人と呼ばれていたが、それでも俺を大事にしてくれた。でもそんな彼も晩年では長い病の末すっかり弱ってしまい、俺にとりとめのない話を続けた。医者は少し認知症気味なのだと俺に伝えた。
「タキ、ワシはな、天使を作ったんだよ。ワシの天使に会いにいってやってくれ。シェリルに会いにいってくれ。」
「じいちゃん、何言ってんだよ。それ、母さんの名前じゃないか? 母さんは俺が子供の頃に亡くなったんだろう」
じいちゃんが亡くなって、親戚のいなかった俺は一人になった。じいちゃんが生前勤めていた研究室の人達がきて、いろいろと後始末を助けてくれた。中でもじいちゃんの元生徒であったという水嶋博士は、じいちゃんが病床についているときから、いつも見舞いにきてくれており、俺の身の回りの相談にものってくれる程、俺たちの世話を親身に見てくれた。
じいちゃんの葬式が終わり、一段落ついた後、水嶋博士が俺を訪ねてきた。
「タキ君、この度はご愁傷さまでした。尊い人材を失いました。ガーシュイン博士は優秀な科学者で人類の未来を変えたと言ってもよい人でした。タキ君も知っている通り、私は先生に師事しておりました。とてもお世話になりました。今では先生の研究は、私が受け継いでいます」
水嶋博士は、眼鏡をかけて、痩せた、色白の、いかにも学者肌の男だった。親切にしてくれるが、俺にはどうしてもなじめないところがあった。彼は俺に対してもいつも他人行儀で、丁寧な口調は崩さず、どこか距離をとっていると感じていた。だが、とてもお世話になった人だし、俺としては、もちろん感謝している事には変わりがない。
俺は水嶋博士に深々とお辞儀をして答えた。
「水嶋さん。本当に何から何までお世話になりました。俺一人じゃどうしていいかわからなかったです。なんとお礼を言って良いやら……」
水嶋博士は、いやいや、とんでもない等と社交辞令を並べていたが、その細い指で、プラチナ縁の眼鏡をクイッとあげて、俺を見ながらこう言った。
「タキ君、ところで君はこれからどうするのだい? 君は先日高校も卒業しただろう。先生の看護で大学にも行かなかったようだが……。もし今後の事が決まっていないのなら、どうだろう、研究所にしばらく勤めてみないか?なに、専門知識は必要ない。是非君に頼みたい仕事があるんだ」
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