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エピローグ

 結局のところ、『グランデル遺跡』から持ち出された宝石箱は、館の三階の倉庫を探索していたポーラさんによって発見された。

 しかし、その中身は『白石』だった。

 重宝される『石』ではあるが、『銀石』とはその希少価値が格段に違う。確かに目に触れることは少ないが、決してゼロではない。架空ではなく、存在はするものなのである。

 俺達がそれを知らされた時、ルーは少しばかり意気消沈していたようだった――――が、夕飯を食べる頃には元通り、俺の皿からエビフライを強奪してあろうことか一口で食いやがり、満面の笑みを俺に向けてきた。そうだった、こいつはこういうキャラだ。心配するだけ損だろう。

 俺が殺されかけたあの青白甲冑大男はというと、ロットとルーに館中を追い掛け回された挙句に、アンディさん(本物)によって成敗。詳しくは聞いてないが、まあ、口が聞けない状態であの屋敷から出されたようで、余計な心配はしなくていいだろうな。

 今回唯一の誤算であったワイト。初めて彼女の微笑や驚く顔なんてものを見たわけだが、仕事が終わった後にはいつものポーカーフェイスに戻っていた。『ゼロ』を見せてしまった以上そのうち説明しなければならないだろうが、仕方ないことだ。彼女は俺と同類ではあるし、何とかなるだろう。

 そして俺が帰路についたのは九時過ぎ。

「ただいまあ」

 と言いながらウチの玄関を開けると、家の中は真っ暗だった。

 ラキがこの時間に寝てるなんてことは考えられないし、恐らく今日は遠いところに仕事に行ってるんだろうと思いながらリビングに入ると、テーブルの上に、朝にはなかった書置きがあった。

『しばらくこの町を離れます。申し訳ないですが、当分は帰れません。家事は自分でやってくださいね。 ラキ』

 紙の裏を見ると、掃除や洗濯、料理における注意点みたいなことがこまごまと書かれていて、分からないことがあったら隣の家のおばさんに聞くように、という文で結ばれていた。

 やれやれ――と思う。

 必要以上に目立たないようにしても――『能力は商品』と言い聞かせ、『能力』を振るう場所を限定しても――やはり秀でた能力は、否応なく敵を作ってしまう。ラキの両親が殺された理由、そして俺の両親が逃げるように世界各地を転々としている理由も、またそれによるものだ。だからこそラキは人一倍気をつけていたわけだが、それでもやはり同じ道を歩む羽目になっている。

 しかし、『カザミドリ』の幹部ですら殺せなかったラキだ。そう簡単には死にやしない。『闇蛇』たるラキが死ぬなんて、とうてい考えられない。イメージできない。ラキは当分どこかで生き続けるだろう――そして、機会があればまた遭うこともあるだろう。俺はそう確信している。

 運がいいのか悪いのか、俺には秀でた能力というのがない。

 この五年でラキから様々な技術を習ってはいたが、飲み込みの早さも技の精度も――年季の差を考慮したところで――ラキの足元にも及ばなかった。なので、当分は敵がどうこうという心配はないだろう。

 しかし、先のことはわからない。

 どう状況が転ぶかはわからない。

 俺の運命もこうなるのだろうか? 何年か後、同じようにこの町を出ることになるのだろうか? 逃げ回ることになるのだろうか?


 ……まあ、それもいいだろう。俺は俺なりにやっていくさ。


 紙を握り締め、自然に笑みがこぼれた。



〈闇鳥のトビカタ END〉

  あとがき



 というわけで「闇鳥のトビカタ」でした。ご愛読ありがとうございました。


 本作は式織が初めてプロットなるものを立ててから書き始めたもので、比較的伏線が張りやすかった作品です。なので、重箱の隅をつつくような読み方をされる方はともかくとして、そうでない方はもう一周読んでみるとまたおもしろいのではないでしょうか。


 文庫本のフォームで書いたものをそのままコピペしただけなので、ネット小説のレイアウトとして読みやすいのかどうかがちょっと疑問だったりもします。しかし縦書き表示もあるし、というわけで何も変えてないんですが。

 本作ではルビは使ってなかったんですが、傍点がすべて消えてしまっているのが残念です。何か方法はあるんですかね? 今さらですが、調べてみます。


 読んでいただければ分かる通り、本作ではまだ回収されてない伏線がいくつも残ってます。続編「闇鳥のウタイカタ(仮)」の構想は漠然とありますが、全然煮詰まってないので時間は掛かると思います。

 機会がありましたら、またお付き合いください。


 ではでは、ありがとうございました。


                       式織 檻

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