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5時限目 国語


最終話になります。

ちょっと長めにお送りします。



妄想の世界へ、ようこそ――――――。



 

 


 時々、本気で思うことがある。



 ――――――4階の教室から逃げ出すには、どうすればいいのだろうか――――と。


 前のドアから?後ろのドアから?なら、その両方が塞がれていたらどうする。

 廊下に面した窓から?災害時にはいいだろう。しかし、ドアを塞いでいるのが『武器を持った』人間だったら?逃げ出せたとしても、一人二人が限界だ。あとの人たちは逃げられまい。

 ならば、カーテンでも使って、窓から外に飛び降りるか。――――――――できる人が、何人いるのだろう。2階や3階からならまだしも、4階からだとそれも無理な話である。


 さて・・・・・・・・・すなわち、これは八方塞がりと言うやつである。出入口を塞ぐものがいる(ある)限り、脱出は不可能なわけだ。


 逆に言えば、"出入口を塞ぐものを取り除いて"しまえば脱出は可能になるわけで。


 そんなわけで・・・・・・私は今、本気で思っていることがある。



 ――――――銃を持った男2人を倒すには、どうすればいいのだろうか――――と。





 事の始まりはつい、数分前。


「~狐 曰く『子 敢えて我を喰らふこと無かれ。天帝我をして百獣に長たらしむ。~」


 うんたらかんたら。先生の朗読は基本的に、催眠術としか思えない。まぁ、国語は得意科目というか、興味のある科目なもので、寝ることはないんだけど。つまらない時はつまらない。退屈な時は退屈だ。それに疲労が追加されると、睡魔がやって来る。


 今のところ、疲労はない。睡魔なんて敵じゃないね、ハッ!


「藍川ー。今のところ、訳せ。」

「“狐の言うことには、『あなた様は決して私を食べてはいけません。~」


 うんたらかんたら。あれ、どこまで訳せばいいんだろう?訳すのは楽なんだが、“今のところ”がどこなのか分からない。まぁいいや。多分、ここまでだろ。


 適当なところで訳すのをやめると、「はい、その通り。」と先公が言ってくれた。ラッキー♪当たった。良かった良かった。

 これは国語だからできる芸当であって、数学や英語なんかだと、撃沈してしまう。だから、特に数学では、下手にぼんやりすることもできない。


 ・・・・・・・さて。


 基本的にこの先生は、一度当てた人はもう当てない。

 つまり、私の出番は早々と終わってしまったわけで。


 ・・・・・・・・・・・・・チッ、つまんねぇの。


 国語に関してだけは、そんなふうに思う。


 はぁあ、仕方がない。真面目にノートでもとって時間を潰すかぁ―――――――――――――と、思った、その時である。


 12月の今。教室の扉は完全に閉め切られている。

 そのドアが、突然、『ズバンッ!』、と、立てる音も猛々しく、開け放たれたのだ。「全員、動くなぁっ!!」という怒声付きで。






 ―――――そして、現在に至る。


 あのあとすぐに放送が入り、『18HRの生徒以外の全校生徒及び職員は、直ちに帰宅せよ。繰り返す。18HRの生徒以外は、全員帰れ。』と、おそらくこの謎の襲撃者たちの仲間が指示し、今この学校にいるのは私たちだけとなった。ちなみに、ついさっきまでここで授業をしていた国語の先生も、帰されてしまった。


 謎の襲撃者(テロリスト)たちが乱入してきた直後は騒然としていた教室内も、今や沈黙しか無い。それもそのはず。テロリストたちは事前に、それはもう懇切丁寧に警告してくれていた。


「はい、お前ら静かにしてろよー。妙なことしたらこの通りだからな。」


 と、窓に向けて銃弾一発。当然のごとく、割れるガラス。女子が可愛い悲鳴を飲み込み、そうして完全な沈黙をもたらした。


 そういうわけで。


 葬式もかくやと言わんばかりの静寂の中、私はこの状況をどう打開したものかと、考えていた。


 敵は二人。前の扉と後ろの扉に一人ずつ。

 武器は銃。リボルバーじゃない方・・・・・・オートマチック?って言うんだっけか。おそらく、安全装置だとかそういう類のものは、既に外されている。銃器にはあんまり詳しくないのだが、見た感じでは、一番普通のものだと思う。警察とかドラマとかでよくある、普通の拳銃のようだ。


(うーん・・・・・・どうすればいいんだろう。)


 下手に動けば被害がでる可能性が高い。動くんなら、確実に仕留めたい。


(せめて、一人だったらなぁ・・・・・・。)


 そう思った。ちょうどその時。


「あ、あの・・・・・・・・・。」


 か細い声が、テロリストたちに向かって発せられた。


「何だ?」

「そ、その・・・おトイレに・・・・・・。」


 テロリストたちが顔を見合わせた。どうする?仕方ないだろ。俺がいく。二人ずつ連れてけ。そんな会話を経て、


「もう一人、来い。」


 と言った。要求した女子が隣にいる友達を見、その子と共に立ち上がる。そして、油断なく銃を構えた男と、教室を出ていった。


(――――――・・・もしかして・・・・・・これは、チャンスか?!)


 相手が一人になった!これなら行ける!・・・・・・たぶん。


 さて、問題は・・・・・・もう一人の方をどうやって引き寄せるか、と言うところ何だが。


 どうする・・・・・・?動きを間違えれば、撃たれるかもしれない。まぁ、人質をそう簡単に殺したりはしないだろうけど。

 ・・・・・・テロリストたちの要求がうまく通らなければ、見せしめにと1人2人・・・・・・殺られるかも。


(それはマズイ!早いとこ、片付けないとなー・・・・・・しかし、どうやって。)


『うぅ~うぅ~うぅ~うぅ~うぅ~うぅ~』


 パトカーのサイレンが聞こえてきた。"ちっ、来やがったか。"テロリストはそう言って――――――――――教室内に来た!

 そして窓際に・・・・・・しかも、私の机の前に来た!!そこから、身を乗り出して外を見ている。右手は銃を持ったまま、壁に付けられていた。引き金に・・・・・・指が・・・・・・掛かって、ない!


(キタコレっ!!)


 私は机の上の辞書(カバー付き)を両手で持つと、目の前にあるテロリストの頭を殴った。


 もちろん、角で。


"ゴッ"「うぐっ。」


 うへぇ、鈍い音。


 良い手応えを感じつつ、私は行動を続ける。

 ダメージから立ち直られる前に、立ち上がって、背中を足で押さえる。それから一応、もう一回辞書で殴っておく。(もちろん、角でね。)


(えーと、銃、銃!)


 武器を押さえ込む。奪い取る。うわ、けっこう重たい。


「オイコラ、てめぇっ・・・・・・。」

「えい。」


 振り返ったそいつの額を、銃のグリップで殴る。それから、腹を蹴る。急所を蹴る。と、テロリストは踞った。そこを上から押さえ込んで、首の後ろらへんを(両足で)踏む。


 前の席の男子が私を見ていた。えーと、そうだ、


「ちょっと、ネクタイ。ネクタイ貸して。」

「え、あ、あぁ。」


 おぼつかない手でネクタイを外した男子からそれを受け取り、


「よいしょっと。」


 テロリストの両手を無理矢理後ろに回し、ネクタイで縛る。昔、とあるドラマで見たやり方だ。まさか、役に立つ日が来るとは・・・・・・。


「もう一本。もう一本貸して。」


 後ろの席の男子にもう一本ネクタイを借りて、今度は足を机に縛りつける。


「よし、オッケー。」

「ざけんなっ!離せぇ!」

「誰が離すかバーカ。」


 床の上でばたつくそいつの頭を踏みつけて、私は鞄を掴んだ。合皮だけど、頑丈で重たい鞄だ。それに、さらに辞書を二冊敷き詰める。


(さて、そろそろ・・・・・・。)


 トイレに行っていた奴が帰ってくるだろう。教室の後ろに行く。ドアの影にしゃがみこむ。


 クラスの皆が私を見ている。私は唇の前に指を立て、"静かに、前を見てろ。"と合図して、耳を澄ませた。


 他に誰もいない廊下に、足音が大きく響く。


 心臓がばくばくしてきた。


(敵が入ってきたら、まず、鞄で頭を殴る。マウントを取って、銃を突き付ければ、終わりだ。)


 うん、うん、完璧だ――――――大丈夫、できる!


 唾を飲み込んで、その時を待つ。


 足音が近付いてくる。


(――――――――――来た。)


 予想通り、先に女子2人が入ってきた。こちらには気付いていない。その後に、敵が入ってきた。


「おい!おい!!そのガキを殺せっ!」

「は?」


 教室内に一歩踏み込んだところで、縛られた仲間の声を聞き、立ち止まったそいつ。


(ラッキーッ!)


 私は鞄を大きく振りかぶって、



キーンコーンカーンコーン



「はい、じゃあ今日はここまで。あいさつー。」

「起立ーきをつけー礼。」

「「ありがとうございましたー。」」







 ――――――こうしてまた、何も起こらない一日が終わる。平凡で、退屈で、何事もない・・・・・・安定した日々が。


 何も起こらないってことは、スリルがないってことだ。それは同時に、危険がないってことでもある。


(良いんだか悪いんだか。)


 良し悪しはわからないけど、私はただ、考える。妄想する。平和な日々の中で、平和じゃない日のことを夢想する。


 平和だから、暇だ。暇だから、妄想する。


 平和な国に生きる女子高生は、それぐらい適当でいいんだと思う。


「ゆか~、帰ろう~!」

「うん、ちょっと待って、今行くー。」


 私は、鞄の中から辞書を二冊取り出して、ずいぶん軽くなったそれを肩に掛けると、教室を飛び出した。



 

 


妄想の世界はいかがでしたか?


女子高生はまだまだ思い続けますが、お話にするのはここまで。


またいつか、相見えることを期待しつつ・・・・・・。



 

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