表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/8

3時限目 OC

 


「形式主語Itを使って、そこから先の文章に、真主語もしくは仮主語を入れて作るのが――――」


 言われた言葉を片っ端からノートに書き写していると、不意に、華やかで怪しい仮面舞踏会の映像が脳裏に流れ出した。




「形式上の建前に守られた仮面の君の、

仮の姿を暴いて、

真の姿を露にしたいのです。」


 彼はそう言って、その顔に付けた仮面に手を伸ばした。私――――ベターは、慌ててそれを押し留めた。


「いけません、仮面を外されては。」


 月も凍えるバルコニー。ホールでは未だに、明るい音楽が流れ、人々が踊っている。


「何故ですか?私は貴女のことが知りたい。貴女の、本当の姿が、見たいのです。」


 私はゆるゆると首を振った。


「迷惑をかけ逃げ出して、

諦めきって避けもせずに、

終わりまで楽しめないで、

練習だって、とうの昔に止めてしまった・・・。

そんな・・・そんな私を、見ないでください。どうか・・・・・・。」


 私は、仮面を付けていることに感謝していた。表情を、見られたくない。

 彼――――ハッド卿は、しばらくの間、何も言わずにいた。青白い月の光が、沈黙の上に降り積もっていく。



「お気になさらず、脱け出してください。

決して諦めず、避け続けてください。

そして、終わりまで楽しんでください。

練習なんか、止めたって構いませんよ。」


 思いもよらぬ言葉に、私は顔を上げた。仮面の下から僅かに覗く口元が、柔らかい笑みをたたえている。

 ハッド卿は、私に向かって手を差し出した。


「参りましょう、ベター様。私がきちんとリード致します。ですから――――ご安心ください。」


 不思議だった。

 上手く踊れない自分が、あんなにも嫌いだったのに。

 諦めて練習から逃げ出して、不本意な見合いも避けずに、けれど結局 迷惑をかけただけに終わって、こんなにも、こんなにも、自分が大っ嫌いだったのに。


 あぁ、何故でしょう。


 何故、貴方にそう言われただけで。

 貴方の手が目の前にあるだけで。


 私は、私を許せるの?


 月の光が金色に輝き、私たちを優しく包み込む。私はゆっくりと、その手を取った。


「姫、私たちの間に、邪魔者はおりません。私たちは、共にいるだけで、より良きものになれるのだと、私は思っております。」

「ハッド卿――――――私は、」

「藍川。」




 ・・・・・・目の前で、仮面のような笑顔を張り付けた先公が、私を見ていた。


「顔、洗っておいで。」

「――――はい。」


 私は素直に頷いて、席を立った。


――――――チェッ、いいところだったのになぁ。


 どうにも、ままならないものである。しかし冷たい水は、ぼんやりした頭に気持ち良かった。


 

 


hadとbetterは2つで1つ。間に邪魔者(not)は入りません。


「迷惑かけて~止めてしまった。」「気にしないで~止めても構いませんよ。」

のくだりは、"MEGAFEPS"を上から順に。多少、意訳あり(笑)


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ