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1時限目 物理

 カーテンの向こう側を、黒い影がシュッと横切った。とっさに目をやったが、もうそこには何もいない。


(ハトかなー・・・・・・いや、)


 私は何か、ピンとくるものを感じた。


(今のは、ハトなんかじゃない!)


 一番窓際の席は危険だが、今更変えようもない。願わくば、私のもとには来ないことを祈りつつ、私はカーテンを凝視した。

 前の方のカーテンが、大きくはためいた・・・・・・――――――瞬間、


バサササッ


「うわぁっ!」

「きゃぁっ!」


 窓の外から大きな鷹?のような、見慣れない鳥が入ってきた。いや・・・・・・鷹にしては、やけにデカイ。その上、模様がおかしい。

 茶色い体の所々に、金色の羽根が混じっていて、それが陽光に光輝いている。目の回りは赤と白で縁取られていて、額には・・・・・・あれは何だ?ルビーのような、赤い宝石が埋まっている。


 まっすぐ入り込んできたそいつは、黒板の前で偉そうにくっちゃべっていた先公を、その鋭い爪で鷲掴む・・・・・・かと思いきや、教卓に止まって落ち着いた。先公は一速く逃げ出していた。

 がたがたと椅子を騒々しく鳴らし、他の生徒たちも廊下へと出ていく。騒ぎを聞き付けて、別のクラスの先公やら生徒やらも集まってきた。


 私は、その場に座ったままでいた。何だか・・・・・・このままでも、大丈夫なような、そんな気がしたからだ。


 額の宝石と同じ色をした瞳が、私を見た。

 目が合う。


「主は・・・・・・逃げないのか?」


 ――――――喋った。低く落ち着いた、いい声である。


 私はびっくりしたが、平静を装い、それに返した。


「危害を加えるつもりなら、逃げるけど?」


 鷹?は首を傾げた。

 それから、目を閉じて、肩(と思われる箇所)を震わせた。


「ハッハッハ、面白い。気に入った。なぁ、(ぬし)よ。私はナルカガイ。主の名はなんと言う?」

「藍川 ゆかり。」


 私は答えた。異形のモノに名前を渡すのは少々、気が引けたけど、ま、向こうも渡してくれたことだしね。


「ふむ、いい名だな。時に、藍川殿よ。主は――――――」



「――――――藍川!」


 私はハッ、と我に返った。


 教壇で偉そうにくっちゃべっている先公が、黒板のとある箇所を指差して、私を見ていた。クラス中の注目が集まる。


「ここに使う公式は?」

「・・・・・・えっくすいこーるぶいおーにじょうまいなすえーてぃーにじょう。」

「お経みたいに読むな。正解だ。今の式に当てはめて――――――」


 現実に引き戻された私の視界の隅を、黒い影が横切った。


 前の方のカーテンがはためいて・・・・・・



 ・・・・・・何も、起こらないけどさ。


 

 


そーおだったらいいのにな~

そーじゃないから夢を見る~


 

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