最後で最凶な傷跡
久しく見た悪夢に引き寄せられたのか。
私はある夢を見た。……中学時代に見た、誰かが殺されていた夢なんかよりも――見たくなかった夢を。
* * * * *
そこが高校の地下であることは、夢特有の“持ち得ない記憶”でわかっていた。
そこは洞窟のように、岩肌の壁であった。近くには7色に輝く池のようなものが見えた。
そこに近づき、手を入れようとすると声が聞こえた。
「その水に触ってはいけない!!」
振り替えるといつのまにか、後ろに男の人がいた。彼は自分の右手を指さしながら言った。
「私みたいになるぞ」
――なるほど。右腕が人あらざる物へと変化していた。赤色に所々鮮やかな水色が混じっていて、毒々しい。
その忠告をありがたくうけ、私は手を引いた。
そしていつのまにか、物語は進んでいた。
“持ち得ない記憶”が敵と教えてくれた人外が、池の上に浮遊している。
そして人外である彼の上司らしき男声が彼に何かを伝えたらしい。上司が男であることも“持ち得ない記憶”が教えてくれた。
人外がなんと言ったかは覚えていない。ただ、口が動いていたのは確かだ。――そのあとに、技が発動したことも。
発動した技は建物内すべてに効果があったらしい。建物全域に動く糸状の物体が現れていた。
それはとても鋭く、触れると切れるらしいと“持ち得ない記憶”が告げていた。
洞窟から階段を上がると、高校の廊下へとでた。
もちろん目の前は糸だらけ。
しかしそれをくぐり抜け、いつのまにかいた連れの女子と階段隣のトイレへと駆け込んだ。ラッキーなことに、そこは糸が張り巡らされていなかった。
休もうと扉をあけ、トイレの中へ。
――ここも安全ではなかったらしい。
窓のところに、男子生徒が血まみれで引っ掛かっていた。
上半身を窓の外へ。周りの壁をさび色に染めて。……心なしか、壁を貫通しているように見える。
恐怖に満ちたのか、連れの女子がトイレを飛び出した。反射的に私は目をつぶった。
音はなにもなかった。サイレント映画のようにすら感じた。しかし、夢は見たくないことも見せてくる。
――目をつぶっていたのに、体が切り裂かれ、内蔵が見える映像が頭の中に流れ込んできた。
内臓が体を離れて、宙を舞う。スロー映像のように。
私はそれを、まぶたの後ろから凝視していた。
夢はここで終わった。
ただ、覚醒した私に大きな傷口を残した。




