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音符の人生

作者: WAIai
掲載日:2026/08/15

白と黒の世界。

視界は狭く、モノクロに見えた。

楽しそうなカップルも、仲良さそうな友達同士も、自分には何者にも感じられず、ふーんで終わってしまう。

本当は輝かしいオーラを皆、放っているのに、自分だけ読み取れず、耳や鼻を自然に塞いでいた。

ー馬鹿じゃないの。

全てが敵に見えた。

自分だけぼろぼろになっていく世界。

だから正しい白の世界と、間違いの黒の世界しかなかった。

攻撃されれば攻撃し返すし、なめられたら音楽でやり返した。

音楽だけが唯一の救い、楽しみだった。

「あー」

何でもいいから声を発すると、気持ちが良かった。

その時だけ無防備で、自分が自分でいられた。

「ねえ、歌ってみない?」

誘われて、俺は「何で俺?」と思った。

俺、歌が上手くないし、ただ誰も近づかないように、警戒の声で歌っていたのに。

そいつを馬鹿にするわけではないが、頭、大丈夫かと思った。

「悪いけど断る」

歌だけは誰にも取られたくないし、唯一、自分のものだった。

もちろん視界は白黒のままだが、歌っている時だけは、音符が色づいて見えた。

だから安心して1人でいられた。

勉強なんかいらない。

つまらないし、もっと黒の世界が広がるから。

ただ大人が黙って子どもに教えるだけで、何の役に立つのか分からない。

何でしーんとした空間で、我慢できるのか、不思議だった。

何故、皆、我慢する?

何故、皆、死んだ目をしている?

俺には歌の世界だけが生きていて、音符の色づいた世界を見ることができるのだった。

しかし断ったはずなのに、相手は負けていない。

「やろう、バンド」

「だーかーらー、嫌だって言っているだろう」

強めに言うと、相手はしゅんとした。

いい気味と思う自分と、少し言い過ぎたかという自分がいる。

しかも音符が浮かんで見えてくるのだ。

何故だ、何故だ、何故だ?

こいつと関われというのか。

天が唯一、与えてくれた音楽をやれというのか。

くそ、くそ、くそ。

悔しい、悔しい、悔しい。、

しかし集まったメンバーを見て、急にふと力が抜けた。

メンバーは自分を攻撃しているのではなく、暖かく出迎えてくれた。

もちろん自然のフィルムを通してなので、きつい眼差しは変わらないが、俺を受け入れてくれる場所を作ってくれたようだった。

自分の居場所は、歌のあるところ。

将来が決定したのは、その時だった。

テキストもノートも捨てて、歌1本にすることにした。

まずはギターを使えないといけないし、作詞や作曲をしないといけない。

新しい世界。

俺の視界は倍くらい広がるようになり、色んなことを吸収していく。

面白い、面白い、面白い。

学校の勉強よりも、歌の練習のほうが、はるかに楽しかった。

どんどんのめり込んでいって、すぐにギターを弾けるようになった。

すると、音楽の幅も広がり、色んな音楽を耳にするようになった。

ジャズ、ゴスペルなどなど…。

音楽の世界の広さに、びっくりする。

俺の思っていることなんて、ちっぽけだと思えるようになった。

死んでいた目が、流星群が現れたように、眩しく光を放つ。

自分で自分を追い込むタイプなので、ご飯を食べなくても平気で、代わりに音楽を食べていく。

全身、音楽だらけの自分。

もちろん作詞もこの頃から始まり、ノートに自分の気持ちを書いていく。

その楽しさといったら、何とも言えなかった。

皆に見せると、

「すごい!! すごいよ!!」

と言われ、褒められる。

俺は嬉しかったが、まだまだだと黒の自分が言う。

嘘をつかれているかもしれないぞ、気をつけろ、そう警告してくる。

しかし白の自分は仲間を信じなさいと応援してくれる。

白と黒の自分。

結局、自分のことは自分で決めるしかなく、どんどんとリズムに乗って書いていく。

まるで船に乗って心地よく揺られているような感覚。

自分ではよく分からないのだが、泣いてくれる人がいたりしてびっくりする。

ー俺、歌の世界で生きていく。こんなに楽しいことはない。

俺が終わるとしたら、歌が消える時、音符が消える時だった。

それまでは一生懸命、ギターを弾き続ける。

腹の中から声を出し続ける。

すると評価がついてきて、音楽と向き合いたい自分とぶつかる。

どちらを選ぶべきか。

悩みに悩んで、1人で空を見上げる。

星のたくさん光る空が、俺は好きだった。

静かに眺めていると、1人、また1人とメンバーが集まってくる。

「何だ、お前ら、どうした?」

驚いて聞くが、誰も無言で一緒に寝転がる。

すると1人で鑑賞していた時とは違い、星が音符に見えてきた。

「あ」

と気づいた時には歌ができていて、ギターを引き寄せる。

「ラララ」

できた歌を即興で伝えると、メンバーが興奮し始める。

俺も手応えを感じ、星空を見上げる。

淋しくなったら、ここに来よう。

辛くなったら、ギターを持とう。

そう決め、俺は海原へ出ていくのだった。

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