第一話
チャイムが鳴って漸く退屈な授業も終わり、お楽しみのお昼の時間となる。
鞄からお弁当を取り出していると、無駄にテンションの高い面倒くさい奴が椅子を持ってきて目の前に座った。
「ねぇねぇ、麗は今日どんなお弁当持ってきたの?」
目の前にいる茶髪マッシュで小動物系のギャルは花崎美羽。
俺のこの高校での数少ない友達の内の一人だ。
「別にいつも通り早起きして作った普通のお弁当よ」
「えー。美羽朝からお弁当作るとか出来ないー」
顎を机に乗せて気怠そうに言う美羽を見ながらお弁当箱を開けると、横から再び見知った顔が現れる。
「麗、今日のお弁当も美味しそうね」
俺の弁当を覗き込んできた金髪ロングカールの
THEお嬢様を感じる女性は南条都姫。
この二人は、現在進行形で俺に話しかけてくる変わった奴らだ。
正直、高校が始まってから暫く俺は浮いていた。
女子の会話に混ざらず、教室の隅で一人読書や勉強をしてあまり積極的にクラスメイトと関わろうとしなかったのだ。
そんな時に声を掛けて来たのが美羽だった。
「いつも一人で何してるの〜?」
ずっと気になっていたのだろう。
好奇心丸出しの表情《かお》で尋ねられ、普通に受け答えしていたらどこが気に入られたのか、翌日から凄く絡まれるようになった。
都姫については、そもそも小中高と同じ学校に通っており最早幼馴染と言っても過言では無い。
あまりにも長い付き合いなのでお互いの事については大体把握してるぐらいである。
「まあもうずっと自分のお弁当作り続けてるしね。慣れたものよ」
お弁当を食べ始めようとすると、美羽が物欲しそうな顔をしながら上目遣いで見つめてくる。
それがわざとなのは分かっているが、前世童貞だった俺はそういうのにちゃんと弱いのだ。結局いつも美羽のことを甘やかしてしまう。
「はあっ・・何が欲しいの?」
「え〜くれるの〜?それなら美羽は卵焼きが欲しい!」
言われた通り、箸で卵焼きを美羽の口元へと運ぶ。
「はい、あーん」
「あー・・んっ!いつも通り麗の料理は絶品だね!!」
ここ暫くこんなやり取りをし続けている為、既に慣れたものである。なにより、懐いてるペットに餌付けをしているみたいで割と楽しい。
「はいはい、そろそろ美羽もお弁当ぐらいは作れるようになったら?」
呆れた様子な都姫に、悪びれない美羽。ここ最近こんなやり取りをよく見る。
「別に美羽はこれからも麗に面倒見てもらうから良いもーん!」
「はぁっ・・麗、貴方が美羽を甘やかすからこうなるのよ?いい加減美羽の為にも一度しっかり言ってあげないと」
「分かってるつもりなんだけどね。・・頼られるとつい答えてあげたくなるのよ」
「まあそこが麗の良い所でもあるんだけど・・」
頭が痛いとでも言うようにこめかみを抑えながら深い溜息を吐く都姫。
「まあまあ、そんなに言わなくても美羽だって分かってるわよ。ねぇ、美羽?」
「そうだよー・・都姫はいつも私に厳しいよねー」
不貞腐れた顔でそう言う美羽に諦めているのか小さく溜息を吐いてから首を振って否定する都姫。
「美羽に厳しくしてる訳じゃなくて、美羽の麗への態度について言ってるのよ」
また始まった。この二人が揃うと何故か口論とまではいかないまでも騒がしくなってしまう。
二人の会話を横に流しながら、放課後の予定を脳内で組み立てる。
(そろそろまた誰か引っ掛けて遊びたいけど、店長さんのとこで揶揄い甲斐のあるお客さんが来るまでは、暫くお預けかなぁ)




