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1話 降ってきた幼女



衝動的に書きたくなって、書き始めてしまいました。



「────プギャッ!」

「⋯⋯⋯⋯⋯」

「あ、痛たたた⋯⋯」


 涼しい風が吹く草原で、横にいるであろう人のほうをチラッと伺うも、ものすごい呆れた表情をしたあと、スタスタと私を無視して通り過ぎてしまった。


「待て待て待て待て!」

「⋯⋯⋯⋯」

「いや、確かにね!変な奴が空から降ってきたら、避けて無視して先に行くのが正解だよ?でも私、幼女でっせ?受け止めるぐらいしてくれてもいーでしょ?おにーさん、背が高いんだし!」


 そう言って、ややボロいローブについているフードを目深にかぶったおにーさんを、頑張って引き留めようとするものの、少し歩みを止めるだけですぐさままた歩き出してしまった。

 うわ、情のかけらもねぇ。このおにーさん。


「まー、まー、落ち着きなはれって!」

「⋯⋯⋯何だ」


 私が必死の思いで歩き、ローブの裾を掴むと、おにーさんは面倒くさいというオーラを隠さないまま、声をかけてくれた。わぉ、声の感じからして意外と若い方ですね?


「見たらわかると思うんですけど、今頭から血が出てるんですよ。空中から落ちたから」

「⋯⋯⋯⋯⋯」

「下にいたにも関わらず、受け止めてくんなかった人のせいで血が出てるんです」

「⋯⋯⋯⋯何が言いたい」

回復薬(ポーション)、1個わけてくれませんか?」


 あえて、受け止めてくれなかったせいでこうなっていることを強調して伝えてると、ものすっごくデカいため息を吐かれたものの、ななめがけにしている鞄に手を突っ込んでくれた。

 え?なにそれ?何か手がめっちゃ鞄の中に入ってるのに、貫通してない!へー、不思議。前世の記憶じゃ、そんなのなかったのに!


「⋯⋯⋯⋯ほら」

「わー、ありがとごさいま───ってこれ上級のいいやつじゃないですか!下級とかで良いのに、上級貰っちゃっていいんですか?まぁ、貰えるなら貰うんですけど」

「⋯⋯⋯⋯」


 おにーさんにもらった回復薬(ポーション)を傷口がある頭へとバシャバシャかけると、すぐに流れていた血が止まり、傷口もなくなった気がする。

 おー、すげぇー!正直、傷跡は残ってもしゃーないかと思ってたけど、完璧に治ってる!


「おにーさん、ありがとーございますっ!感謝です」

「⋯⋯⋯⋯そうか」


 そう一言だけ言って歩き出そうとする、おにーさんの裾をまたもや引っ張って引き止める。

 まーまー、ちょっと待ってくだせぇや。幼女でもお礼ぐらいできるんだってとこを、見てもらわなければ!


「⋯⋯⋯何だ」

「いえ、お礼しよーと思って」

「⋯⋯⋯必要ない」

「ちょっとぐらい良いじゃないですか。おにーさん、好きなものはありますか?」

「⋯⋯⋯ない」


 おにーさんの対応は冷たいものの、ちゃんと足を止めてこちらを見てくれてちゃんと優しい。

 ⋯⋯うーん、好きなものないのか。それはちょっと難しいなぁ。何か好きな食べ物でもあれば楽なんだけど。


「⋯⋯じゃあ、私が好きな物にします!」

「⋯⋯⋯何をするつもりだ」

「そりゃあ、見てからのお楽しみですよ!〈幻影(イリュージョン)〉!」


 私が魔力を操って上空にたくさんのお花の幻影を浮かべると、おにーさんはその目を限界まで見開いて驚いていた。

 ふっふっふ、そうだろー!すごいだろー!


「どーですか?お花嫌いですかー?」

「⋯⋯いや、好きでも嫌いでもない」


 そう言って自分を貫通している花の幻影に触れたおにーさんは、もっと驚いて急に後ろへと飛び退いた。

 どーかしたかな?熱かったとか?実体がないから、温度とかは特にないはずなんだけど⋯⋯。


「⋯⋯お前何者だ」

「えぇー、幻影魔法を披露した幼女に対しての一言めが何者?何者と言われても、見ての通り幼女ですけど」


 このちっちゃくて、動きにくい体を見るがいい!何処からどー見たって完璧な幼女だろうが。どこに目つけとんじゃ、このおにーさんは。


「⋯⋯幻影魔法は緻密な魔力操作が必要だ。人間ですら、できるやつはほとんどいない」

「へー、そーなんですね。初めて知りました!ていうか、おにーさんがめっちゃ喋った!感動だ〜」

「茶化すな⋯⋯⋯⋯⋯貴様、さてはエルフか?」


 エルフ?エルフは確かに緻密な魔力操作が得意だけど、私は残念ながら、そんな高貴な存在じゃないんですよねー。

 

「そんなこったないっすよ〜」

「じゃあ、人間か?」

「いいえ?」


 おにーさんに人間かと聞かれたので、違うと即答する。まぁ、元人間ではあるけど、今はもう違うからなー。


「⋯⋯この魔力は、他とは何かが違う。貴様、本当に何者だ?」

「ハーエルです!」

「⋯⋯⋯は?」

「だーかーら、ハーエルです!」

「⋯⋯⋯⋯は?」


 何度も自分の種族について説明するが、おにーさんからは、は?しか返ってこない。だから、ハーエルって言ってるでしょー?


「ハーエルですぅ〜!」

「⋯⋯な、何だそのハーエルとは」

「ハーフのエルフでハーエルですよ。略称にしてみました。おしゃれじゃないですか?」

「⋯⋯⋯ハーフエルフという言葉は差別用語だと聞いたが?」

「え、そうなんですか?私がいたとこじゃ、これで呼ばれてたのになぁ。何だ、差別されてただけかぁ」


 ハーフエルフって言葉すっごいファンタジー感あって、呼ばれた時感動してたのに。差別だったなんて⋯⋯だいぶショック。


「⋯⋯本当にお前、ハーフエルフなのか?」

「本当ですよー。耳見ます?一応軽く尖ってて───はっ!」


 ⋯⋯あれ?もしかして、このおにーさん悪い人?いやいや、でも回復薬(ポーション)くれたし⋯⋯。

 う〜、でもでも!人間にはエルフよりも弱いハーフエルフを奴隷にしようとする人がいっぱいいるし⋯⋯。やばい、ハーフエルフなの言っちゃった!どうしようっ!!


「⋯⋯おい、急にどうした」

「う、うぅ⋯⋯⋯う〜」

「⋯⋯うーがどうした」


 私がしゃがみ込んで涙目になっていると、地面に影が差す。ふと、上を見ればフードを目深にかぶっていたおにーさんの顔がバッチリ見えていた。

 

 わぉ、結構⋯⋯⋯ていうかマジモンのイケメンだ。何か後ろに神々しいオーラまで見えてきた。

 だがしかし!イケメンはあまり、ろくなことをしない!ということも前世の記憶で知っている。やっぱり売られるんだぁ〜!いやだぁ〜!!

 

「⋯⋯売るんですかぁ?私のことを」

「⋯⋯⋯何言ってるんだ」

「できればバラ売りはしないでくださぁ〜い!絶対に痛い。マジで痛い、絶対に」

「⋯⋯⋯何で、俺がお前のことを売るのが前提なんだよ」


 そう言っておにーさんは私の脇腹に両腕を突っ込んで、そのまま持ち上げた。

 うぇっ、急に持ち上げないでよ!気持ち悪くなっちゃうじゃん!


「⋯⋯⋯」

「売らないんですか⋯⋯?」

「売らねぇよ」

「うぅ、嘘だ〜。おにーさん金髪だし、長髪だし、イケメンだから、絶対に悪いことしてるー!」

「お前、なんでそんな長い金髪のイケメン?の男に偏見抱いてんだ────っては?お前今、長い金髪とか言ったか?」


 おにーさんが急にマジマジと私の顔を覗き込んできて怖い。いや、幼女だから可愛いとは思うけど、そこまでマジマジと見られると何か付いてんのかと不安になる。


「言いましたよ〜」

「⋯⋯魔導具の無効化か?」

「んー?魔導具の無効化なんてできませんよー。ハーフエルフにはありのままが見えるんですー!」


 おにーさんのローブは認識阻害に近い感じの魔法がかかった魔導具だったが、ハーフエルフの目の前じゃ、ないも同然なのだ。

 えっへん、ハーフエルフもまあまあすごいんだぞ!


「⋯⋯⋯お前、行く当ては?」

「え、ありますよ」

「そうか、ないのか───って今の流れであんのかよ」

「旅したいから、ハーフエルフの差別がないところまで行こうと」

「⋯⋯じゃあ、金は?持ってんのか?」


 うぐっ、そう言われたら黙るしかないじゃんか。お金なんかないよっ。空中に放り出されちゃったんだから。


「⋯⋯その反応を見るに持ってねぇな」

「うぐぐっ、でも⋯⋯この流れは、俺と一緒に来いってやつですよね?知ってます知ってます。嫌だぁー、イケメンの大半はろくなことしねぇーんだー。うわぁーん」

「⋯⋯お前のそのイケメンに対する偏見どうにかしろ。だが、そのとおりだ。一緒に来い。とりあえずは、この先にある町までな」


 ⋯⋯イケメンの顔が至近距離にある。うぅ、この先にある町ってどんだけ距離あるんだよー。いーやーだー、売られたくないー!


「やーやー!」

「⋯⋯魔法契約書も書いて、手は出さねぇって契約してやるから。それならいいだろ?」

「え、魔法契約書?そ、それならまぁ、信じられますけど⋯⋯」


 こやつ、自分の顔が相手に一番よく思われる角度とか全部知ってんな?!ま、まぁ?イケメンがそこまで好きではない私にはほとんどノーダメだがな。わはは!

 ⋯⋯というか、魔法契約書って破ったら魔力ごっそり持ってかれるやつだよね?何でそんなヤバいもん、持ってんだよ、このおにーさん。


「⋯⋯ほら、契約内容確認したらここに名前書いてくれ」

「はーい、リーシャっと。おにーさん、アーシェさんっていうんですねー」


 私がそう声を掛けると無視してきた。なんだこやつ、幼女に対しての扱いがなってないぞ。なんちゅーやつじゃ。


「⋯⋯じゃあ、ついてこい。リーシャ」

「はーい、アーシェおにーさん」


 契約書を鞄にしまうとすぐさま、歩き出してしまうアーシェおにーさんについていく。



 こうして、私たちの非常に不思議な旅が始まったのだ。



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