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地下の声  作者: kazoo
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第四話 「妻の声」

悠太は上機嫌だった。謎の「力」によって仕事がうまく進んだからだ。


「この能力があれば、これからも心強い。社内で一層活躍できるだろう。」そう確信していた。しかし、自宅に近づくにつれ、少し気が重くなっていた。仕事の忙しさを優先するあまり、妻の美咲との間に微妙な距離感が生まれていたからだ。美咲は仕事に理解を示してくれていたが、不満を口にすることはなくても、時折見せる仕草から小さな不満があることを悠太も感じ取っていた。


家に着くと、美咲はリビングでテレビを見ていた。「ただいま」と声をかけると、美咲は「おかえりなさい」と返しながら、ちらっと悠太を見て再びテレビに目を戻した。


悠太は部屋着に着替え、リビングに入ると、テレビでは女性アナウンサーがニュースを読み上げていた。


昼間体験した「力」は、相手と目が合うことがトリガーとなって声が聞こえるようだった。それが、テレビなど何かを通しても発揮できるのか気になり、悠太はアナウンサーの目をじっと見つめてみた。


……。 何も聞こえなかった。どうやら実際に対面していないと「力」は発揮されないようだ。


すると美咲が後ろから「何か気になるニュース?」と声をかけてきた。テレビでは、夫婦不和による家庭内暴力のニュースが流れていた。悠太は一瞬ビクッとしたが、まだそこまで美咲との関係は悪化していないと思い直し、「いや、そういうわけじゃなくて……」とごまかした。


悠太が冷蔵庫からビールを取り出していると、美咲が「夕飯で作ったものをつまみにする?」と立ち上がろうとした。その瞬間、美咲と目が合った。


「週末の件、どうなったのかしら。どうせ家庭のことは後回しだから」と、美咲の心の声が聞こえた。


悠太はハッとして、その言葉の意味をすぐに理解した。今朝、出かけに美咲から「週末に買い物に付き合ってほしい」と頼まれていた。リビングセットを見に行く予定だったが、新規プロジェクトの話があり出勤の可能性があったため、「確認しておく」と曖昧に返して、そのまま忘れていたことを思い出したのだ。


「美咲、週末の出勤はなくなったから、家具を見に行こう」と悠太は言った。美咲は少し驚いた表情を見せたが、「ありがとう」と優しく微笑んだ。悠太はその笑顔を見て、安堵した。


悠太の突然芽生えた能力は、仕事でも家庭でも大いに力を発揮することが実証されたのだった。

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