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地下の声  作者: kazoo
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第二話 「助け舟」

斎藤悠太は、いつものようにオフィスビルのエレベーターに乗り、7階の自分の部署へと向かった。今朝の出来事を思い出しながら、その違和感を引きずっていた。あの「声」は、何だったのだろう。最近の疲れから幻聴だったのかもしれない。しかし、いくら考えても答えは出なかった。


エレベーターが開くと、慌ただしい朝の風景が広がった。各々のデスクで忙しく動き回る同僚たちが、今日もまた一日を始めている。悠太は、自分のデスクに向かい、パソコンを立ち上げた。


「おはようございます、斎藤さん」


隣のデスクに座る同期の田中理沙が、元気よく声をかけてきた。理沙は明るくて社交的な性格で、いつもオフィスのムードメーカーだった。悠太も彼女と話すと、元気づけられることが多かった。


「おはよう、田中さん。今日も忙しそうだね」


「そうですね。でも、今日は会議が少ないから、少しは楽かなって思ってます」


理沙は笑顔でそう言ったが、その直後、悠太の頭の中に突然、別の声が聞こえた。


「実は、あのプロジェクトがちゃんと進んでるかちょっと不安なんです。」


悠太は驚いて、理沙の顔を見つめた。理沙はいつも通りの笑顔で、特に変わった様子はない。


「例のプロジェクトだけど…」と悠太は理沙に問いかけると、理沙はハッとした表情に変わった。


「ちょっと気になっているんだ」と悠太は遠回しに言った。


すると、理沙が作業が少し遅れていて不安を抱えていることを打ち明けた。悠太が協力し、少しの作業手順変更で遅れを取り返せることがわかり、理沙の不安は午前中には解消できそうだった。


午後、悠太がデスクで資料をチェックしていると、焦りを感じさせる表情で作業をしている新人の鈴木健太と目が合った。


「先日作った資料にミスがあること、まだ坂本部長に気づかれてないよな…」


と、鈴木の声が聞こえたが、その言葉は明らかに悠太に向けられたものではなかった。


「それ、昨日、坂本部長に提出した資料か?よくまとめてあるじゃないか。」


悠太は彼の資料を手に取って確認した。数ページめくると、鈴木の心の声の通り、数か所にミスが見つかった。しかし、坂本部長はちょっとしたミスでも激怒する性格で、周りに完璧主義を強いるような圧力を常に掛けている。それを知っている新人の鈴木なら、なおさら自分のミスを申告しづらいだろう。


「この資料、以前作ったものに似ているな。それを参考にしてもう一度作ると、さらに良くなると思うよ。まだ期日まで時間があるから、やり直してみようか。」


悠太は坂本に話を通し、鈴木に再提出させることにした。


「ありがとうございます、斎藤さん。助かりました!」と鈴木が言った。


悠太は笑顔で頷きながらも、再び相手の心の声が聞こえたことに対する違和感を感じていた。

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