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火と氷の未来で、君と世界を救うということ  作者: 星見航
第11章:人類発祥の地・アフリカ【2029年11月20日】
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第98話:アフリカ連合会議

挿絵(By みてみん) 


アフリカ連合会議は、予想を遥かに超えて紛糾していた。

なんせ、全アフリカの、55の国と地域の首脳が一カ所に集まるのだ。


 宗教も文化も信条も全く違う上、一つの国の中でも多くの問題と矛盾を抱えている。

 会議開始後、優に5時間以上は経過しても、一向にまとまる気配を見せていない。


 わたしは、御堂大使の言葉を思い起こす。


『利害関係が一致しない限り、彼らが一枚岩になるとは思えません』


 まさに、利害関係(その)の対立が目の前で起きている。

 とりわけ、凍土化する国と、そうでない国の温度差は深刻だ。


 多少のグラデーションはあれど、地球シミュレーターは、赤道の南北2000km以内は凍土化を免れるという結果を出している。これによれば、アフリカであっても、約半分の国土が凍土化するという見立てだ。


 つまり、凍土化する国は移民を送り込み側となり、非凍土国はその受け入れ側になる。

 そんな状況で、対立が生まれないわけがない。


「他国の発表中は、静粛にお願いします!」


 議長国であるエチオピアの、タメル・ゲトゥ首相が、声を張り上げあげる。


 ――このセリフ、今日だけで10回は聞いている。

 直後は静まり変えるものの、暫くするとすぐにざわめきが議場が波のように広がっていく。


「あのタメル首相でさえ、ここまで制御不能(アンコントローラブル)なんだから、他国が議長国だったと考えるとぞっとするよ」

 隣で、食い入るように経過を見つめいてた堀田さんが呟く。


「タメル首相って、優秀な方なんですか?」

「ああ。自国を優先する傾向はあるけど、それはどこも一緒だ。タメル首相は、欧米の大学で博士号を取得したエリートだし、何より、()()()()()()()()首相だから、他国への影響力は大きい」


 ――そういえば以前も、エチオピアはアフリカでほぼ唯一の、ヨーロッパ列強の長期間の植民地化を免れた国だからこそ、他国から特別な念を払われていると言っていた。


「ただ、今回はエチオピア自身が、赤道以北の2000kmにすっぽり入る、非凍土地域だ。もし、譲歩すれば、アフリカ中、場合によってはヨーロッパからも移民を受け入れなければならなくなる。だから、迂闊なことは言えないはずだ」


 各国の持ち時間は5分程度と定められていたけど、どの国も目いっぱい時間を使って、「自国が現状でさえもどれほどの困難に直面しているか」を強調する。言い換えれば、”自分たちは援助を受けるべき側だ”ということのアピールだ。


 彼らが直面する困難は、医療やインフラから紛争・テロまで多岐にわたるが、やはり共通するのは「食料とエネルギー」の問題だ。


 とりわけ、その二つは、国民の生き死に直結するため、どの国も譲る気配は見せない。特に水源は、川の上流国が有利になるため、下流に位置する国は不満がたまりやすい。まさにエジプトがそうであるように。


 更に数時間後。

「では、次のパートに移ります。カイ・ローゼンバーグ氏、七海創教授の両氏から発表のあった、凍土化後の生存計画について、フリーディスカッションに移ります」


 タメル首相のファシリテーションの下、遠隔参加しているカイからは、”海上都市(メガフロート)計画”が、創さんからは”地下シェルター計画”が発表される。


 ”海上都市(メガフロート)計画”には、各国は明らかに及び腰だった。そもそも内陸国には関係がない上、沿岸国にとっても、莫大な海上都市建設費用とメタンハイドレートの発掘費用を、到底負担できないという判断のようだ。


 一方で、創さんの地下シェルター計画は、技術的ハードルが比較的低いせいか、幾分現実味を持って議論されている印象だ。


 ただ、いずれにせよ、根本的な問題は、水資源と食糧問題だった。


 たたでさえ砂漠が多いアフリカだ。

 凍土化で耕作予定地が更に少なる中で、日が届かない地下で、どう食料を栽培するのか。そして、そもそもそのための農業用水をどう調達するのか。そこに解決の糸口が見いだせずにいた。


 議論が煮詰まりに煮詰まり、会議参加者に疲労の色が色濃くなったころ。


 檀上の創さんが、突然、議場全体に呼びかけた。

「これから、日本からのスペシャルゲストにご登場いただきます」


 今までカイが映っていた画面が、日本国旗がはためく映像へと切り替わった。

そして、白髪が少し混じるロマンスグレーの男性の姿が投影される。


「日本国首相の、風間真一です。先ほどから会議を傍聴し、皆さまが直面されている課題は、充分に理解できました」


 彼は、右手を胸に当て、高らかに宣言した。


「日本国政府として、その解決策を提示いたします」


挿絵(By みてみん)

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