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火と氷の未来で、君と世界を救うということ  作者: 星見航
第10章:七つの鍵【2029年9月1日】
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第87話:直観

挿絵(By みてみん)


風間首相が面食らったように言う。

「カイ君が米国のスパイじゃないと主張する根拠が、ただの”直観”ということかね?」


「はい」

わたしは笑顔で断言する。


橘長官が口を開く。

「それは、”友人として信頼しているから”ということかい?」

「うーん、それもあるんですけど……。なんて言うか、たぶん、カイも、そしてルカさんも、そもそも米国政府が嫌いなんですよ」


三式島の船上会議の後、アメリカの大統領がルカさんとカイに、脳波技術を米国に独占提供するよう脅迫し、それを二人が突っぱねた話をする。


「噂には聞いていたが、事実(ほんとう)だったのか……」

さすがの首相も、そこまでの内情は知らなかったようだ。


「しかし、なぜなんだろう? 米国政府に逆らって、得することなんてないだろうに……」

風間首相が訊ねてくる、


「ルカさんのことは分からないですけど……。少なくてもカイは、単純に、”能力も責任を取る気もないのに偉そうな人”が嫌いなだけだと思います。例え、相手(それ)が大統領であったとしても」


暫くの間があって、風間首相が爆笑し始めた。

ひとしきり笑った後、気持ちを落ち着かせるように水を一口飲み、橘長官に言う。


「なるほどね。それは私たちも気をつけなきゃいけないな」

「ええ、今日の会議には、特にその空気が蔓延していましたから」


わたしは、さっきの会議室にいた数十人の閣僚・官僚たちの顔を思い浮かべる。

確かに、あの場には威圧的な空気が漂っていた。

カイは、さっき、どんな気持ちで質疑に答えていたのだろう。


その時、ドアがノックされ、ショートカットの長身美女が入室してくる。

「首相、そろそろお時間です」


創さんが、席から立ち上がりながら首相に尋ねる。

「では、例の海外プロジェクトの件は、承認いただけたということですね?」

「ああ、早速外務省ルートで、出入国書類を用意させる」


わたしは、創さんに声をかける。

「創さん、また海外行くんですか?」

「ああ。今回は、できれば()()()()()()()()()()()()()


「え……!?わたしも?」

いきなりの無茶ぶりに思わず声が出る。


「ちょ、ちょっと待ってくださいって。学校も9月3日(明後日)から始まるし、ホテルのバイトだってあるんですから。何よりおじいちゃんのことも……」


私が言い終わる前に、風間首相が秘書に指示を出し始める。


水上(みながみ)君、ホテルと大学の関係者に連絡してくれ。ホテルの方は、支配人に行っておけば問題ないだろう。大学はフィールドワーク扱いになるように学長に言っておいてくれ」

「はい。紫藤(しどう)学長と、村瀬支配人ですね。10分以内に対応します」


――え、なんでこの人、わたしの大学とバイト先の責任者の名前が瞬時に出てくるの?

ちょっと怖い。 


創さんが声をかけてくる。

「もちろん、来られるタイミングで大丈夫だよ。まずは一心さんのことを一番に考えてほしい」


――そう。わたしは、その最後の日まで、おじいちゃんと一緒に過ごすと決めている。


書類ケースを片手に立ち上がった首相が、わたしに言う。

「さっきは試すようなことを聞いてすまなかったね。カイ君のこともだけど、リンさんのこともよく知りたかったんだ。七海一家が推すリンさんが、一体どんな人なのかを」


わたしはようやく気付いた。

この謎のミーティングの意味を。


カイについてだけじゃない。わたし自身が見られていたのだ。

果たして、信頼に足る人物なのかを。


――やっぱり、政治って、怖い。


首相は、さきほどの秘書を手招きし、わたしに紹介する。

「わたしの第三秘書の水上梨沙(みなかみりさ)君だ。これから、このプロジェクトに専属になるから、何かあったらいつでも伝えてくれ。こう見えて、陸上自衛隊出身でサバイバルのプロだから、アフリカでもきっと役に立ってくれるはずだ」


「え、ア、アフリカ……!?」

わたしは思わず創さんを見る。


「ああ、次の目的地は、人類発祥の地、アフリカ大陸だ」


挿絵(By みてみん)

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