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火と氷の未来で、君と世界を救うということ  作者: 星見航
第9章:攻防の果て【2029年8月31日】
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第79話:内通者

挿絵(By みてみん)


「本堂入口の後方は制圧したわ」

VRスカウター越しに、本堂の中で応戦を続ける、夢華、エリー、アレクに伝える。


「わたしと蝙蝠(こうもり)で、いつでも背後から急襲可能よ」


「は?……蝙蝠って!?」

 怪訝そうに問い返す夢華に、急いでソジュンがカミラの蝙蝠をハックした流れを伝える。


 アレクが軽く息を吐く。

「正直助かるよ。こっちは銃弾に晒されて満身創痍だからね。このままでは、いずれ動けなくなるところだった」


「本堂の傭兵隊の位置を教えて」

 わたしの問いに夢華が答える。


「歩兵は、装甲車の右の影に2名、左には3名よ。それに、隊長が、装甲車の上部ハッチから上体を出す形で、中距離射撃と作戦指示を同時に行っている」


「他の隊員はともかく、隊長だけには気を付けてくれ。なんせ、私の矢を全て撃ち落とす程の腕前だ」


 ――アレクの矢を、銃で撃ち落す!?

 そんなことができるとすれば、それこそ達人級だ。


 夢華も言う。

「最悪の展開は、装甲車内に立て籠もられるパターンよ。一度ハッチが閉じられたら、外部から抉じ開けるのはまず無理だから」


「そこは、僕と悠馬に任せて。ハッチが閉じるより早く、死角から隊長(ヤツ)を襲撃してみせる」

 ソジュンが断言する。


 ――さすがの敵も、空からの襲撃は想定していないだろう。


 夢華が全員に指示を出す。

「まずは、リンと蝙蝠(ソジュン)で、右の2名と隊長に後方から奇襲をかけて。敵に隙が生まれた瞬間を狙って、私、エリー、アレクが、前方から一気に攻め込むわ。――突入は、今から30秒後」


 全員のVRスカウターにカウントダウンが始まる。

 心臓がドクンと脈打つ。


 画面に"0"の文字が表示された瞬間。

 わたしは蝙蝠とともに、敵の背後を急襲する。


 蝙蝠とわたしの背後からの二連撃で、2名を戦闘不能に陥らせる。 

 残りの敵の意識が、後方の私たちに集中する。

 

「GO!」

刹那、前方の夢華、エリー、アレクの三人が、全力で敵に向かって疾駆する。


 挟撃に気づき、銃を乱射する傭兵たち。

 だが、夢華たちはジグザグに走り、相手に照準を絞らせない。


「いけぇぇぇぇぇぇぇ!」

 ソジュンの蝙蝠が、空気を切り裂きがながら、装甲車から上半身を晒す隊長に向かって急降下する。


 ――しかし。

 隊長の手には、既に大口径の銃が握られていた。


「まずい、散弾銃(ショットガン)だ!!」

 アレクが叫ぶ。


 その声に反応したソジュンが、鋭角に飛行の軌道を変える。

 同時に、隊長の散弾銃が火を噴いた。

 広範囲に散らばった弾丸の一つが、蝙蝠を貫く。


 次の瞬間、一人目の敵を倒した二刀流のエリーが、装甲車のハッチに向かって跳ぶ。

 隊長は、ショットガンの銃口をエリ―に向ける。


 ――ヤバい、撃たれる!

 が、なぜか銃声は響かない。


 ”ガキンッ!”

 隊長は、エリーの二本の木刀を、散弾銃の砲身で受けとめた。


 両手が塞がれた隊長の顔面に、今度は夢華の高速突きが襲う。

 隊長はしかし、その突きを首をわずかに逸らして躱し切る。

 すさまじい動体視力だ。


 最後に詰めたのは、アレクだった。

 弓矢の照準を、隊長の(その)眉間に定めて言い放つ。

「チェックメイトだ」


少しの間の後、隊長は散弾銃を下に落とす。

"がらんっ”という金属音が、静けさを取り戻した本堂に響き渡る。


 降伏の意だろう。


 夢華が臨戦態勢を崩さないまま、隊長のフルフェイスのマスクを剥ぎ取った。


 ”からんっ”

 さっきより少し軽い音を立てて、今度は、エリーの木刀が地に落ちた。


「え!? まさか……どうして貴方(あなた)が!?」


挿絵(By みてみん)

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