表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
火と氷の未来で、君と世界を救うということ  作者: 星見航
第9章:攻防の果て【2029年8月31日】
78/292

第78話:鉄槌

挿絵(By みてみん)


”バサバサッ!”

夜の雑木林に再び羽音が響く。


「まぁた(ふくろう)か?」

銃口を向けつつ、見張りの一人がうんざりしたように言う。


”バキッ!”

次いで、枝の折れる枝が鳴り響く。

男たちの警戒が一気に高まる。


「見てこい。二人一組(ツーマンセル)だ」

副長格だと思われる男が、残りの二人に指示を出す。


「こっちに来る」

ソジュンがVRスカウターの通信機能を使って言う。


羽音も、枝が折れる音も、ソジュンが操作する蝙蝠アバターがわざと立てたものだ。


男たちの銃から放たれる、赤色の照準器(ポインター)が蝙蝠に向けられた。

そこには、枯れ枝に逆さにぶら下がる蝙蝠アバターがいる。


「何だよ、カミラの蝙蝠か……」

そう言って、左の男が銃口を下げた瞬間。


死角となる木陰に隠れていたわたしが、そいつの後ろ首筋に向けて竹刀を一閃する。


――!!!

二人目が何か言葉を発する直前、わたしの竹刀がその腹部に突き刺さる。


――まずは二人。

意識の糸を絶たれ、ゆっくりと崩れ落ちる二人。


わたしと蝙蝠のアバターは、気配を消しながら慎重に歩みを勧め、副長格の死角の木陰に回り込む。


銃声が一発でも鳴ったら最後、本堂の傭兵隊に奇襲が気づかれてしまうだろう。

最後の一人――おそらくは隊長に次ぐ実力者――を()()()()()()()()()か。


「僕と悠馬に任せて」

ソジュンがこともなげに言う。


「まず、僕たちが、蝙蝠(こいつ)を使ってあの副隊長の銃を無効化する。その瞬間に、リンが切りかかって気絶させてほしい」

「無効化って……。相手、相当な腕前よ」


増幅器(ブースター)の力、よく見てて」


そう言うと、ソジュンと悠くんが集中モードに入る。


蝙蝠が空へと舞い上がる。

副隊長の注意を逸らすかのように、敢えてその視界入り、空中で何度も旋回する。


――すごい。

まるで夜空のキャンバスに文字を描くかのように、縦横無尽に飛び回っている。


よく見ると、本当に文字を書いているような……。

「F・U・C ――― ?」


さすがに異変に気付いたのか、副隊長は怪訝そうに空を見つめている。


空に、「K」の文字が描かれた瞬間。

蝙蝠が一気に急降下した。


闇夜を切り裂く雷光のような速度で、慌てて銃を構えようとするその腕に、鋭い爪を突き立てる。


銃が地面へ落ちる。

木陰から飛び出したわたしは、相手が振り向くよりも早く、後頭部に一撃を喰らわせる。


男が倒れ込む。


わたしは、振り返ってソジュンに訊ねる。

「今の、どうやったの?」

持ち主のカミラを遥かに超える操作速度だった。


「僕の脳波を、悠馬が増幅させてくれたんだ。彼の増幅者(ブースター)としての素質は超一流だよ」


――そういえば、火龍の舞が終わったときも、十萌さんがそんなことを言っていた気がする。


「本堂の傭兵はあと六人。夢華たちと挟撃すれば一網打尽にできるはず」


そう言って、ソジュンは中指を立てる。

「僕たちの絆を引き裂く内通者(スパイ)に、鉄槌を下してやる」


挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ