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火と氷の未来で、君と世界を救うということ  作者: 星見航
第9章:攻防の果て【2029年8月31日】
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第77話:夜の梟

挿絵(By みてみん)


 ――まさか、本堂が燃えている!?


 わたしは思わず、駆け付けようとする。

 ……が、炎に照らされた3人の傭兵の姿が視界に入り、慌てて木陰に身を隠す。


「十萌さん、火の手の状況を教えて」

「本堂自体は燃えていないわ。侵入者を防ぐため、奴らが本堂入口の前の草を燃やしているだけ」


 ひとまず胸をなでおろす。

 けど、あの火がいつ本堂に飛び火するか分かったもんじゃない。


 何せ、中には夢華やエリーたちがいるのだ。


「敵は、あと何人?」

十萌さんが、本堂に備え付けられた複数の監視カメラを見ながら答える。


「まず本堂内部には6人。彼らは入口に突っ込んだ装甲車の影から狙撃しているわ。夢華、アレク、エリーの3人が頑張って抵抗しているけど、いかんせん火力が違いすぎる。急がなければ、巨大アバター(K5)はいずれ奪取される」


 ――いくらあの3人とはいえ、近代兵器で武装した手練れの傭兵団を退けるのは難しいはずだ。

 それに、チーム全体の指揮を執る”隊長”と呼ばれる男の実力は、まだ底が見えない。


「外は?」

「あの火の防壁の前の3人だけ。彼らさえ倒せれば、挟み撃ちは可能よ」


 ただ実際、一人は不意打ちで倒せても、残りに二人が抵抗することは目に見えている。その時点で、間違いなく隊長はこっちの作戦に気づくだろう。


 おじいちゃんの言葉を思い出す。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()使()()


 わたしは、使えるものを求めて辺りを見渡した。

 3人の傭兵が立っている左側には、雑木林が広がっている。


 そこに誘いこみ、一対一に持ち込めれば勝機はある。

 けど、わたしを見つけた時点で、二人一組(ツーマンセル)で来る可能性が高い。


 そのとき、”ガサッ”と音を立て、雑木林から一匹の鳥が羽ばたいた。


 三人の傭兵が、即座に銃を向ける。

 ……が、月光の薄明かりに照らされた梟の影を確認すると、再び正面へと向き直った。

 

 もしあの影がわたしだったら、一斉射撃の的になっていただろう。


 ――あ。

 その時、わたしは不意に閃いた。


「十萌さん、あの蝙蝠使えない!?」

「え!?蝙蝠って、あのカミラのアバターの?」


「そう。あれが脳波操作できれば、相手を分散できるかもしれない」

 わたしは足音を立てずにその場を去ると、カミラとの戦闘があった場所に戻る。


 意識を失っているカミラから10メートルほど離れた場所に、蝙蝠アバターは落下していた。

 操り手を失い、糸が切れた凧のように動かない。


「十萌さん、使えそう!?」

 VRスカウターの映像を通して、内部の損傷具合をチェックしてもらう。


「ええ、多少飛行速度は落ちそうだけど、陽動作戦に使うには十分よ。ただ、問題は認証ね。カミラの脳波にだけ反応するように設定されているようだから、プログラムを書き換えなきゃならない」


 ――カイをはじめ、スカルからのハッキングに、アイロニクスのプログラマーは全精力を注いでいるところだ。


「僕にやらせて」

 VRスカウターにソジュンの顔が映る。


「アバターが壊されて、早々に戦線離脱しちゃったからね。僕もみんなの力になりたいんだ」

 そう言うと、答えも聞かずに、十萌さんの前のPCに陣取る。


「カイには及ばないけど、他の人たちよりは大分マシなはずだよ」

 十萌さんにパソコンのロックを解除させると、ソジュンは流れるようにプログラムコードを書き直し始める。


 ものの5分もせずに、ソジュンは最後のキーを叩く。

「認証コードは解除した。これで、ここにいる誰もが脳波操作可能だ」


「すごい、ソジュン兄ちゃん、恰好いい!」

 悠くんが弾んだ声で言う。


 ――良かった。

 どうやら、砲弾でアバターを吹き飛ばされたショックから立ち直れたようだ。


 ストレートな賞賛に少し照れた様子で、ソジュンは言う。

「蝙蝠アバターの操作は、僕と悠馬に任せて。あんな見張りの三人組(雑魚たち)はとっとと片付けて、みんなを助けに行こう」


挿絵(By みてみん)

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