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火と氷の未来で、君と世界を救うということ  作者: 星見航
第9章:攻防の果て【2029年8月31日】
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第73話:不意打ち

挿絵(By みてみん)


「まさに濡れ手に粟(イージージョブ)ってやつだな。動かないアバター(お人形)を盗ってくるだけで、あんな大金を貰えるなんて」

 門の錠を撃ち抜いた男が、軽口を叩く。


「油断するな。熱探知反応がないとはいえ、(トラップ)が仕掛けられている可能性もある」

 隊長らしき男が自動小銃を構えながら、ぴしゃりという。


「7体の等身大アバターの回収は、それぞれ、二人一組(ツーマンセル)で当たれ。巨大アバ(K5)ターは、最後に総員で装甲車へ輸送する。他のメンバーは、輸送車の門への横付け、及びその護衛だ」


 ――あの声って……。

 隊長(リーダー)の声音に、さっきから違和感があった。


 電子音とまではいかないが、微妙な不自然さがある。小型マイクを通して変声しているのだろう。


 隊員たちの暗視ゴーグルにかろうじて顔が判別できるが、隊長は完全なフルフェイスだ。恐らく、監視カメラ越しにも素顔を明かしたくはないのだろう。


「で、あたしは?」

 カミラが隊長に問う。


「今は、案内だけ(ここまで)でいい。が、万が一の事態に備えて、()()をスタンバイさせておけ」


「はいはい。ま、油断だけはしないでくれや。まぐれとはいえ、一度はあたしを倒した奴らなんだから」

 肩をすくめて、数名の隊員とともに壊された門から外に出ていく。


アバター(ターゲット)を確保せよ」

 隊長のその一言で、二人一組の隊員は一矢乱れぬ動きで、アバターに近づい来る。

 その構えからして、全員が訓練された手練れなのは一目瞭然だ。


 ――だけど、彼らはまだ気づいていない。

 たった数十秒前、カイが通信衛星奪回に成功し、わたし達の脳波が、既にアバター連動していることに。


 ツーマンセルが、わたしたちのアバターの射程距離内に入った瞬間。


「――今よ!」

 夢華が叫んだ。


 座禅の姿勢を取っていた7体のアバターが、突如立ち上がった。


「な、何だと!?」

 敵隊員が叫ぶ。


 その叫び声は、次の瞬間には闇に消え入る。


 夢華、アレク、ミゲーラ、エリー、ソジュン、悠くん、そしてわたしの7人が、同時にアバターを操作し、射程内の敵をそれぞれの武器で思いっきりぶん殴ったからだ。


 ツーマンセルの特徴は、一人がやられた瞬間に、もう一人が即座にカバーできるところにある。

 すぐさま、もう一人の隊員(セル)がアバターに銃口を向けてくる。


 だけど、直前に隊長は言っていた。

「アバターは極力傷つけるな」と。


 それこそが夢華の狙い目だった。

「こうした組織では、隊長の命令が絶対なの。だからこそ、そこに躊躇が生まれるはず」


「第二撃!」

 夢華の合図で、ツーマンセルの2人目を攻撃する。


 夢華は三節棍で突き、エリーは二刀流で切り付け、ミゲーラは仕込み刀で蹴り上げる。

 敵後方部隊は、アレクとソジュンが狙撃する。


 そしてわたしは、操作者(おじいちゃん)不在で動けない中央のK5と、緊張のせいなのか動きが鈍い悠くんのアバターを竹刀で護る。


 相手がバタバタと倒れていく。

 瞬きする間に、二十数名いた敵部隊は、半分にまで減っていた。


「退がれ!」

 隊長の言葉に、無傷の隊員たちが、弾かれたように後退する。


「全員、建物の外まで撤退しろ。待機組と合流し、チームを再編成する」

 銃口をアバターに向けたまま、迅速に撤退していく。


 さすがに敵もプロだ。既に追撃の隙はない。


 夢華が言う。

「もう不意打ちは通用しない。次が本当の勝負よ」


挿絵(By みてみん)

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