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火と氷の未来で、君と世界を救うということ  作者: 星見航
第23章:エクアドル・種の起源の島へ【2030年2月10日】
353/365

第353話:秘密基地

挿絵(By みてみん)


 海底での狩りを終えたハンマーヘッドシャークが悠々と海面へと戻っていく。

 すると――。


 そこには、不思議な光景が広がっていた。

 光差す水面近くで、群れになったハンマーヘッドシャークたちが、ぐるぐると円環を描くように泳いでいる。


 それはまるで狩りの成功を祝っているようにも、あるいは私たちの来訪を歓迎しているようにも見えた。


「大型のハンマーヘッドシャークは基本的に群れないはずなんだけど――。どうやらガラパゴス諸(ここ)島は特別なようね」


 同じ個体であっても、住む地域によって行動様式が変わる。

 これは、人間社会だけのことではないみたいだ。


「さあ、そろそろ行きましょうか」


 ガイドが言うと、潜水艇は再び動き出した。

 カイの待つ無人島に向かって。


 **********


 潜水艇が着岸したのは、四方を岩石に囲まれた奇妙な洞窟だった。

 まるで秘密基地のようなこの場所であれば、確かに衛星の目を避けることも可能だろう。


 潜水艇から出ると、ガイドがライトに灯をつけ、洞窟の奥へと進んでいく。

 わたしと十萌さんは、足元を気にしながら彼の後を追う。


 突き当りには岩壁があった。

 サンタクルス島と同じように、岩陰に隠されたモニターにガイドが指を押し付けると、低い音を立てて岩の扉が開いた。


 ――ま、眩しい。


 不意に広がった人口の光が、視界を覆う。

 そこには、巨大な研究室と思しき、最新鋭の空間が広がっていた。


 奥のドアが音もなく開き、人影が光の中から現れる。

 逆光でその姿はよく見えない。


 ――カイ?

 いや、違う。180cmを超えるカイより一回りは小さい。


 そのなだらかなシルエットからして、女性だろうか。


 その人物は、よく通る声で、わたしたちの名前を呼んだ。

「リンさん、十萌さん、お久しぶりですね」


 その声の響きに聞き覚えはなかった。

 なのに、その話しぶりはなぜか馴染み深さを感じさせる。


 光に目が慣れ、目の前に一人の女性が現れる。

 やはり、見覚えはない。


「ルカ様の島ぶりですね」


 わたしはようやく悟った。

 目の前で完璧な笑顔を浮かべる女性が、実は生身の人間でさえないことに。


 ポリネシアに浮かぶルカの島で出会った、メイド型ヒューマノイド・ヒナ。

 外見や服装は明らかに南米女性を象ってはいるものの、醸し出す雰囲気が明らかに酷似している。


 わたしの脳裏に、ルカ・ローゼンバーグの言葉が蘇る。


「世界で唯一の、”意識と記憶”を有するヒューマノイドであり、”一の女神”に最も近い者……。それががヒナだ」


挿絵(By みてみん)

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