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火と氷の未来で、君と世界を救うということ  作者: 星見航
第20章:韓国・二つの想い【2030年1月30日】
289/292

第289話:脳内チップ

挿絵(By みてみん)


「まさかあの子は……」


十萌さんの尋常じゃない声色と表情に、わたしは思わず彼女を見つめ返す。

「ど、どうしたんですか?」


「これを見て」

そう言って彼女は、手元のモニターを部屋の大画面へと映し出す。


そこに現れたのは、額のアップの画像だった。

プレー中は前髪を下ろしているけど、試合開始直前にこめかみ辺りを指で押した際に、髪が搔き上げられたその瞬間を、カメラで捉えたようだった。


でも、それが何を意味するのかはわたしには分からない。

「普通の写真に見えますけど……」


十萌さんが無言で、おでこの画像を拡大する。

すると、うっすらの線のようなものが見え始める。


その線は、おそらく、髪の下からこめかみ近くまで痕を残している。

「手術の痕……ですかね?」


「ええ。おそらく彼女は、『Deep Brain Stimulation』、つまり深脳部刺激(しんのうぶしげき)手術を受けている」


「し、しんのうぶしげき?」

聞き覚えのない言葉に、わたしは、オウムのように聞き返す。


「平たく言えば、脳機能を高めるための手術よ。恐らく、彼女の脳には、電気刺激を発生させる極小のチップが埋め込まれている」


――え……。は?


「本来は、パーキンソン病の病気治療なんかに、一時的に電気刺激を使うことはあるわ。でも、彼女は、ただ、その脳機能を上げるためだけに、脳にチップが埋め込まれている。それを、何らかの方法でオンにすることで、急速に脳の伝達速度を上げているの」


「そ、そんなの許されるのですか?」 


「個人が同意さえすれば、少なくても法律上は問題ないはずよ。問題は、脳内チップが脳に与える影響がまだ未知数ということなの。このまま無理やり脳の出力を上げ続けたら、いずれ脳神経が焼き切れるかもしれない。まるで電気を使いすぎて、家のブレーカーが落ちるように……」


確かに、脳に直接チップが埋め込まれていたら、通常のボディーチェックでは探知しようもないのだろう。


わぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!

遠くから歓声が聞こえる。


4戦目の試合結果を見ると、今度はユンがソジュンを完封していた。

ユンの反応速度に完全についていけず、その表情からは完全に自信が失われている。


その時ーー。

今まで勝っても無表情だったユンが、突如苦悶の表情を浮かべる。


椅子から崩れ落ち、帽子の上から頭を掻きむしり始める。


「まさかーー」

反作用がこんなに早く!?


十萌さんが即座に回線を切り替え、運営本部に指示を与える。

「緊急事態よ! 即座に試合を中断して、医療チームを出動させなさい!!」


挿絵(By みてみん)

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