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火と氷の未来で、君と世界を救うということ  作者: 星見航
第20章:韓国・二つの想い【2030年1月30日】
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第286話:生体モニタリング

挿絵(By みてみん)


「ユンの反応は、明らかに人間の閾値を超えている気がする。まるで、アンドロイドがデータ解析を終え、突然バージョンアップされたみたいにね」


 ――アンドロイド?


 わたしは、思わず聞き返した。

「それって、ユン選手が人型アンドロイド(ヒューマノイド)ってこと?」


 わたしは、ルカの島で出会った、人間そっくりのヒューマノイド・ヒナのことを思いだす。

 

「も、もしかして、帽子を目深にかぶっているのも、人間じゃないことの違和感を隠すためとか……」


十萌さんがあきれ顔を浮かべる。

「そんなはずないでしょう。生身じゃなければ、アイロニク(うち)スのボディーチェックは絶対に通らないわ」


 確かに、最新のヒューマノイドがどんなに外見が人間に近かろうと、その皮の下は精密機械なのだ。

 最先端のボディーチェックマシンの目からは逃れられるはずはない。


「ま、流石にそうだよね」

 ソジュンは軽く息を吐く。


「とはいえ、突然、反応スピードが上がるってのも、興味深い事象よね。スタッフから、ユン選手の生体モニタリングデータを取り寄せてみるわ」


「生体モニタリングって?」

「今回の大会では、プレーヤーの脳波に加えて、心電図、心拍数、血圧、呼吸数、体温などの生体情報をリアルタイムで記録(モニタリング)しているの」


十萌さんが、ソジュンの肩に手を置いて言った。

「特に、脳波の伝達スピードが、ソジュンは他選手と段違いなの」


ソジュンの瞳に、僅かながら、自信の光が燈り始める。

「まあ、僕もまだ、本気は出し切ってはいないからね」


 そのとき、控室のドアが開かれた。

「あと20分で、決勝戦が始まります。ステージでのスタンバイをお願いします」


 スタッフのその声を聞き、ソジュンはすっと立ち上がり、ドアの方へと歩いていく。


「頑張って!」

 わたしは、ソジュンの背中に声をかける。


 ソジュンは振り向かず、ただ、天に向かって拳をぐっと突き上げて、無数のファンが待つ舞台へと向かって言った。


 **********


 ――さすが主催者(VIP)……。


 決勝戦は、大画面と様々な機器が備え付けられた、最新鋭のモニタリングルームで観ることになった。


「ここでなら、観戦しながら、二人の生体データをリアルタイムでチェックできるからね」


 そう言いながら、十萌さんは、モニターに投影された、準決勝までのユンの生体データをチェックし始める。


 画面にユンの脳波データらしきものが映った瞬間、その表情に驚きの色がありありと浮かび上がる。


「なんてこと……」


 十萌さんが、ぼそりと呟いた。

「ソジュンは負けるかもしれない」


挿絵(By みてみん)

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