表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
火と氷の未来で、君と世界を救うということ  作者: 星見航
第20章:韓国・二つの想い【2030年1月30日】
283/298

第283話:雪の花

挿絵(By みてみん)


「お、美味しい!」

 トッポギを口に含むと、餅の弾力とともに、甘辛いスープが口中を刺激した。


 ここ数日間、修行でまともに食事をしていなかったせいだろうか。

 こんなにも食べ物が美味しく感じられたのは久しぶりだった。


「お、いい食べっぷりだねぇ。おでんもどうだい?」

 そう言って、屋台のおばちゃんが勝手に大根やこんにゃくやらをお皿に盛ってくる。


 日本のおでんとは出汁が違うけど、これはこれで味わい深かった。


 ふと隣の少女を見ると、まるで一口一口を嚙み締めるかのように、大事そうにトッポギを口に含んでいる。


 ――え、泣いてる?


 彼女は食べながら、その瞳に涙を浮かべていた。

 さすがにそれは大げさなんじゃ……と思っていると、彼女はぼそっとこう呟いた。


おばあちゃん(ハルモ二)に食べさせたい……」


 屋台のおばちゃんの表情が変わる。

「まさかあんた……、本当に北から来たのかい?」


 彼女が頷いた。


 ――北って、どこを指すの?

 わたしは、こっそりサラに尋ねてみる。


 サラは言った。

「ここソウルは、韓国の北端にある。だから、ここから見て”北”といえば、北朝鮮しかないだろうね」


 **********


 人生で、北朝鮮の人に出会ってのは初めてだった。

 海外に行くと、日本のパスポートのすごさを思い知ることが多い。それでも国交のない北朝鮮には行きようがない。


 サラの翻訳機能を使って、ぽつぽつと話しを聞く。


 どうやら彼女は、最近、出稼ぎのためにソウルに来たらしい。

 けれど、家族は北朝鮮に残ったままで、彼女一人がもう何年もソウルに住んでいるという。


 歳は16歳。

 それであれば、ろくに働きどころはないはずだ。


 もしかしたらこの銀色に近い髪も、過酷な環境によるものなのかもしれない。


「でも、もう少しでお金が稼げそうなの。そしたら仕送りもできるはず……」


 わたしは胸が痛くなった。

 それは、もしかしたら、まっとうな稼ぎではないのかもしれない。


 けれど、わたしにそこに踏み込むだけの勇気はなかった。

 飢えと戦っているであろう家族に対し、衣食住に恵まれた自分が掛けられる言葉なんて、少なくてもわたしは知らない。


 長い時間をかけてトッポギを食べ終わった彼女は、わたしにお礼を言い、席を立った。


 白銀のその髪に、雪の花が舞い降りた。

ソウル(ここ)には全てのものがある。でも、雪景色の美しさだけは、故郷に遠く及ばない」


挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ