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火と氷の未来で、君と世界を救うということ  作者: 星見航
第20章:韓国・二つの想い【2030年1月30日】
282/295

第282話:夜の屋台

挿絵(By みてみん)


 雪が降り始めてきた。

 昏く白く染まりゆくソウルの夜を、わたしは独り歩いていた。


 **********


 昨晩十萌さんに誘われ、今朝の飛行機に乗り、どうにかソウルまで辿り着いたまでは良かった。

 けれど、ホテルに着いた途端、3週間の修行の疲労が一挙に押し寄せ、わたしはベッドに倒れこんだ。


 ――え、もう10時?


 目覚めると、すっかり夜が更けていた。


 ぐぅぅぅぅ。


 お腹が、欲望に忠実な音を立てる。

 よく考えると、朝から何も食べていない。


 食べ物を求めてホテルの外に出る。

 けれど、ほとんどのレストランが既に明りを落としている。


 とぼとぼと歩き続けると、ふと路肩に灯りが燈っていた。


 屋台だ。

 辛さを含んだ香りが流れてくる。


 思わず覗いてみると、そこには、おでんのような汁の中に、さまざまな串が刺さっている。

 隣の鍋には、真っ赤のスープの中に、お餅のような白い物体が浮かんでいる。


너무(ノム) 비싸요(ピッサヨ)


 たぶん15歳くらいの痩せた少女が、いかにも豪快そうなおばちゃんと何かを言い争っている。


 ――え?


 わたしの目を引いたのは、少女の髪の色だった。

 それは、雪が積もったかのよう銀髪だったからだ。


 サラの同時翻訳機能をオンにすると、韓国語のやりとりがスマホ画面に映し出される。


「北じゃ、十分の一の値段よ。もっと、まけてくれたっていいじゃない」

「だから半額にしてるじゃない。これ以上まけたら、わたしが食っていけなくなるんだよ」


 どうやら値段の交渉をしているらしい。


 ただ、わたしのお腹は、その交渉を待てないほどに減っていた。


「あの、もしよかったら……一緒に食べる?」

 わたしは、サラを介して韓国語で尋ねてみる。


 少女はわたしの方を見ると、キッとにらみつける。

「邪魔しないでよ」


 ……せっかくもう一押しだったのにと、ぼそっと言う。


 逆に、屋台のおばちゃんはほっとしたように、わたしに話しかけてくる。


「あんた、辛いのは大丈夫かい?」


 わたしが頷くと、赤いスープとお餅をなみなみと注いでくれる。

「寒い夜には、トッポギが一番だよ」


 そう言うと、おばちゃんはもう一杯注いで、痩せた少女の前に置いた。


「あんたも食べな。今日はこれで店じまいだから、特別だよ」


挿絵(By みてみん)

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