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火と氷の未来で、君と世界を救うということ  作者: 星見航
第19章:中国・過去と未来の交錯地【2030年1月6日】
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第276話:大洪拳

 挿絵(By みてみん) 


 突きあげる岩峰に向かって自由落下するアバターの体を、空中で整え、どうにか枝の一つを掴んだ

 ――と思った瞬間。


 掴んだはずの枝がアバターの重さに耐えきれず、”ばきっ”と折れてしまう。


 ――え!? ええええええ!!

 そのままきりもみしながら、わたしのアバターは、再び落下し始める。


 木の枝が背中を打ち、葉が顔面をはたきつけてくる。

 感覚までは連動していないため、生身への痛みはないはずだ。


 それでも、そのリアルな感触がVRマスクを通して伝わってくる気がした。


 ――やばい、叩きつけらえる。

 地面が近づいたとき、わたしは何とか柔道の前回り受け身の体勢を取る。


 回転しながら着地することで、肩、背、脇腹などに衝撃を分散する。

 最終的には木の幹に激突し、何とか止まることができた。


 顔を上げると、夢華とアレクのアバターがわたしを見下ろしている。

「……ったく。受け身の仕方くらい覚えときなさいよ」


「い、いや急すぎて……」

 わたしは起き上がりなあら、周囲を見渡す。


 眼下に広がっていたのは、あたかも神々の筆で描かれたような奇岩の森だった。


 鋭く削られた石柱が無数に天を突き、霧がその間を縫うように漂い、遠くの山々は緑とも青ともつかぬ色を重ね合っていた。


 ――まるで、水墨画の世界に迷い込んだみたいだ。

 わたしは、朝靄に(けむ)る、その非現実的な光景に目を奪われる。


 景色の余韻に浸っていると、不意に耳元に建峰の声が響いた。


「全員、無事に着地できたようですね」

 一瞬の間を溜めて、彼はこう言った。


「それでは始めてもらいます――。生き残りの戦いを」


 **********


 ――え!? 生き残りの戦い?

 まるでかつて映画で見たデスゲームの司会者のように、建峰が大仰な口調でいう。


 わたしは、急に絶景から意識を引き戻され、アレクと夢華の方を見る。


 アバターなので表情は分からないものの、アレクも明らかに戸惑いを隠せない様子で、肩をすくめるジェスチャーをする。


 でも、夢華は違った。

 彼女は、さも当然かのように、少林寺武術の構えを取る。


 確かあれは――。


大洪拳(だいこうけん)……か」

 アレクが呟く。


 昨日まで、さんざん朱飛から喰らってきたから流石に分かる。

 連続攻撃、跳躍、回転技や、虚歩(きょほ)歇歩(けっぽ)といった独特の歩法を組み合わせた、少林寺武術の基本の武術体系の一つだ。


「少林寺武術の秘技を、骨の髄まで沁みこませてあげる」


挿絵(By みてみん)

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