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火と氷の未来で、君と世界を救うということ  作者: 星見航
第19章:中国・過去と未来の交錯地【2030年1月6日】
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第273話:最後の仕上げ

挿絵(By みてみん)


 2030年1月25日 嵩山・少林寺


「どうやら、多少はマシになったようね」

 二週間にわたる気の鍛錬を終え、精魂尽きて床に倒れこんでいるわたしとアレクを見ながら言う。


「最後の最後で、間に合わせてくるあたり、確かに夢華の血を引いているようだな」


 夢華が懐かしそうに笑う。

「わたしがあなたと引き分けたのは、上海へと旅立つ最後の日だったものね」


 ――そういえば、なんで夢華は少林寺を去り、上海で雑技団に入ったのだろう。


「父親との約束だったからね。いずれ、人前で舞台に立つと」


「父親って、どんな人なの?」

 思えば、夢華の父親のことは、全くと言っていいほど知らなった。


「父親は代々変面師の家系だったの。『男じゃないと、家業の変面師は継がせられない』とか言ってた割に、娘には舞台に立たせたくて上海雑技団に押し込んだのよ」


「だから、アバターでも変面ができたのね」

「ま、父親は教えてはくれなかったら、見様見真似ってやつよ」


 さらっというけど、夢華の才能と、裏での血の滲む努力ががあってこそのことだろう。


「シンクロ率はどれくらいなの?」

 夢華は、建峰に言う。


 建峰はノートPCを見せながら、ニヤリと笑う。

「おかげでいいデータが取れました」


 カタカタとキーボードを打つと、アバターへと循環された”気”の量がビジュアル化され、画面に映し出される。


 過去1週間、確かに日に日に気の総量が上がっているのが分かる。

 ”気”が見えずに苦労していたアレクも、ようやく最終日になって、ぼんやりとだけど見えるようになってきたという。


「気に触れ続けることで、退化していった身体機能を再活性化させることができる」

 どうやら、その朱飛の言葉は正しかったようだ。


「ま、こんなもんかしらね」

 夢華はPCを閉じると、いまだに起き上がれないわたしたちに向かって言う。


「最後の仕上げよ。張家界(ジャンジャージエ)に出発するから、早く荷物をまとめなさい」


 **********


 ――へ? 

「じゃんじゃぁーじえ? どこ?」


「は?『アバター』、観たことないの?」


「『アバター』って、あの、ジェームズ・キャメロンのかい?」

 アレクが聞き返す。


 ああ。それなら、わたしでも知っている。

 当時の世界最高の興行収入を叩きだした、ファンタジー映画の歴史的傑作だ。


 夢華が頷く。

「その『アバター』の撮影が行われた場所よ」


 そう言って、スマホの写真を見せてくれる。

 そこには、ありえないような絶景が広がっていた。


「いやぁ、夢華が観光案内してくれるなんてね。嬉しいよ」

 アレクが、急に元気を取り戻したかのように、身を起こして言う。


 そんなアレクに、夢華が氷柱のような視線を投げかける。

「バカじゃないの? 修行に決まってるじゃない」


挿絵(By みてみん)

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