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火と氷の未来で、君と世界を救うということ  作者: 星見航
第19章:中国・過去と未来の交錯地【2030年1月6日】
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第270話:循環する炎

挿絵(By みてみん)


「気を取り入れ、循環させる。それが次の段階(ネクストフェーズ)だ」


 そう言うと、朱飛は座禅を組みなおす。

「ゾーンに入って、私の体内の気の変化に目を凝らしてみろ」


 わたしとアレクは、ゾーンに移行し、朱飛に意識を集中する。


 朱飛は目を閉じると、何度も何度も深呼吸を繰り返していく。


 ――え?

 わたしは思わず、目をしばたたかせた。


 さっきまでも、薄らぼんやりとした光が朱飛の体を包んでいた。

 けれども、彼が呼吸をするたびにその光は強くなり、やがて青紫の炎のように変化していったのだ。


「朱飛の体から立ち上っている炎、見えてる?」

 アレクに尋ねると、彼は不思議そうな表情を受かべる。


「青い炎?」


 彼は首を振ると、こう言った。

「私には見えない。ただ彼の体から、強烈な熱のようなものを感じ取っているだけだ」


「気を感じ方は人それぞれだ。視覚的に見える者もいれば、熱として感じる者もいる」

 

朱飛が言う。

「今、わたしは、この少林寺の龍脈に流れる気を、体内に取り入れ、循環させているんだ」


「その”気”って、そもそもどこから生まれているですか?」


 わたしは、ずっと疑問だったことを口にする。

 もし、気が龍脈を通って循環しているものだとして、そもそもそれは、どこから湧いてくるんだろう。


「あらゆるものが、ある種のエネルギー、つまり”気”を発してはいる。だが、ほとんどの場合、その源は太陽だ。だからこそ、太陽の活動が変化した場合、龍脈に多大な影響が生まれるんだ」


 ――そうか。

 わたしはようやく合点がいった。


 大半の人が否定する、地球の凍土化の話を即座に受け入れたのも、朱飛が毎日、地脈の発する気に触れ続けていたからなのだろう。


「”気”は、自らの体内に無尽蔵に貯められるものなのか?」

 アレクが尋ねる。


「人にはそれぞれ器というものがある。器を超えた気は、やがて溢れ出してしまう。だからこそ、常に循環させる必要がある」


 ――このように、な。


 そう朱飛が言ったとたん、全身から立ち上っていた気がゆらりと揺れた。


「あの木棍で、わたしを全力で突くがいい」

 そういうと、道場に立てかけてあった木の棍を指さす。


 わたしは棍を手に取る。

 そして迷わず、朱飛の水月めがけて突きを繰り出した。


 がんっ。

 まるで、岩でも叩いたかのような感触が手を伝う。


 よく見ると、朱飛の炎は彼の上半身に集まっていた。


 次の瞬間。

 炎は彼の右手へと流れ、炎が噴き出した。

「破ッッッッッ!」


 ”ばきんっ”という音を立て、木棍は真っ二つに割れていた。


 朱飛が静かに言う。

「これが、硬気功の正体だ」


挿絵(By みてみん)


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