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火と氷の未来で、君と世界を救うということ  作者: 星見航
第19章:中国・過去と未来の交錯地【2030年1月6日】
268/291

第268話:暗闇修行

 挿絵(By みてみん)


 2030年1月8日 中国・嵩山少林寺


 ――え、これが修行なの?


 過酷な山籠もりや試合で、心身ともに痛めつけられる――そんな覚悟をしていたのに、初日に指示されたのは、暗闇での座禅だけだった。


 けど、やってみるとすぐ、それがある意味、山籠もりよりも厳しいことに気付かされる。

 何せ、蝋燭の光以外の光が一切遮断された道場の中で、何時間もひたすら座禅し続けるのだ。


 始めはフロー状態を保てていても、やがてすぐに思考が暴走してくる。

 過去のトラウマや、モロッコでの星との別れなど、さまざまな思念が心を支配し始める。


「揺らぐな。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()んだ」

 朱飛が鋭く注意する。


 三式島や鎌倉であれだけ修行したから、脳波についてはまだイメージが湧く。

 けれど、「気」と言われても、そもそもそれが何かさえ分からない。


 何十度となく注意され、やがて時間の感覚さえも消えそうになってきたとき。


 朱飛はこう言った。


「気は、森羅万象が放つエネルギーのようなものだ。そして、それは内から生まれることもあれば、外から取り入れることもある。大切なのは、それを循環させることだ」


 ***********

 2030年1月15日


 翌日も、その翌々日も、わたしたちがやり続けたのは、暗闇での座禅だった。

 志虎が運び込んでくれる最低限の食事をとる以外は、ほとんどぶっ続けで暗闇に座り続けている。


 なぜ、こんなことをやっているのかなどの疑問も、始めの数日で消えてしまう。


 一週間ほど経ったとき、不思議な変化が見られるようになった。

 目の前に微動だにせず座禅する朱飛の体を、薄い光の膜が覆っているように見え始めたのだ。


 ――え、これって?


 暫くの後。

 その光らしきものが、道場の床からも、まるで井戸水かのように湧き出し始めたのだ。


 朱飛が何かを呟く。

 すると、地面を覆っていた光は、波のように形を変え、わたしとアレクを包み込んでいく。

 体がほんのりと暖かくなる。


 私はアレクの方を見る。

 彼にはそれは見えていないようだった。

 けれど、何かが体に入りこんでいく感覚は、感じているようだった。


「ようやく、見え始めたようだな」

 朱飛が口を開く。


「ここが、操気術の入り口だ」


挿絵(By みてみん)

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