表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
火と氷の未来で、君と世界を救うということ  作者: 星見航
第19章:中国・過去と未来の交錯地【2030年1月6日】
262/295

第262話:門番

挿絵(By みてみん)


「これが硬気功(こうきこう)よ」

 夢華が木の幹に刺さった二本の指を抜くと、そこには深い穴が穿たれていた。


 もし、これが人体に向かって放たれたら…。

 狙いどころによっては、即死だろう。


 ――日本でわたしと対戦したときの夢華は、全く本気じゃなかったんだ……。


「”気”って、いったい何なの?」

 マンガであやふやなイメージはあるけど、正直それが何なのかは分からない。


「それを聞くのには、もっとふさわしい相手がいるわ」

 そう言って、夢華は広大な敷地の奥へと足を踏み入れていく。


 辿り着いたのは、二人の大柄な門番が立つ、色鮮やかな赤色の門だった。

 屋根の瓦の隙間からは、ところどころ草木が茂り、それが逆に歴史の風格を感じさせる。


 左側の男はまだ二十歳足らずで、右手の男は幾分年上の三十代の半ばくらいだろうか。

 二人の手には、身長ほどもある、使い込まれた木の棍が握られている。


此门之内(ツーワイジーネイ)严禁入内(イェンジンルーネイ)!」

 左の門番が、何かを中国語鋭く叫ぶと、木棍(ぼくこん)を夢華に向ける。


 ――な、何て言っているんだろう?

 わたしは、スマホでサラの同時翻訳機能をオンにする。


「新入りね」

 夢華がじろりと睨む。


朱飛(ジュ―フェイ)師兄につないで」


「は? 朱飛大師が、貴様たちのような見ず知らずの奴らに会うわけないだろう?」

 左の男が哄笑する。


 だが、右側の男が、夢華の顔をまじまじと見て、さっと顔色を変える。

「まさか、李……夢華様ですか?」


 夢華が軽く頷くと、左の若い門番が、驚愕の表情を浮かべる。


「え!?朱飛大師と、互角に渡り合ったという、あの!?」

 こちらに向けた木棍の先が僅かに震える。


「それは誤解ね。わたしが互角に戦えたのは、最後の一試合だけ。数百回の手合わせの内のね」


 ――え!?

 じゃ、その朱飛という人は、夢華が数百回負けた相手ということだろうか。


「お、お繋ぎしますので、少々お待ちください」

 そう言って、年上の男が門の奥に向かって駆けていく。


 残された若者は、しばらく呆気に取られていたが、やがて意を決したように口を開いた。


「俺と、戦ってくれませんか?」


「は?」

 ――何であなたと?とばかりに、夢華が冷たい視線を送る。


李夢華(あなた)に勝ったとなれば、きっと朱飛大師も認めてくれるはず……」

 そう、自分自身に言い聞かせるように呟き、男は木棍を構える。


 夢華は、面倒くさそうに溜息をつく。


 ――刹那。

 夢華の右足が宙に跳ね上がり、男の木棍を蹴り上げた。


 蹴りの衝撃で、木棍の先端が半回転し、そのまま男の頭に直撃する。

 自らの棍の直撃を喰らった男は、そのまま、あおむけに地面へと倒れこんだ。


 意識を失った男に、夢華が吐き捨てる。

「千年、早い」


挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ