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火と氷の未来で、君と世界を救うということ  作者: 星見航
第19章:中国・過去と未来の交錯地【2030年1月6日】
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第261話:硬気功

挿絵(By みてみん)


「え、ここが、少林寺……?」

 その入口に立った時、わたしは思わず呟いてしまう。


 霊山に立つ、人里離れた武術の聖地。

 そんなイメージをもっていたのに、目の前の光景は真逆だった。


 世界各地から来た観光客で埋まり、彼ら向けに、ド派手な演武が繰り広げられている。

 ちょっとしたエンターテイメント施設といっても、過言ではない。


「ブルース・リーや、ジェット・リーなんかの映画で、その名が知られたのをきっかけに、1990年代から少林寺は商業化に踏み切ったの」


 武道を志すものとして、当然その名前は知っている。

 特にブルース・リーは、当時白人中心だったハリウッドで、アジア人として初めて大作映画の主演を務めたことで、その後のアジア人俳優の道を切り開いたと言われている。


 アレクも言う。

「『燃えよ(Enter )ドラゴン(the Dragon)』は、武術映画の傑作だよ」


「彼は、武術家としても超一流だったけど、プロデューサーとしても天才的だったわ。早逝していなかったら、間違いなく時代を変えたでしょうね」


 観光客から拍手と歓声が沸き上がる。

 見ると、年かさのいかない少年が、残像ができるくらいの高速バク転を繰り返している。


「ま、実際に敵と対峙したら、あんな派手な動きは取らないけどね。ただ、あれができるようになるために、日頃から血の滲むような訓練をしていることは確かよ」


 そういいながら、夢華は人だかりのできている木を指す。

 その木の幹には、水面を穿つ渦巻のような、無数の穴が開いている。


「あの穴って、何?」

「先人たちの、指功(しこう)の跡ね。硬気功(こうきこう)の一種よ」


 しこう?

 こうきこう?


 戸惑うわたしを見て、夢華は短く息を吐く。


「見せた方が早いかもね」

 そういって、夢華は、その隣の木の前に立つ。


「私の”気の流れ”を感じなさい」


 夢華は左の掌を広げ、右手の人差し指と中指をそこに押し立てた。

 深く息を吸い、目をつぶると、「はぁぁぁぁぁぁぁぁ」と長く息を吐く。


 何も見えない。

 けれど、ある種の波のようなものが、夢華の右の二本の指に集中していくのを感じていた。


 ――もしかして、これが、気?


 鼻から吸い、口から長く息を吐く。

 繰り返すたびに、夢華の二本指に気が蓄積されていくことが感じられる。


 それを三度繰り返した時。


「破ッッッッッッ!」

 裂帛の気合とともに、夢華の二本の指が、樹の幹に向かって叩き込まれる。


 幹が揺れ、ぱらぱらと葉が落ちる。


 夢華の二本の指は、まるでナイフか釘でも打ったかのように、鋭く樹に突き刺さっていた。


「これが硬気功。少林寺武術の奥義の一つよ」


挿絵(By みてみん)

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