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火と氷の未来で、君と世界を救うということ  作者: 星見航
第19章:中国・過去と未来の交錯地【2030年1月6日】
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第257話:達磨大師

挿絵(By みてみん)


「それって、あの”少林寺拳法”の、少林寺?」

 わたしの問いに、夢華がちょっと考えるそぶりをする。


「うーん、微妙なところね」


「中国の少林寺は、中国河南省登封市嵩山に創立され、そこでは『少林功夫(クンフー)』と呼ばれる武術が発達したの。一方で、『少林寺拳法』は、1947年に、かつて満洲で暮らし日本人の中野宗次郎が生み出した、日本発の流派よ。だから、多少の影響はあれど、直接の繋がりは薄いわ」


 ――そ、そうなんだ。

 てっきり、少林寺拳法は、その名の通り、中国の少林寺発なのかと思ってた。


「でも、なんで、仏教のお寺で武術が生まれたの?」

 平和を願うはずのお寺と、相手を打倒する武術のイメージが上手く結びつかない。


達磨(だるま)って、知ってる?」

「あの、日本のお正月とかで飾ってる、丸っこいヤツ?」


「そう。あのダルマのモデルとなった人よ。6世紀末に、インドから来た達磨大師(だるまだいし)が、心身の健康のための運動や瞑想的な要素を取り入れたの。それが今の少林武術の基礎になったと言われているわ」


 アレクも会話に入ってくる。

達磨大師(マスターダルマ)って、9年間ずっと壁に向かって座禅し続けたていう、伝説の人物だよね?確か、鎌倉の禅寺の住職から聞いた気がする」


「そう。達磨が”功夫(カンフー)の原型”を生み出した頃は、まだ、”運動(エクササイズ)”の域を出ていなかった。でも戦乱の時代にはそれだけでは生き抜けない。その後の唐の反乱軍との戦いなどを経て、徐々に武術的要素を強めていったの」


 夢華は、壁に立てかかっているアバターを見やると、アバターがすっと立ち上がり、功夫の構えを取る。

「更に、宋から明にかけて、功夫、棍術、剣術を組み合わせた武術体系が完成され、現在では、武術の聖地としての地位を確立したの」


 アバターの鋭い三段突きが空を裂いたと思いきや、右足が弧を描きながら(ボディー)が反転し、旋風脚を放つ。


 ――思ったよりも、遥かに壮大な成り立ちに、圧倒されかける。

 でも多分、そこまでしなければ、夢華には一生追いつけないだろう。


「分かった。わたし、少林寺(そこ)に行く」


 アレクも乗ってくる。

「もちろん、私もね」


 そこになぜか、建峰も追随してくる。

「私は、こっちで一仕事した後、合流いたします。皆様にぴったりのアバターをお持ちしてね」


 恋敵(ライバル)の発言に、アレクがあからさまに嫌な顔をする。

 ……とはいえ、建峰がいなければ、アバターそのものが手に入らない以上、邪険にもできない。


 そんな思惑を知ってか知らずか、夢華が平静な顔でいう。

「じゃ、決まりね。今夜は、この和平飯店(ホテル)にみんなの宿を取ってあるから、明日の朝、洛陽に向けて出発しましょう」


挿絵(By みてみん)

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