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火と氷の未来で、君と世界を救うということ  作者: 星見航
第19章:中国・過去と未来の交錯地【2030年1月6日】
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第256話:少林寺へ

挿絵(By みてみん)


「彼の会社のアバター生産技術は、世界でも 群を抜いている。だからこそ、私とも限りなくシンクロ率を高められるの」


「夢華さんとは、()()()()()として、親密に取り組ませて頂いています」


 アレクの片方の眉がピクリと動く。

 ――あ、たぶん、なんか誤解している気がする。


 アレクのためにも、敢えて聞き返してみる。

「あの、パートナーって……どういうタイプの?」


 夢華が、『あんたバカ?』とでも言いたげに、こう言い切った。

「ビジネスパートナー以外に、何があるっていうのよ?」


 アレクが、隣で明らかに胸を撫でおろしている。

 反対に、建峰の顔に、少し残念そうな表情が浮かぶ。


 なんだか、三角関係の予感が漂ってきた――。

 けど、今のわたしに、これ以上ややこしいことに関わっている余裕はない。


 わたしは、単刀直入に夢華に切り込む。

「もし仮に、残り二つの要素……つまり、増幅器(ブースター)とアバターが一緒だとして、今のわたしと、夢華の間にどれくらいの差がある? ぶっちゃけ、今のわたしに足りないものって、何なのかな?」


 夢華はすこし考えて、口を開く。

「うーん、どの視点で比較するか次第ではあるわね。脳波の量なのか、伝達率なのか、あるいは身体動作のレパートリーなのか――」


「身体動作のレパートリー……?」

「ええ。高性能のアバターを使えば、生身でできる動作の強度や速度を上げることは十分可能よ。例えば空手家が、正拳突きの威力を倍増させたりね。でも、自らの脳がイメージできない動きは、どんな高級アバターでも再現しようがないの」


 ――脳がイメージできない動作って?


「さっきの変面なんかがいい例よ。あなたは、変面に必要な身体動作そのものを知らない。だから、いくら高性能なアバターを使おうと、リンには再現は不可能よ」


 ようやく気付いた。


 夢華は、そのことを体感させるために、敢えて変面を披露してくれたんだ。

 しかも、十萌さんから連絡から、24時間もしないうちに、アバターに衣装、そして楽器までも用意して。


「あ、ありがとう。お……」


 ――お姉ちゃん、と言おうとしたけど、流石に気恥ずかしくて口ごもった。

 感謝はしているけど、20年間も見ず知らずで、面と向かってお姉ちゃんと呼ぶのは、やっぱりにまだ抵抗感がある。


 夢華が話を続ける。

「たぶん、あなたがスランプに陥っているのは、()()()()()()()()()()()の動作のレパートリーが少なすぎるからだと思う」


 ――た、確かに。

 剣道に人生の大半を費やしてきたからこそ、反対に、刀や棒を失ってしまった時の攻撃や防御方法は、ほとんど学んできていない。


「ただ、あと一つ、根本的な弱点があるわ」


「え、それって?」

 わたしは縋るような気持ちで夢華を見る。


「残念ながら、わたしには教えられない。でも、わたしがかつて修行をしていた、とある場所があるの。もしかしたら、そこでなら身に着けられるかもしれない」


 夢華が修行していた場所?

 ――そこって、一体……。


「河南省登封市・嵩山、『少林寺』よ」


挿絵(By みてみん)

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